本邦研修:森林の多面的利用

2017年9月15日

F-REDDはラオス政府職員の能力強化を目的として、昨年に引き続きラオス行政官を対象に本邦研修を実施しました。今回は「森林の多面的利用」をテーマとして、DOFの中央職員3名とその傘下であるルアンプラバン県職員3名が参加しました。

日本が合法的に伐採された木材等の利用と流通の促進を目的として施行したクリーンウッド法に関して林野庁およびFAIRWOOD PARTNERS(注1)から異なる視点で講義をうけました。ラオスでは昨年から厳しく取り締まっている違法伐採に加えて、合法材を適切に輸出管理する必要性を学びました。

また、林野庁で森林の多様な空間利用に関する講義を受けた後、それらの実践例を複数視察しました。高尾ふれあい推進センターでは学生・児童を対象とした森林教育や地域ボランティアを巻き込んだ森林整備などを実施している現場を訪問しました。ラオスでは地域住民をどのように巻き込んで森林管理を行うかが重要な課題となっているため、研修員は非常に興味があるようでした。また、福岡県では、八女市が事業主体として推進している森林セラピーを視察し、エコツーリズムの視点で森林を活用しかつ行政の歳入ともなる点が特に勉強になりました。同じく八女市で都市の住民や海外からのボランティアを巻き込んで山村振興を行っているNPO山村塾を訪問し、市民が主体となった森林管理の事例を学ぶことができました。

宮崎県諸塚村では行政が個人の林家や地元の企業を後押ししている林業振興の好例を視察しました。ここでは行政が森林認証制度(FSC)の取得を主導したり、木材加工場や販売経路開拓の支援をしたりしています。また、それとは対照的に江戸時代からの飫肥林業(注2)の流れを汲み、今もなお国有林での分収造林(注3)を実施している宮崎南部森林管理所を訪問しました。ここでは行政の歳入と地域住民の利益という双方にメリットのある施業を実現しています。仕組みや体制は違えども林業を推進している日本の好例を対比する形で見学できたことは研修員にとってよい刺激であったようです。

本研修はその目的の通り多岐にわたる分野を組み込んでいましたが、適切な森林管理には総じて行政と地域住民の連携が鍵となっていました。ラオスにとってどのような関係性や仕組みを取り入れて森林保全・管理を行っていくかを考える非常によい研修であったと考えられます。特に、研修員からは日本の森林管理の確立された仕組みから学ぶことが多いとの好評を受けました。

(注1)FAIRWOOD PARTNERS:途上国の違法伐採防止および日本を含む木材輸入国の合法木材利用推進を目的として国際環境 NGO FoE Japan と(財)地球・人間環境フォーラムが共同で行っている活動。 https://www.fairwood.jp/index.html

(注2)飫肥林業:江戸時代に飫肥藩における造林政策によって形成された林業地及び施業方法。藩と藩民で木材伐採の収益を配分した。

(注3)分収造林:森林地所有者、造林実施者の2者が共同で植林を行い、伐採時の収益をあらかじめ取り決めた比率で分配する施業方法。

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高尾山では地域と連携して森林保全・管理を行っている。(高尾森林ふれあい推進センター)

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人工林に広葉樹を植栽して、より自然度の高い森林へ変換する試みを行っているパッチワークの森(NPO山村塾)

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村産材で作成されたモデルルームにて意見交換(諸塚村)