マーケティング分野の近況

2018年3月27日

農家のアグリビジネスセンスを磨く(前篇)

「プロジェクト活動」欄に、当プロジェクト対象地区のトウガラシ農家について少しご紹介しました。今回は、彼らとの間にその後何があったかをご紹介します。

当プロジェクトサイトのトウガラシ農家は、10年以上トウガラシを栽培し続けるベテラン農家です。ただ、彼らの栽培しているトウガラシは、市場で1番安く売られている品種。最近では、以前と比べて仲買人が買ってくれる量が減ってきたとのこと。彼らはプロジェクトに対して、「買い手を探して欲しい」と要望してきました。その要望を受けた農業局職員は、バイヤーを探しにいざ市場へ。
市場に行ってみると、数種類のトウガラシがあり、プロジェクト農家のトウガラシも売られていました。
お客さんの動きを観察しながら、売り子さんと話していると、面白いことに値段が高いトウガラシの方が売れており、お客さんは値段が高くても味や香りの良い高値のトウガラシを買っていくとのこと。その値の差、約3倍。。。
この状況を農家に伝えるべく農業局職員と共に村を訪れ、市場の状況を説明。すると農家は口を揃えて、「その状況は既に知っている」と言うのです。そして、自分達が値段の高いトウガラシを栽培しない理由を並べ、正当化しこちらに伝えてきます。例えば、栽培期間が長すぎる。収量が低い。どれも、こちらが納得してしまう理由です。そして最後に、「種子を与えてくれるのであれば栽培してみる。種子が欲しい。」という話に発展していきます。
当プロジェクトでは、「農家に強制はしない」、「農家に考えさせて決めさせる」、「モノを与えるのでなく、技術や考える力を醸成する」を軸にしています。農家が納得していない状況で、プロジェクトから種子を与えても、農家がしっかりと育てる可能性が低く、持続的な活動に発展しないと考えるからです。自分達の生計向上のために何をすべきか、農家自身が考え自らのリスクを取り、それでも栽培を試みる、そのマインドを醸成していく事がプロジェクトの大きな課題です。

さて、このような中、プロジェクトが次に取った活動は。。。

【画像】

当プロジェクトの対象農家(トウガラシ栽培)

【画像】

市場での調査の様子

農家のアグリビジネスセンスを磨く(後編)

販路を探してくれという農家。しかし、彼らの商品は市場の価値が低くまた買い手が少ない。この現状を、私たちが口頭で説明しても伝わらない。そこで、市場調査研修を実施しました。当プロジェクトのマーケティング主要活動である、市場を意識した農家の営農技術の向上です。農家のアグリビジネスセンスを磨く。実際に農家を市場へ連れて行き、直接バイヤーと話をしてもらいました。また、自分達のトウガラシと他のトウガラシの値段の差や品質の差を、自らの目で見て聞く。時には、「あなた達のトウガラシは、香りが良くない」など、辛口な評価もありましたが、農家はしっかりと聞いていました。
視察後、農家から高値のトウガラシの品種の栽培技術を学んでみたいと言ってきました。
今度は、行政職員と共に該当品種を栽培している農家を探しに走りました。プロジェクト農家の熱が冷める前に、見学ツアーを実行。その足で、たくさん儲かるトウガラシ(高値の品種)と、それなりに儲かるトウガラシ(プロジェクト農家が栽培している品種)の違いや、実際にトウガラシで儲けている農家の栽培方法と、自分達の栽培方法の違いを、彼らが視察で発見したポイントを基に纏めました。栽培方法に関しても、自分達の改善点などが発見できたようです。
これまで自分の栽培方法や品種の選択に関して、頑なな態度を示していた農家は、次のシーズンからは、新たに高値の品種も栽培してみると農家同士で話していました。
本当に彼らが実践するかは、次のシーズンになるまでは分かりません。しかし、農家が自らの技術を向上させ、彼らが求める豊かな生活を実現するために自分達で何ができるか、選択肢を紹介すると共に考える力を醸成する活動に取組んでいます。

【画像】

トウガラシ栽培農家を視察する当プロジェクト対象地区の農家の人々

【画像】

トウガラシ栽培農家を視察する当プロジェクト対象地区の農家の人々