2015年10月の活動

2015年10月31日

1.今月の主な活動と今後の予定

(1)アロチャ・マングル県での活動

1)当初対象3コミューンでの活動(対象期間:2015年9月1日〜30日)

9月より今年度の稚魚生産研修がはじまりました。今年は、池の準備と親魚の配布、ともに適期に実施することができ、6サイトのうち5サイトが産卵に成功しています。残りの1サイトは、隣の水田への取水のために当該池への取水ができず、別の池に親魚を移動せざるを得ない事態が発生したため、産卵が遅れています。
成功要因のひとつとして、産卵期に研修講師が頻繁にサイトを訪問していることがあげられます。研修講師と池の所有者、エリアマネージャーやNGOスタッフとの信頼関係が構築され、同講師が無償で積極的にモニタリングしてくれています。また、複数回の産卵シーズンを経て、エリアマネージャーやエグゼクティブマネージャーの経験知が上がり、研修講師がサイトを訪問できない場合も、適切な指導ができていることも成功の一因です。

エリアマネージャーによる住民活動のモニタリングの中で、複数のグッドプラクティスが見られました。具体例は以下のとおりです。

  • アンドレバケリスッドのアンボンガベフクタンで、取り木したライチを直挿しで移植することに取り組んだ6世帯のすべてで、この取り組みが成功しました。
  • 訪問した442世帯のうち200世帯ほどが、改良かまどの有益性を言及し、近隣住民へ販売したり、再度改良かまど研修を実施してもらいたいと表明するなど、改良かまどに対して積極的な意見を寄せています。
  • 植林活動については、モニタリングの機会を利用してローカルトレーナーが住民に植林活動の開始を呼びかけたり、住民からの研修の要望に対して、ローカルトレーナーが無償で植林研修を実施するなどの活動が見られました。また、住民によるユーカリ種子の自家採種の取り組みが報告されています。
  • 本プロジェクトが2013年度と2014年度に配布したライチは、現在花をつけ始めています。幹を十分に大きく育てるため、果実が結実しないように、あと3年間は花を摘み取るよう、リードファーマーを通じて住民に指導しています。

2)新対象2コミューンでの活動(対象期間:2015年9月1日〜30日)

9月からローカルトレーナーに対する植林研修が開始されました。また76回の改良かまど・シャルボンブザカ(草本を材料として作製する丸形の炭)に関する住民向けの研修が実施され、2コミューンを合わせて、1,100人(男性:551人、女性:549名)の住民が参加しました。2015年6月から9月までの累計では、259回の研修が開催され、約3,700人の住民が参加しました(表1参照)。

表1 新対象2コミューンの研修実績表
研修名 研修回数
(2015年9月)
研修回数
(2015年6月〜9月末)
累積研修参加者数
男性 女性 合計
ライチ取り木研修(住民向け) 5 83 692 383 1,075
ライチ取り木研修(ToT) - 3 12 3 15
改良かまど・シャルボンブザカ研修(注1)(住民向け) 76 167 1,276 1,237 2,513
改良かまど・シャルボンブザカ研修(ToT) 5 6 12 7 19
植林研修(ToT) 12 - 39 50 89
合計 98 259 2,031 1,680 3,711

アクセスが困難なカテゴリ3(注2)に属するアンディラナトビーコミューンのアンボヒマシナフクタンとアンカシナフクタンで、住民への啓発活動を実施しました。今月はカテゴリ1と2の経験を基に、より少ない予算で効果的に啓発活動を実施する工夫について、以下に報告します。

1)4名のエリアマネージャーと1名のエグゼクティブマネージャーが一緒に啓発活動を実施しました。
以前は同エリアを担当する1名のエリアマネージャーが、音響機器とジェネレーターを使用してプロジェクト紹介を行っていたため、1か所の啓発に機材レンタル費用が20万Ar(8,000円)かかっていました。カテゴリ3では、5名のスタッフを動員することで、音響機材を借りる必要がなくなりました。
2)フクタン長への挨拶、同日夜間にDVD上映、翌日の早朝からデモンストレーションとローカルトレーナーの選出と、連続する2日間に5名のスタッフが新対象地に宿泊して啓発活動を行いました。
スタッフが宿泊することで住民との信頼関係が生まれ、連続した2日間、更には住民が畑に出かける前の時間帯に啓発活動を実施することによって、より多くの住民の参加が得られました。

9月は、カテゴリ3に属する2フクタンにおいて、ローカルトレーナー候補へ改良かまど・シャルボンブザカ研修の講師育成研修が5回実施されました。

(注1)草本を材料として作製する丸形の炭
(注2)アクセスの容易さの順に、対象地域を1,2,3のカテゴリに分類している。第1フェーズではアクセスが比較的容易なカテゴリ1と2の地域のみで活動を展開してきた。

3)野火対策研修

今年も、県森林局の行政官による野火対策研修が14か所で実施されました。内訳は、当初対象3コミューンで7か所、新対象2コミューンで7か所でした。住民の参加者数は約1,150名で1サイト当たりの平均参加者数は82名となっていて、住民が高い関心を持っていることが推察できます。
8月月報で既報のとおり、マダガスカルの財政危機が深刻化しているため、環境省から県森林局へ交付されるべきカウンターパート予算がまったく下りていません。このため本プロジェクトは、野火対策研修の講師となる県森林局職員の移動費(ガソリン代)と日当の半額を昨年に引き続き支援しました。

(2)ブングラバ県での活動(対象期間:9月下旬〜10月下旬)

1)研修の実施

ブングラバ県でも、植林研修と野火対策研修が実施されました。2015年9月までの研修実施数は168回で、2コミューン合わせて4,987名の住民が参加しました。

研修名 研修回数
(2015年6月〜9月末)
累積研修参加者数
男性 女性 合計
野火対策研修 4 29 17 46
改良かまど研修(住民向け) 83 1,034 1,146 2,180
改良かまど研修(ToT) 9 17 2 19
植林研修(住民向け) 67 1,705 1,012 2,717
植林研修(ToT)   19 6 25
合計 168 2,804 2,183 4,987

ブングラバ県の植林研修では、3種類の樹種(ユーカリ2品種、アカシア1品種)と村の商店でも入手可能な透明ポリチューブを植林用ポットとして配布しています。ブングラバ県の住民はアロチャ・マングル県と比べて、植林を実施した経験のある住民が少ないことが聞き取りによって分かっています。このため植林研修は、採種・播種研修、移植研修、山だし研修の3ステップに分けて実施します。

県農業局と県森林局のスタッフによるモニタリングでは、アンバトランピコミューンの村で多くの住民が改良かまどを作成し、さらには改良を重ねていることが確認されました。同地のローカルトレーナーによると、彼が訪問した住民の改良かまどの作製率は80%に上るといいます。村でインタビューした住民3名は、全員3~4回カマドを自ら改良しているとのことでした。

2)変更契約準備

予定していたコショウボクの接ぎ木研修は、技術的な難しさと販売先が希少であることから実施を取りやめました。この予算を、中央高地コメ生産性向上プロジェクト第2フェーズ(PAPRiz II)の技術普及のための農業資材(化学肥料と改良種子)の購入に充てることを、再委託先の県農業局および県森林局と合意しました。購入した資材は、11月中旬に実施されるリソースパーソンへのPAPRiz技術に関する講師育成研修の際に、PAPRizのリソースパーソン約30名に配布される予定です。また、研修単位数が減数となったため、植林研修のステップ数を2回から3回に増やしました。上述のように、ブングラバ県の現状に合わせて見積書を修正し、11月下旬に変更契約を取り交わす予定です。

3)JCCの実施

10月20日に、第2フェーズ第1回目の合同調整委員会(JCC)を実施しました。環境省の次官の交代と重なってしまったものの、農業省次官や世銀環境オフィサーの参加を得て、活発な議論が繰り広げられました。議事内容は、1)プロジェクトのこれまでの活動とその成果、2)第2フェーズ1年次の年間活動計画の確認と見直し、3)PRODAIREモデルユーザーマニュアル作成グループの設置、でした。

4)PRODAIREモデルユーザーマニュアル作成グループの設置

上記JCCでの決定を受け、マニュアルとプログラム案の作成グループを設置しました。

目的
PRODAIREモデルユーザーマニュアルとプログラム案を作成し、環境省と農業省の承認を得る
期間
2015年11月からプロジェクト終了まで(2017年2月頃)
メンバー
環境省と農業省から2名ずつ、対象県の森林局と農業開発局から1名ずつの計8名にプロジェクトスタッフと専門家
TOR
1)環境省と農業省の関連政策に立脚し、マニュアルやプログラム案を作成する
2)PRODAIREモデルの普及戦略を立てる
3)3か月に1回開かれるグループ会議に出席する
4)各省で行うモデル発表(会)を準備する
5)マニュアル承認ワークショップを準備する

現在、各関係機関のメンバーが決まり、11月には中央レベルの第1回会合(農業省メンバーへのプロジェクトとモデルの説明)が行われます。

5)他の組織やプロジェクトとの連携の可能性の模索

1)PAPRizとの連携強化
「(2)ブングラバ県での活動」で述べた通り、PAPRizへの効率の良い活動の引継ぎを目的として、ピンク・ペッパー普及に計上していた予算をPAPRizの技術パッケージ普及の試行に活用することにしました。
この変更を受け、2014/2015年の耕作期には、DRDA/PAPRizが研修講師の人件費や移動費を負担し、PRODAIREがリソースパーソン(住民講師)に配布する種子や肥料の購入費を負担します。リソースパーソンには研修実施の対価として金銭は支払わず、研修に使用する種子と肥料を渡し、インセンティブとします。また、PAPRizの普及アプローチを考え、技術パッケージの普及単位として、灌漑圃場(スキーム)を採用します。
ブングラバDRDAが提案しているスキーム単位での普及戦略は、1)技術パッケージの普及が可能なスキームの選択、2)そのスキームの近隣村でPRODAIRE型の全住民を対象としたPAPRizの説明と家計研修簡易版を実施、3)各スキームで1〜複数名のリソースパーソンを自薦、他薦で選択、4)リソースパーソンに対するTOTの実施、5)リソースパーソンによる各スキームでのPRODAIRE方式の研修実施、6)CDRとリソースパーソンによるフォローアップとモニタリングの実施、です。
同普及モデルの有効性を評価するために、2016年度のインパクト調査で、PAPRiz技術パッケージの普及の度合いや問題点を確認します。そして、2015/2016のブングラバ県での活動の結果を踏まえて、PAPRiz用のプログラム案を策定します。同プログラム案は、ブングラバとイタシの両県の国道沿いのフクタンを対象とした「流域保全(植林、ラバカ対策、改良かまど)+生活改善(改良かまどの研修とモニタリング・フォローアップで活用)+PAPRizの技術パッケージ」の普及に係る方法、実施体制、予算案をまとめたものになります。

2)Ambatovy鉱山との連携の可能性
10月9日にAmbatovy鉱山の環境配慮関連施設を訪問し、プロジェクトの紹介や意見交換を行いました。今年度、住友商事から供与していただいた植林ポットに続いて、どのような形での連携が可能かを今後双方で検討していく予定です。

2.2015年11月の専門家の離着任予定

11月4日 北窓専門家着任

3.活動写真集

【画像】

稚魚生産研修で親魚となる雌雄を分けている様子(アロチャ・マングル県ムララノクロムコミューン)

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住民によって集められたユーカリの種子が乾燥されている(アロチャ・マングル県アンドレバケリスッドコミューン)

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住民の庭の片隅につくられた個人苗畑(アロチャ・マングル県アンドレバケリスッドコミューン)

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ローカルトレーナーに対する植林研修(アロチャ・マングル県アンディラナトビコミューン)

【画像】

住民自身の手によって改良をかさねた炭用のカマド。インタビューした住民3名は、3〜4回ほど改良を重ねていた(ブングラバ県アンバトランピコミューン)

【画像】

ローカルトレーナーへの植林研修(ブングラバ県)