プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)水道事業運営管理能力向上プロジェクト(MaWaSU 2)
(英)The Project for Improvement of Management Capacity of Water Supply Sector(MaWaSU 2)

対象国名

ラオス人民民主共和国

署名日(実施合意)

2017年12月26日

プロジェクトサイト

ビエンチャン都、ルアンパバーン県、カムアン県、その他

協力期間

2018年5月21日から2023年12月20日

相手国機関名

公共事業運輸省 水道局、ビエンチャン都・ルアンパバーン県・カムアン県の各水道公社及び公共事業運輸局、その他県の水道公社及び事業運輸局

背景

ラオス政府は、1999年に発令された首相令37において、2020年までに都市部に居住する人口の8割に対して24時間安全な水を供給することを目標に掲げている。「第8次国家社会経済開発5カ年計画(NSEDP)(2016-2020)」に基づく水道戦略においては、全国水道普及率の目標を2020年までに全人口の9割と定めているが、2015年の都市における水道普及率は64%にとどまっている。ラオスの水道事業は、公共事業運輸省(MPWT)水道局(DWS)が上水道事業の運営管理責任を担っているものの、首相令により事業運営自体が全て都県に移管され、全国に18存在する都県の水道公社にその経営が委ねられている。

JICAはこれら水道公社の事業運営能力の向上を目的として、技術協力プロジェクト「水道公社事業管理能力向上プロジェクト」(2012年8月~2017年8月)(以下、MaWaSU)において、主にビエンチャン都、ルアンパバーン県、カムアン県の3水道公社人材を中心に水道事業計画の策定強化支援を行い、対象3公社では計画に基づく事業運営について基本的な能力を習得した。一方で、経営基盤は3公社を含むほとんどの公社において脆弱であり、設備投資・更新はドナーや民間投資による資金に大きく依存している。近年では、施設整備・運営に関与する民間企業が増加しているが、これら民間企業の監督に関する法制度や事業認可制度なども整備されていない。官民による適切な水道事業を運営する環境が整えられていない状況を踏まえ、ラオス政府は、水道行政能力の強化と水道公社の経営改善を目的として、1)中央と県の行政機関の役割を明確化し、各レベルで必要な水道行政能力の向上、2)長期・低利の資金調達システムの構築、3)民間資金活用等の官民連携システムの構築、4)ビエンチャン都、ルアンパバーン県、カムアン県水道公社の水道事業実施能力の更なる向上、5)上記3都県で強化した水道事業実施モデルの全国展開の5つの活動を中心とした技術協力プロジェクトの実施を我が国に要請した。2016年度に実施した「ラオス上水道セクター情報収集・確認調査」の結果も踏まえ、MaWaSU終了以降、継続的に取り組まなければならない課題として、1)持続的な経営を可能とする水道事業に関連した制度構築支援、2)水道事業と施設整備事業実施の中核を担う水道公社の更なる能力強化、3)MaWaSUで指導した計画に基づく事業運営方式の全国展開、の3点が確認されている。

首相令37、NSEDP(2016-2020)に加え、MPWTにより策定された「上下水道セクター開発」においては、2020年までに8割、2030年までに9割の都市人口に対して安全で安定的な都市給水を行うと定めている。本件は、同国の開発政策の実現に貢献することが期待される。

目標

上位目標

国家目標を達成するための水道セクター管理体制と水道公社の能力が強化される。

プロジェクト目標

水道セクター管理体制と水道公社の能力を強化するために必要な基盤が整備される。

成果

1.水道行政の改善を通じて、水道セクターの透明性、アカウンタビリティ、ガバナンス(TAG)が強化される。
2.施設整備事業における水道公社の計画・実施能力、公共事業運輸省(MPWT)、県公共事業運輸局(DPWT)の審査・モニタリング・評価能力が強化される。
3.水道事業に必要な技術基準が作成される。
4.水道公社の水道事業に関する計画実施能力が強化される。

活動

1.水道行政の改善を通じて、水道セクターの透明性、アカウンタビリティ、ガバナンス(TAG)が強化される。
1-1 以下の活動を行うために組織制度検討委員会(IRC)が組織され、優先課題が特定される。
1-1-1 行政能力の不足分野を特定するために、公共事業運輸省(MPWT)、同省水道局(DWS)及び県公共事業運輸局(DPWT)の現在の行政能力、並びに法制度により定められた各組織の任務をレビューする。
1-1-2 TAGに関する現在の組織・制度面での有効性をレビューする。
1-1-3 IRCメンバー及び他の関係組織に対し、レビュー結果を共有するためのワークショップを開催する。
1-1-4 ワークショップでの議論を基に、組織・制度に関してさらに詳細な調査が必要な事項の調査スコープを設定し、調査を行う。
1-1-5 提言を含む包括的制度改善戦略(OIDS)を関係機関と共有する。
1-1-6 OIDSの中で特定された課題(例えば、水道事業の認可制度、官民連携(PPP)、水道公社及び民間事業者に対する技術/財務面のモニタリング等)の中から、TAGの強化のために最も有効と思われる課題を優先課題として特定する。
1-2 DWSの主導で、1-1-6で特定された優先課題に関連のある組織(例えば、計画投資省(MPI)、内務省(MoHA)、財務省(MOF)、地方政府)と協働し、現在の行政能力をレビューするため以下の活動を行う。
1-2-1 優先課題の現況をレビューする。
1-2-2 優先課題に関して現行法制度の規定をレビューする。
1-2-3 TAGの観点から、現在の組織・制度の有効性をレビューする。
1-2-4 DWSにおいて1-2-1, 1-2-2及び1-2-3のレビュー結果を共有するためのワークショップを開催し、必要に応じ関連組織と共有する。
1-2-5 ワークショップの議論を基にさらに調査が必要な事項の調査スコープを設定し、調査を実施する。
1-3 DWSが優先課題改善戦略(PDCDS)を策定する。
1-3-1 優先課題に関するPDCDSの草案を策定する。
1-3-2 IRCにて草案を議論する。
1-3-3 普及やフィードバックのためのワークショップを開催する。
1-3-4 DWSがPDCDSを最終化する。
1-3-5 PDCDSでまとめた制度改善及び能力強化の一部が実施される。
1-4 水道セクター開発基金の管理・運営の仕組みを検討するため、DWSの主導で、MPI、MHA、MOF、地方政府を含む全てのステークホルダー組織をメンバーとする水道セクター開発基金委員会(FFC)を組織し、以下の活動を行う。
1-4-1 基金の管理・運営に必要な能力の種類とレベルを決定する。
1-4-2 2-2以降で実施するパイロットプロジェクトからの教訓を抽出する。
1-4-3 TAGを確保するための必要要件を定める。
1-4-4 上記に関する議論に基づき基金設立に向けて必要な調査スコープを決定し、焦点を絞った調査を行う。
1-4-5 基金の管理・運営に関する包括的な手順を設計する。
1-5 資金メカニズムを提案する。
1-5-1 都市部における水道公社の独立採算と地方部に対する補助金に関する目標水準を定める。
1-5-2 資金源を検討する(ドナー資金、料金への上乗せ、政府による金利補助など)。
1-5-3 財政シミュレーションやリスク分析等の資金メカニズムの検討に必要な分野の調査スコープを決定し、調査を行う。
1-5-4 包括的な資金メカニズムを提案する。
1-6 DWSが水道セクター開発基金計画を最終化する。
1-6-1 1-4と1-5で検討した基金の管理・運営の仕組みと資金メカニズムを統合し、基金の骨子を検討する。
1-6-2 基金設立に関する提案書の草案を作成する。
1-6-3 全てのステークホルダー間で草案を議論する。
1-6-4 基金に関する理解促進及び普及やフィードバックのためのワークショップを開催する。
1-6-5 DWSが水道セクター開発基金計画を最終化する。
1-7 MaWaSUプロジェクトで支援された水道戦略、水道事業ガイドライン、水道事業年報の策定または改定、活用を通じて水道行政の実務能力が強化される。
1-7-1 水道戦略、水道事業ガイドライン、水道事業年報の現状を把握し評価する。
1-7-2 水道事業ガイドラインを改定する。
1-7-3 DWSが水道事業ガイドライン及び水道事業年報を活用し水道セクター年報を作成する。
1-7-4 DWSが水道セクター年報をアップデートする。
1-7-5 DWSが水道戦略を改定する。
1-7-6 DPWTが改定された水道戦略を基に地域水道戦略を策定する。

2.施設整備事業における水道公社の計画・実施能力、MPWT、DPWTの審査・モニタリング・評価能力が強化される。
2-1 施設整備事業の計画・管理体制に関する現状をレビューし、パイロットプロジェクトの実施体制を検討する。
2-1-1 DWS主導の下に、DWS、DPWT、水道公社をメンバーとするパイロットプロジェクトタスクチーム(PPTT)を立ち上げる。
2-1-2 PPTTが施設整備事業の実施に関して各機関の役割、権限、責任を明らかにする。
2-1-3 PPTTが(本プロジェクトの中で提供される資金の申請プロセスを検討するために)施設整備の手順(計画-審査-実施-モニタリング-評価)を明らかにする。
2-1-4 PPTTがプロポーザル作成のための手順を定める。(注)
2-1-5 PPTTが、手順に基づき水道公社に対する説明会の開催準備を行う。
2-2 パイロットプロジェクトを実施する。
2-2-1 DWSが、全ての水道公社に対してパイロットプロジェクトに関する説明会を開催する。
2-2-2 水道公社はDPWTと調整の上、パイロットプロジェクト資金を申請するプロポーザルを作成し、DWSへ提出する。
2-2-3 プロポーザルを技術、財政、環境社会配慮面から審査する。
2-2-4 DWSがプロポーザルを審査し、パイロットプロジェクト実施採択の水道公社を選定し、全ての水道公社に選定結果について通知する。
2-2-5 採択された水道公社がDPWTと調整の上、パイロットプロジェクトを実施するための設計図書と入札図書を準備する。
2-2-6 DWSがDPWT及び水道公社とパイロットプロジェクトの契約を締結する。
2-2-7 水道公社がDPWTと調整の上、パイロットプロジェクトの施工管理を実施する。
2-2-8 水道公社は、DPWTと調整の上、パイロットプロジェクトの中間報告書及び完了報告書をDWSに提出する。
2-2-9 DWS及びDPWTは、パイロットプロジェクトの進捗状況を監視し、必要に応じて水道公社に助言する。
2-2-10 施工管理支援員は、約1ヶ月に1回、担当するパイロットプロジェクトの現場を訪問し、工事管理に関する日本の専門家のコメントを含めた助言を行う。
2-2-11 DWSは、プロジェクト完了報告書を承認する。
2-3 パイロットプロジェクトの実施体制を見直す。
2-3-1 DWSがパイロットプロジェクト活動の事後評価を実施する。
2-3-2 DWSがパイロットプロジェクトの教訓を抽出し、成果1の水道セクター開発基金に反映する。
2-4 パイロットプロジェクトのスキームを活用して、新型コロナウイルスの感染拡大対策に資する活動を実施する。
2-5 DWSが施設整備事業プロポーザル作成ガイドライン、施設整備事業実施ガイドラインを作成する。
(注)MaWaSUプロジェクトで作成されたガイドラインと整合性をとることを前提条件とすること等を検討する。

3.水道事業に必要な技術基準が作成される。
3-1 必要なタスクチームが組織され、技術基準の優先順位と範囲が決定される。
3-1-1 技術基準の検討と作成のため、DWS、DPWT、及び水道公社をメンバーとする基準タスクチーム(STT)を立ち上げる。
3-1-2 STTが作成する技術基準の優先順位を決定する。
3-1-3 STTが最も優先度の高い技術基準について、設定すべき技術内容の範囲について議論し、決定する。
3-2 決定した優先度の高い技術基準の作成に向けて、公的承認に必要な委員会等が組織される。
3-2-1 DWS、DPWT、及び水道公社等をメンバーとする、技術基準の公的承認のための技術基準委員会(TSC)を立ち上げる。
3-2-2 DWSをメンバーとする省令タスクチーム(MTT)を立ち上げる。
3-3 決定した優先度の高い技術基準が作成・提出される。
3-3-1 MTTが技術基準(省令)の草案を作成する。
3-3-2 TSCが技術基準(省令)の草案を審査する。
3-3-3 TSCが技術基準(省令)の草案をMPWTに提出する。
3-3-4 STTが技術基準(指針)の草案を作成する。
3-3-5 TSCが技術基準(指針)の草案を審査する。
3-3-6 STTが技術基準(指針)の草案をDWSに提出する。
3-4 作成された技術基準が全国に普及される。
3-4-1 TSCが全国のDPWT及び水道公社への普及方法を検討し、決定する。
3-4-2 決定された普及方法が実行される。
3-5 3-3で作成・提出された以外の優先度の高い技術基準について、設定すべき技術内容の範囲について議論し、決定する。

4.水道公社の水道事業に関する計画実施能力が強化される。
4-1 パイロット水道公社において、重点分野(土木・水質・財務)における実務能力、指導能力が向上する。
4-1-1 土木、水質及び財務の各分野において、能力向上が必要な実務内容が特定される。
4-1-2 特定された実務内容に関するパイロット水道公社の現在の能力が評価され、プロジェクト期間中に達成すべきレベルが決定される。
4-1-3 パイロット水道公社の職員から、4-1-1および4-1-2で特定された分野の全国展開リソースパーソンを選定し、現状能力を評価する。
4-1-4 JICA専門家がパイロット水道公社の全国展開リソースパーソンに対し実務の指導を実施する。
4-1-5 パイロット水道公社の全国展開リソースパーソンの能力を再評価する。
4-2 MaWaSUプロジェクトで承認された全国展開計画を実施するためのMPWT、DPWT及びパイロット水道公社の役割が明確にされ、計画が実行される。
4-2-1 全国展開計画の内容が見直される。
4-2-2 見直された全国展開計画に基づき、全国展開活動が実施される。
4-2-3 プロジェクト前半の全国展開活動実施結果が取りまとめられ、プロジェクト後半の全国展開活動計画(時期・開催地・内容・予算措置等)が策定される。
4-2-4 策定されたプロジェクト後半の計画に基づき全国展開活動が実施される。
4-2-5 全国展開活動(後半)の結果が取りまとめられ、ラオス水道協会活動へフィードバックされる。
4-2-6 予算措置に伴い4-2-1から4-2-5までの活動が繰り返し実施される。
4-3 MaWaSUプロジェクトで立ち上げられた分科会活動が実施される。
4-3-1 パイロット水道公社がMaWaSU分科会の現状をレビューする。
4-3-2 パイロット水道公社がMaWaSU分科会を現状に合わせて再編成する。
4-3-3 パイロット水道公社がMaWaSU分科会を年6回程度開催する。
4-3-4 パイロット水道公社がMaWaSU分科会を再レビューし、必要に応じて改善に向けてのアクションが取られる。
4-4 全国の水質管理体制が強化される。
4-4-1 全国水道公社の水質管理状況がレビューされる。
4-4-2 全国水質管理体制計画が策定される。
4-4-3 全国水質管理体制計画が、機材供与と合わせて実行される。
4-4-4 全国水道公社の水質管理方法が改善される。
4-5 水道公社がラオス水道協会(LWWA)を設立し活動を実施する。
4-5-1 水道公社がLWWAの設立を準備する。
4-5-2 水道公社がLWWAを設立する。
4-5-3 LWWAが活動を実施する。
4-5-4 LWWAがMaWaSU2プロジェクト終了後のプロジェクト活動継続について検討する。
4-5-5 LWWAがMaWaSU2プロジェクト活動の一部を引き継ぐ。
4-6 水道公社が水道教室の実施を通じてCovid-19対策に資する手洗い促進活動を実施する。

投入

日本側投入

長期・短期専門家派遣
国別研修
機材供与(水質関連機器)

相手国側投入

カウンターパートの配置
日本側専門家執務スペースと設備の提供
プロジェクト活動に必要な情報やデータの提供
ラオス側投入人材の活動費・事務・運用経費