2018年9月のプロジェクトニュース

2018年10月11日

1.外来、入院病棟の質基準評価による自己評価へ向けて

8月に実施したチャンパサック及びセコン県病院での外来と入院病棟の質基準の評価のトライアルに引き続き、サラワン県病院(9月5日~7日)及びアタプー県病院(9月11日~14日)でも評価のトライアルを実施しました。評価方法や質基準項目の文言の修正に加えて、自己評価の手順を協議し、評価票を作成しました。修正した評価票は、サラワン県病院が実施した第1回外来と入院病棟の自己評価で使用しました。現時点では外来と入院病棟のいずれも到達グレードは0でした。今後、同様の自己評価をセコン県病院、チャンパサック県病院及びアタプー県病院で実施していく予定です。
その一方で、8月に実施した第4回自己評価では、既存の質基準(5項目)の到達グレードの低下が目立ちました。各県病院の質委員会では、一度達成した成果の「維持」が課題と認識されています。南部4県病院は、これまで使ってきた質基準に加えて、外来と入院病棟の質基準も含めて、成果の維持の課題や改善のアプローチといったより継続的質改善(CQI)の技術的側面に介入を要する段階に来ています。

災害対応でQHCプロジェクトの活動が止まっていたアタプー県からは、10月から活動を再開する予定であるとの連絡もありました。

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約1年前の薬の管理状況

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試行錯誤しながら薬の管理状況は改善。自己評価をしながらこの状況を維持することが課題。

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患者さんに投与する薬の確認方法が適切か評価中

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質委員会から病棟師長へ看護技術チェックの要点を説明

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評価結果を評価者間で協議

2.帝王切開症例に対する早期母児接触トライアル

チャンパサック県病院では、帝王切開症例に対する早期母児接触サービス(Skin to Skin)(注)の導入と継続的なサービス提供に先駆けて、患者アンケートを含む新サービスの効果を確認するトライアル期間を設けることにしました。9月の新サービスのトライアルに向けて、企画書、手順書、患者同意書、患者アンケートを完成させ、10月初旬には新サービスのトライアルを開始する予定です。また、本トライアルの結果は、来年2月に予定されている「ラオス保健医療サービスの質改善フォーラム」(通称ラオ・フォーラム)で発表することも念頭に、トライアルの結果と実施モデルをラオス国内の他病院へ広く共有することも目指しています。

(注)早期母児接触サービス(Skin to Skin)は、早期母児接触児の保温や母乳育児導入のために必須とされています。世界保健機関(WHO)のガイドラインでも強く推奨されている周産期ケアの一つで、新生児の娩出直後(娩出後1~3分以内)から90分以上、児を母親の胸の上に置くケアを言います。早期母児接触を行った児の群では行わなかった児の群と比較して、新生児の死亡率が顕著に減少したという研究結果も多数あります。

3.緊急参加ケアトレーニングが全南部4県で終了

県病院と郡病院の医療従事者を対象とした緊急産科ケアトレーニングが、セコン県で9月24日から29日にかけて行われました。QHCプロジェクトは、それぞれの病院で緊急産科ケアの改善課題の理解を促し、質改善活動のキーパーソンとなる人材を育成するために、中央のチームが南部4県で緊急産科ケアトレーニングを実施するのを2017年7月から支援してきました。QHCプロジェクトの対象4県での緊急産科ケアトレーニングの実施はこれで終了となりますが、すぐにセコン県病院で郡病院スタッフの実地研修が開始されます。またトレーニングの3か月後には、中央のチームがモニタリング活動を実施し、トレーニングの効果を確認する予定です。このような臨床技術の不足を補うトレーニングに続けて、各病院で今後どのような質改善活動が行われるのか、病院サービスにどのような変化が見られるのかをQHCプロジェクトでは確認していきます。QHCプロジェクトは緊急産科ケアの質改善活動も支援を続けていきます。

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参加者、トレーナーの集合写真

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出産シミュレーターを使った実技指導

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ポスターを用いた講義

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パルトグラフを用いた患者モニタリングの練習

4.胎児心拍陣痛図勉強会を継続(3)

引き続き、チャンパサック県病院(9月2日)とサラワン県病院(9月11日、13日)で胎児心拍陣痛図(CTG)の勉強会を開催しました。これまでCTGに関連する機材が導入されておらず、勉強会の対象になっていなかったアタプー県病院は、9月初旬に病院の予算で、産科病棟用のCTG機器と超音波検査機器を1台ずつ導入しました。その後、アタプー県病院から強い要望もあり、9月18と19日に第1回目の超音波検査トレーニングと併せてCTGの勉強会も実施しました。超音波検査トレーニングとCTG勉強会ともに、アタプー県でも他県と同様に継続していく予定です。

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アタプー県病院での超音波検査実地指導

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検査結果を診療録内の報告書にまとめる様子

5.第12回ラオス国家健康研究フォーラムに参加します

第12回ラオス国家健康研究フォーラムが10月15日から17日までビエンチャンで開催されます。QHCプロジェクトは南部4県のプロジェクトの取り組みから医療の質・安全にかかわる一般的なテーマを5つの演題として発表します。演題は以下のとおりで、QHCプロジェクトと病院の質基準活動に携わるカウンターパートとプロジェクト専門家で企画し、準備しました。

1)継続的質改善活動を活発化し、継続させる医療の質改善モデル:ラオスの南部4県(チャンパサック県、サラワン県、セコン県、アタプー県)の事例
2)ラオスの医療の質達成の課題は達成の維持:ラオスの南部4県(チャンパサック県、サラワン県、セコン県、アタプー県)における病院の質基準を用いた定期的な質の自己評価の結果報告
3)ラオスにおける分娩ケアと緊急産科ケアのトレーニング効果の評価
4)チャンパサック県病院における出血量測定プラスティックバックを用いた普通分娩時出血量の評価
5)セコン県病院における外来受診時間とその時間に対する患者の感じ方に関する調査