プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)モンセラード州保健サービス改善・監理支援能力強化プロジェクト
(英)Project for Management Capacity Development for Improvement of Health Services in Montserrado County

対象国名

リベリア

署名日(実施合意)

2019年12月16日

プロジェクトサイト

モンセラード州

協力期間

2021年10月9日から2024年10月8日

相手国機関名

(和)保健省、モンセラード州保健局(Montserrado County Health Team:MCHT)
(英)Ministry of Health, Montserrado County Health Team

背景

リベリア共和国(以下、「リベリア」)では1989年から15年に及んだ内戦により保健医療システムが荒廃し、保健・衛生指標は著しく悪化した。現在に至っても、同国の妊産婦死亡率は725(出生10万対)(WHO, 2018年)、乳児死亡率は56(出生1,000対)(世銀, 2017年)、人間開発指数は189か国中181位(2017年)と、世界最低レベルを推移している。加えて、2014年に発生したエボラウイルス病(EVD)の感染拡大では、かねてより脆弱な保健医療システムが一時的に機能不全となり、延べ4,800名以上の死者を出した。
リベリアは長年に亘り、必須医薬品・医療機材の慢性的な不足、医療従事者の不足とモチベーションの低下、基礎インフラ(安全な水と電気へのアクセス)の欠如、コミュニティ保健の普及の遅れ、地方における医療機関への限られたアクセスなど、保健サービスの提供における多様な課題に直面している。一方、保健セクターの公的財政の逼迫、保健行政のマネジメント能力の低さ、低いガバナンス機能など、保健システムの維持・改善に不可欠な問題も抱えている。このような状況を受け、リベリア政府は2015年に「強靭な保健システムを構築するための投資計画(Investment Plan for Building Resilient Health Systems in Liberia 2015-2021)」(以下、「投資計画」)を策定し、保健医療システムの再構築と強靭化、ユニバーサルヘルスカバレッジ(Universal Health Coverage:UHC)の達成に向けた質の高い保健サービスの提供に取り組んでいる。
また、JICAは「保健サービス監理支援能力強化(個別専門家)(2015-2018)」を通じて、モンセラード州保健局(Montserrado County Health Office:MCHT)の保健行政マネジメント能力の強化を図ってきた。リベリア全人口の約3分の1が生活しているモンセラード州は、他州と比較して基礎インフラや医療施設は整備されている。しかしながら、同州の妊産婦死亡数は国内の総妊産婦死亡の4分の1を占めており、乳児死亡率も70(出生1,000対)(LDHS, 2013)と、同州の保健・衛生指標は必ずしも良くない。加えて、必須医薬品の供給遅延、十分に機能していない保健情報管理システム、州・郡保健局から保健・医療施設に対する指導監督(スーパービジョン)不足等、保健行政における課題も抱えている。
リベリア保健セクターの10か年開発政策「National Health Social Welfare Policy and Plan 2011-2022」及び投資計画において、保健行政の地方分権化とその機能強化は、保健サービスの提供・拡大に向けた主要な取り組みの一つに挙げられている。特に投資計画では、州・郡保健局の行政機能の強化を優先的投資エリアの一つとして位置づけ、包括的な保健システムの強化並びに保健サービスの質の向上に必要不可欠であるとしている。本案件は、これらの背景や開発指針に基づき、MCHTの更なる保健行政機能の強化を目的として、リベリア政府より要請された。

目標

上位目標

モンセラード州における保健サービス(特に母子保健サービス)の提供が改善する。

プロジェクト目標

モンセラード州保健局のマネジメント能力が向上する。

成果

1.MCHTの監理機能が適切に発揮される。
2.保健情報の分析能力強化により、保健情報システム(DHIS-2:District Health Information System 2)のフィードバックシステムが強化される。
3.ミニプロジェクトを通じて、MCHTと郡保健局のPDCAサイクル(計画・実施・評価・改善)に基づく管理能力が強化される。
4.MCHTにおいて統合サポーティブスーパービジョン(Joint Integrated Supportive Supervision、以下「JISS」)の実施サイクルが強化される。
5.行政マネジメントに係るグッドプラクティスや教訓が情報交換される。

活動

成果1に係る活動

1-1.MCHTが日常業務を遂行するために必要なマネジメントスキルに関する研修のニーズ調査を実施する。
1-2.マネジメント研修の内容の特定、講師選定、教材の開発、研修実施を行う。(マネジメント研修にはリーダーシップ、計画策定、モニタリング・評価に係るテーマが含まれ、MCHTと郡保健局を対象とする)
1-3.前年度の業績評価に基づき年間活動計画を策定する。
1-4.郡保健局及び保健施設長との四半期レビュー会議を改善する。
1-5.州保健局四半期報告書の作成と保健省への提出の定着化を図る。
1-6.MCHTの年間活動計画の評価(年次成果レビュー)を実施する。
1-7.モンセラード州内で活動する開発パートナーとMCHT、郡保健局間の情報共有を改善する。

成果2に係る活動

2-1.郡保健局及びMCHTによる保健施設の訪問指導を通じて、保健施設における適切なデータ・情報収集及び報告を強化する。
2-2.各保健施設からの月例報告を通じて集めたデータ・情報の分析を強化する。
2-3.データ・情報の分析結果に関する、MCHTから郡保健局を通じた保健施設へのフィードバックシステムを強化する。

成果3に係る活動

3-1.ミニプロジェクトを立案する。
3-2.ミニプロジェクトを実施・運営管理する。
3-3.ミニプロジェクトの実施をモニタリングし、その結果を評価する。
3-4.3-3を通じて特定されたグッドプラクティス、教訓や提言を文書化する。
3-5.モンセラード州内の関係者にグッドプラクティス、教訓や提言を共有する。

成果4に係る活動

4-1.JISS実施の現状と課題を把握する。
4-2.活動計画のフォローアップを含めたJISS実施のための標準作業手順(Standard Operation Procedure、以下「SOP」)を策定する。
4-3.(MCHT及び郡保健局の関係職員に対し)JISSツールとSOPに関する研修を行う。
4-4.年間活動計画に従い、JISSを実施する。
4-5.特定された課題を優先順位づけし、課題解決のためのフォローアップ活動を計画する。
4-6.各保健施設でフォローアップ活動を実施する。
4-7.フォローアップ活動の結果を評価する。
4-8.保健サービスの継続的な改善に向けた政府予算によるフォローアップ活動の計画・実施メカニズムを制度化させる。

成果5に係る活動

5-1.行政マネジメントに関する経験、グッドプラクティス、教訓を学ぶための活動を計画、実施する。
5-2.プロジェクトにおける経験、グッドプラクティス、教訓を共有するための活動を計画、実施する。
5-3.プロジェクトの進捗に関する情報発信のための広報活動(ソーシャルメディアやウェブ上でのニュースレター発行等)を実施する。
5-4.プロジェクトの成果と教訓の共有と発信を目的に、プロジェクト終了時に関係者会議を開催する。

投入

日本側投入

1.専門家派遣:総括/保健システム、サポーティブスーパービジョン(医療機関の指導監督)、業務調整/研修実施管理
2.研修員受け入れ:保健システム強化、母子保健等の課題別研修上乗せ機材供与:フォローアップ活動やミニプロジェクト実施に必要な機材等(例:体重計、身長計等)
3.機材供与:フォローアップ活動やミニプロジェクト実施に必要な機材等(例:体重計、身長計等)
4.ローカルコスト:リベリア側負担事項以外のプロジェクト活動実施に必要な運営経費

相手国側投入

1.カウンターパートの配置
2.MCHT内の執務スペース及び家具等
3.運営・活動費