2018年12月のプロジェクトニュース

2019年3月5日

1.ウドムサイ県病院における病院の質基準を用いた他者評価

・QHCプロジェクトでは、将来、南部4県で作り上げてきた「病院の質改善モデル」を他県へ展開することを想定しています。今回、ラオス保健省が掲げる「病院の5つの強みと患者満足(5 Goods 1 Satisfaction)」の具体的な活動を知りたいとの要望がラオス北部に位置するウドムサイ県からあり、これに応える形で南部4県の評価員が、ウドムサイ県病院を対象に、南部4県で使用している病院の質基準と評価票を用いた他者評価の実演を行いました(12月17日から19日の3日間)。この実演に先駆けて、南部4県の評価員は、ウドムサイ県で事前に協議し、評価員同士でも実演の進め方を協議しました。当日は、(1)病院の質基準と評価票、(2)評価方法とグレード付け、(3)評価後の改善課題の抽出、課題の優先順位付けとアクションプランの立案方法までを実演しました。ウドムサイ県からは県保健局、県病院職員と県内全ての郡保健局と郡病院の関係者が参加しました。

・南部4県の関係者にとっては、ウドムサイ県での実演を通して、南部4県で実施している他者評価のあり方を考えてもらう機会としています。引き続き、1月に予定しているウドムサイ県での活動のフィードバックの会で、活動の整理と他者評価の標準手順を協議する予定です。

・ウドムサイ県での他者評価の実演から、南部4県は(1)病院の質基準、(2)定期評価、(3)継続的質改善活動のための改善課題の優先順位付けとアクションプランづくりまでの過程を経験的に理解しており、他者に説明できることが分かりました。一方で、それらを抽象概念としての“質改善モデル”としてとらえるところには難しさがあることが分かりました。ウドムサイ県でのこのような活動から、「病院の質改善モデル」の文書化を進める上で、南部4県には(1)病院の質基準、(2)定期評価、(3)継続的質改善活動の具体的な取り組みをまずはケースとして文書化してもらうアプローチが妥当であることも確認できました。1月に予定しているフィードバック会議から「病院の質改善モデル」の各県での導入ケースの文書化を進めていきたいと考えています。

【画像】参加者の集合写真

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全体会合の様子

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ウドムサイ県病院の他者評価をする南部4県のプロジェクト・カウンターパート

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ウドムサイ県病院の他者評価をする南部4県のプロジェクト・カウンターパート

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評価の集計作業1

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評価の集計作業2

2.継続的質改善活動について

南部4県では、病院の質基準に基づく自己評価と他者評価の結果を踏まえて、プロジェクトチームによるコンサルテーションも参考にしながら、以下の質改善活動に取り組んでいます。

1)臨床サービス

・サラワン県病院とセコン県病院は、分娩症例に関する診療録の記載を向上するために、新しい診療録フォームの使用を開始しました。

・アタプー県病院は、緊急産科症例のケアのモニタリング活動実施後に、質改善活動の詳細計画を立案する会議を開催し、(1)産科診療録の改訂、(2)術後モニタリングシステムの強化等の改善活動に取り組んでいます。

2)病院サービス

・チャンパサック県病院は外来での検査結果を確実に患者に説明するための予約票導入を検討しています。入院病棟はインフォームドコンセントフォームの確実な記載に向けて計画を立案しました。

・サラワン県病院は、外来を受診した患者さんに対して緊急度等を加味した優先度の判断基準を作成し、導入する活動を実施することになりました。ラオスでは様々なところでお坊さんを優先する文化があり、病院でも優先されています。

・セコン県病院は、外来での患者さんへの説明を強化する計画が立案されています。医療スタッフが説明すべきインストラクションの内容を標準化し、その標準インストラクションに沿って説明することを目指した取り組みです。入院病棟は、患者情報のカルテへの記録が徹底されるように監査を実施する計画です。

・アタプー県病院は、外来で実施した患者教育の内容をカルテに記載することを徹底するために、患者モニタリング用ハンドブックのフォーマットを改訂し、記載しやすくする予定です。入院病棟は、患者への日々の与薬管理を徹底するために、チェックリストや標準作業手順作成が検討されています。

・各県とも11月に実施した標準作業手順書作成ワークショップの後に、チーム内で標準作業手順書の内容や活用方法を更に協議し、運用に向けて準備しています。

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分かりやすい標準作業手順書にするために皆で協議

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標準作業手順書の内容をチーム内で協議

3.第2回ラオス保健医療の質改善フォーラムの準備

ラオス保健医療の質改善フォーラムの第3回運営委員会を12月14日にビエンチャンで開催し、会場はルアンパバンに決定しました。ルアンパバン県病院は病院の入り口から出口までの患者接遇の良さが知られているため、ルアンパバン県病院での病院見学や演題発表にこの良さを反映させられるようプロジェクトで支援をしていきます。今後は、保健省が中心となってフォーラムのプログラムを作成します。

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ルアンパバン県病院のエントランス

4.第33回日本国際保健医療学会での発表

日本で12月1日に開催された第33回日本国際保健医療学会学術大会にて、以下の2演題を発表しました。

1.「主体的な質改善活動をどのように促すか?:JICAラオス保健医療の質改善プロジェクトによる病院の質基準と自己評価の導入事例」
村井真介、ニンノン・サイヤボン、橋爪亜希、神保覚子、西本悟朗、ソムチャン・トンサバット

2.「保健医療サービスの質改善活動を促進する質基準の導入-ラオス南部の県病院における看護部の活動事例-」
橋爪亜希、アヌソン・シスラ、村井真介

当日は満席で、教室をはみ出すほど多くの方々に発表を聞いていただきました。また、QHCプロジェクトがラオスの南部4県でこれまで進めてきた「病院の質基準と定期質評価のアプローチ」が日本国際保健医療学会に評価され、ベスト口演賞をいただきました。ラオス保健省、南部4県、JICAといったプロジェクト関係者の励みとなっています。

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看護部の活動及び成果について学会で発表