2019年6月のプロジェクトニュース

2019年7月1日

1.「第1回病院の質管理・患者安全研修」を実施しました

2019年6月11日、12日、チャンパサック県病院にて、南部4県病院の質管理委員会のメンバーを対象とした第1回病院の質管理・患者安全研修を実施しました。本研修は全4回のコースになっていて、今回は、「質の目標」と「優先順位付け」をテーマに2日間にわたるプロジェクト専門家による講義とワークショップを行い、合わせて病院の質改善モデル(QHCモデル)の運用を担う「病院の質管理の質基準(案)」の作成も行われました。第2回目は「5S:病院環境」、「安全な環境づくりのための危険予知」、「事実に基づいて議論する」をテーマとして、ラオスで先進的な病院管理の取り組みをしているヴィエンチャン県病院院長と副院長、チャンパサック県病院の看護部を講師に招き、2019年7月16日、17日に行われる予定です。「安全な環境づくりのための危険予知」は、チャンパサック県病院に配属されている青年海外協力隊員も講師に加わります。

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研修の様子

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研修の様子

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研修の様子

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研修の様子

2.QHCモデルの第2回執筆・編集委員会会合を開催しました

2019年6月13日、QHCモデルとりまとめのための第2回執筆・編集委員会会合がチャンパサック県病院で開催されました。南部4県の委員が集まり、ワークショップ形式にて、「県病院の質委員会」と「定期自己評価」について原稿を執筆しました。本プロジェクトは、「QHCモデル」というかたちで、ラオスの医療施設で継続的質改善を動かすラオス版PDCAサイクルの実現方法を開発しています。本委員会は、この「QHCモデル」の取り組みを事例集と導入ガイドとしてかたちに残すべく昨年11月に組織されたものです。今後、月に1回のペースで会合を持ち、年末頃を目処にガイドラインと事例集のドラフトを取りまとめる予定にしています。

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会合の様子

【画像】委員会メンバー

3.継続的質改善活動(KAIZEN、CQI)

南部4県の各県病院では、プロジェクトによって導入した病院の質基準に基づく自己評価を踏まえて、それぞれ、日常管理と継続的質改善活動に取り組んでいます。

病院サービス(3Goods)

・チャンパサック県病院の看護部は、5S活動で整理整頓がほぼ完了しました。一度整理整頓した物品を元の場所へ戻す習慣づくりのための介入を計画中です(吉田:青年海外協力隊)。
・サラワン県病院は、5月に改善機会として挙げていた、外来スタッフのタスク割振り(役割分担)を改善しました。受付スタッフを非医療スタッフから医療スタッフへ変更したほか、順番待ちカードの運用方法を見直しました。ほか、改善活動の一環で作成した「患者分類表」が病院執行部(Board of Directors)の承認を得て、これから使われます。

臨床サービス(2Goods)と病院サービス(3Goods)

・サラワン県病院は質改善活動としてカンガルーマザーケア(KMC)の導入に取り組んでいて。プロジェクト専門家と中央病院のコンサルテーション・チームが6月11日と12日に現状把握を行うとともに改善機会の抽出を支援しました。その結果を受けて、県病院では、カンガルーマザーケア用の部屋のアレンジ、患者への手洗い指導のためのポスターの作製、新スタッフ対象のEENC(早期必須新生児ケア)院内研修の実施などを進めていく予定です。

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中央病院のチームによるアセスメントの様子

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アセスメント結果を分析する様子

・チャンパサック県では、緊急産科症例のケア(EmOC)の質基準やトレーニングモジュールを用いて、県病院の産婦人科医師が郡病院の監督指導を行う準備をしています。また昨年度、改善活動として提起されていた「産婦人科病棟への超音波器材の導入」を今月完了しました。
・アタプー県では、県病院内の早期必須新生児ケア(EENC)のトレーナーが産婦人科病棟と小児科病棟のスタッフを対象に、新生児蘇生の院内研修を行うとともに、同サービスの質基準を作成する計画を立案しました。現在、実施準備中です。
・セコン県病院では、産婦人科の新しい科長の下で病棟内の整理整頓を実施しました。患者のプライバシーを保護するために、診察室にカーテンを設置しました。

病院のクオリティ・マネジメント

・プロジェクトでは、各県・郡病院が継続的質改善の活動を推進するに際して、病院の質委員会の役割が重要であると考えています。そこで、質委員会に対して、「病院の質管理・患者安全研修」を実施し医療の質・安全に関する基本的理解を深めるほか、質改善にかかる意志決定を支援する情報管理のあり方、特に定期質評価の後に開催される質委員会会議の運営方法を支援する「病院の情報マネジメント」の短期専門家派遣を検討中です。

4.看護委員会を対象にしたコンサルテーションの実施

プロジェクト専門家は、2019年6月6~7日、6月18~21日にかけて、セコンとサラワン県病院の看護委員会を対象にコンサルテーションを行いました。質委員会と看護委員会の関係を考慮しながら、各病院の優先改善機会に合わせて、看護委員会が考える継続的質改善活動が促進されるように助言しました。それぞれ、シフト管理や健康教育を喫緊の改善機会と考えていることもあり、質委員会にも諮りながらプロジェクトでも必要な支援を行っていく計画です。

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看護委員会のメンバーと伴に病院巡回

5.郡病院への質改善活動の展開状況の確認

これまで県病院で推進してきた質改善活動は、郡病院にも拡げています。2019年6月24~27日にかけて、QHCモデルの郡病院への展開状況を調査しました。今回訪問したのは、セコン県のタテン郡病院とアッタプー県のプボン郡病院でした。これと同時に、郡病院を所管するセコン県保健局とアタプー県保健局の関係者と、QHCモデルの郡病院への展開の進捗状況を整理しました。これを基に、今後の展開計画等について協議を行いました。その結果、セコン県では8月から9月にかけてプロジェクトが対象とする3つの郡病院にQHCプロジェクトの質基準を導入する準備を始めることになりました。アタプー県はすでにプロジェクトが対象とする2つの郡病院へQHCプロジェクトの質基準を展開する予算は確保したものの、郡病院のキャパシティ・デベロップメントの必要を感じており、郡レベルでの病院の質管理研修あるいは郡関係者の研修参加を要請しています。

今後、プロジェクトでもQHCモデルの郡への展開とその支援について検討していく予定です。

6.第2回ラオス保健医療サービスの質改善フォーラムの事後抄録集が完成しました

2月にルアンパバーンで実施した第2回ラオス保健医療サービスの質改善フォーラムの発表演題の抄録とスライドを含む事後抄録集(継続的質改善の事例集)がラオス語で完成し、関係者および関心を示す開発パートナーに配布しています。

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