2015年11月の活動

2015年11月30日

1.今月の主な活動と今後の予定

(1)アロチャ・マングル県での活動

1)当初対象3コミューンでの活動(対象期間:2015年10月1日〜31日)

2015年度のロイヤル・カープ稚魚生産研修は5サイト(注1)で実施を支援しており、この5サイトで稚魚の産卵が本格的に始まりました。昨年支援したサイトを含めて親魚の産卵と稚魚の孵化は順調に進んでいる一方で、住民からの稚魚購入の希望は昨年と比べて少ないです。
昨年度は大雨によって養殖池や稚魚を養殖している水田の水かさが増し、魚が逃げてしまうなどの被害が多く、住民が今年の雨の状況を見極めているのではないかというのが、現地で活動を実施するNGOによる分析です。一方で、稚魚が購入できることを住民が知らないのではないかという懸念もあります。このため、プロジェクトはNGOと協力して、販売促進にかかる活動を進めます。具体的には、コミューン事務所や稚魚生産池の周辺にポスターを貼ることや、稚魚生産者の名刺を作成したり、CSA(Central de Service Argicole)の仲介で購入希望者を探すなどの活動を予定しています。
昨年度は養殖農家がグループ(アソシエーション)をつくり、2グループがBOA(Bank of Africa)から養殖のための資金を借り入れました。この返済期限が2015年10月31日であったところ、2グループとも無事に返済を終了しました。引き続き養殖のための資金を借り入れるため、本年度も必要書類を同銀行に提出しました。

11月に始まる本格的な雨期を前に、植林活動やラバカ対策活動の啓発のため、エリアマネージャーにより精力的な住民活動のフォローアップが続けられています。エリアマネージャーによる1か月間の訪問世帯数は100〜150前後で、コミューン全世帯の7〜8%を1か月で訪問していることになります。住民の声や住民によるグッドプラクティスの一部を次に紹介します。

−改良かまどについて、薪を削減できるなどの有効性は十分に理解しているが、改良かまどを作製するには至っていない住民が、訪問した588世帯中24世帯いることが判明しました。エリアマネージャーは、既に改良かまどを作っている近隣の住民を紹介したり、改良かまどの作製を実践している住民が実践していない住民を巻き込み、グループで改良かまどを作製するような取り組みを進めています。また、訪問した588世帯中の136世帯では、既に自主的にグループをつくり、改良かまどの作製や修復を一緒に行っています。
−改良かまどについて、ローカルトレーナーの助けを必要とせず、自主的に改良かまどを作製し、近隣住民へ同技術を伝えている農家もあります。訪問した588世帯中17世帯がこの自主的な活動を実践していました。
−植林活動について、訪問した670世帯のうち33世帯が、ユーカリ種子の自家採種を実践していました。
−今年は野火による被害が多く報告されています。雨期の始まりと共に新たな野火の発生は少しずつ収まりつつありますが、住民の多くが昨年までに植林した木を消失するなどの被害を受けました。野火対策活動とともに、ローカルトレーナーを通じての野火防止の啓発活動を続けていきます。また野火によって植林した木を焼失し、植林に対する意欲が低下した住民も多いため、エリアマネージャーとローカルトレーナーによる住民活動のフォローアップでは、植林研修を開催するなどして、植林への意欲を再び引き上げる活動を進めています。

(注1)2015年度稚魚生産研修が開始された8月には、6サイトでの研修を予定していた。しかし、先月の月報で報告したとおり取水の問題から、5サイトで活動を行うこととなった。

2)新対象2コミューンでの活動(対象期間:2015年10月1日〜31日)

10月の雨期の始まりと共に、植林研修が本格的に開催され、住民向けに実施された85回の研修に1,451人(男性:924人、女性:527人)の住民が参加しました(表1参照)。

表1 新対象2コミューンの研修実績表
研修名 研修回数
(2015年10月)
研修回数
(2015年6月〜10月末)
累積研修参加者数
男性 女性 合計
ライチ取り木研修(住民向け) 1 84 696 387 1,083
ライチ取り木研修(ToT) - 3 12 3 15
改良かまど・シャルボンブザカ研修(注2)(住民向け) 47 214 1,659 1,641 3,300
改良かまど・シャルボンブザカ研修(ToT) 7 13 32 10 42
植林研修(住民向け) 85 85 924 527 1,451
植林研修(ToT) 16 28 97 76 173
合計 156 427 3,420 2,644 6,064

(注2)草本を材料として作製する丸形の炭

3)ラバカ対策の研修講師となるリソースパーソンの認証(対象期間:2015年11月1日から11月30日)

2015年11月11日に開催されたアロチャ・マングル県のPMUにおいて、ラバカの存在するフクタンにおけるラバカ対策のリソースパーソンの認証状況をまとめるよう提案がありました。11月30日現在の認証状況を、以下に示します。
ラバカの存在するフクタンで認証されたリソースパーソンが1名以上存在するというPDMの目標値を達成することは、難しい状況にあります。それは、これまでのラバカ対策研修のほとんどが、特定の2名のリソースパーソンによって実施されてきたことが原因の一つと考えられます。プロジェクトは、今後も情報をさらに精査し、検証していきます。特に、「プロジェクトのアプローチで対応可能なラバカはあるが、研修が実施されていないフクタンがあるかどうか」、「ある場合にはその原因は何か」、「ラバカはあるが、住民で対処できるラバカの大きさを超えていないかどうか」などの点です。各コミューンの現状は以下のとおりです。

ムララノクロムコミューン:
ラバカの存在するフクタンは、24フクタン中10フクタンです。延べ17回の研修が実施されましたが、そのうち9回はアンボデラフクタンで実施されています。これは、アンボデラには認証されたリソースパーソンがいるためです。一方、他の9フクタンのうち2フクタンには候補者がおり、彼らはNGOによる講師育成研修を受講し、既に要請の上がっているラバカで研修を実施することが予定されています。しかし、残りの7フクタンは候補者が見つかっていません。また、ラバカは存在するものの研修は実施されていないフクタンが4つあります。

アンドレバケリスッドコミューン:
ラバカの存在するフクタンは、6フクタン中3フクタンです。延べ12回の研修が実施されましたが、そのうち9回はアンドラノバインガフクタンで実施されています。これはムララノクロムコミューンと同様に、同フクタンに認証されたリソースパーソンがいるためです。一方、他の2フクタンでは研修は実施されているものの、アンドラノバインガフクタンのリソースパーソンが研修を実施したため、これまでのところ同2フクタンのリソースパーソンは育成されてきませんでした。現時点では、リソースパーソンの候補者がNGOによって既に選出されています。

アンパシケリーコミューン:
ラバカの存在するフクタンは、2フクタン中1フクタンです。延べ7回の研修が実施されましたが、全ての研修がアンドラノバインガフクタン(アンドレバケリスッドコミューン)のリソースパーソンによって実施されたため、同フクタン内でリソースパーソンが育成されてきませんでした。現時点では、リソースパーソンの候補者がNGOによって既に選出されています。

4)プレスツアーの開催と来訪者の受け入れ(実施日:2015年11月2日、11月16日〜18日)

11月16日〜18日の3日間、主要な3つのメディア会社(TVM(注3)、Express、Midi Madagasikara)を招待してプレスツアーを開催しました。またこの機会に、マダガスカル日本大使館の山田書記官、小川書記官、JICAマダガスカル事務所で本案件担当の加藤企画調査員にプロジェクトサイトを訪問していただきました。
11月26日21時30分からTVMで、15分間のドキュメンタリー番組が放送されました。また、同局で12月10日21時30分から再放送されました。同ドキュメンタリーの映像データを入手後、You Tubeなどにアップし、一般向けに公開しています。

(注3)Télévision Malagasy:マダガスカル国営放送

5)新コミューン長の表敬訪問(対象期間:2015年11月1日から11月30日)

7月にコミューン長の選挙が実施され、9月に新コミューン長が選出されました。プロジェクトの対象コミューンでは、全てのコミューン長が交代となりました。また、ムララノクロムコミューンから6フクタンが分かれ、新たにアンボディラノコミューンが設置されました。
プロジェクトの対象6コミューンのうち、4コミューン(ムララノクロムコミューン、アンボディラノコミューン、アンディラナトビコミューン、ラノマインティコミューン)への表敬訪問は11月中に終え、残る2コミューンへは12月に表敬することを予定しています。

(2)ブングラバ県での活動(対象期間:10月下旬〜11月下旬)

1)研修の実施

植林研修
前月のプロジェクトニュースで記したように、ブングラバ県では、採種・播種研修、移植研修、山だし研修の3ステップに分けて研修を実施する計画です。これまでのところ住民向けの採種・播種研修はおおむね完了し、移植研修のローカルトレーナー向けToTののち、現在住民向けの同研修が進められつつあります。
表2は研修が始まった2015年6月から11月のPMU会議が開催された11月25日までに実施された研修回数と参加者数を示します。それによれば、これまでに5回のローカルトレーナー向け(ToT)と67回の住民向け採種・播種研修が実施され、前者で25人、後者で2,717人が参加しました。また4回のローカルトレーナー向け(ToT)と37回の住民向け移植研修が実施され、前者で18人、後者で1,141人が参加しました。

【画像】

表2 ブングラバ県の研修実績表

改良かまど・シャルボンブザカ研修
改良かまど研修はこれまでに9回のToTが実施され、19人のローカルトレーナーが育成されました。これらのローカルトレーナーが住民向けに102回の研修を実施し、2,705人が参加しました。改良かまどの主たる使用者が女性であることを反映し、女性の参加者が男性よりも12%ほど多い結果になっています。チンジョアリンボイマンガコミューンでCDRが実施したモニタリングによると、改良かまどの実践率は43〜70%と報告されています。これに対し、住民の希望があれば改良かまど研修の機会を用いて研修が行われているシャルボンブザカの実践率は、かなり低いです。その結果を受け、PMUの場で実践率が低いシャルボンブザカ研修の存続に疑問が呈されたものの、住民の希望があればやるべきとの意見もあり、暫定的に現状維持となっています。

野火研修
これまでに4回の野火研修が実施され、46人が参加しました。加えて、植林研修を実施する機会などを活用して、野火対策の情報提供を行っています。全体としてみると以下の3つの情報提供があります。

  1. ローカルトレーナーへのToTの機会を活用
    ローカルトレーナーへの植林研修のToTの機会を活用し、野火防止のための対策を追加的に説明します。これは、彼らを野火対策研修の講師に養成することを目的とするものではなく、住民が植えた苗木を野火から守る方策を考える一助とするためのものです。
  2. KASTIメンバーへの広報活動
    KASTI(Local Committee for Forest and Environment)メンバーへの広報活動としての研修を実施します。将来的には、彼らが住民向け野火対策研修の講師に育つことを期待しています。
  3. 住民向け植林研修の機会を活用
    2研修ユニットで実施された住民向けの植林研修の機会を活用して、自分たちが植林した苗木が野火にあわないようにする防止策について、情報を提供しました。

ラバカ対策研修(ToT)
アロチャ・マングル県から研修講師を招聘して実施する全4回のラバカ研修(ToT)のうち、第3回ラバカ研修が11月24日25日に実施されました(表2では第2回研修のみがカウントされている模様)。概要は以下のとおりです。

研修準備(11月24日)
DRDAのジノ氏、CDRのリチャード氏、研修講師のジルベル氏が、アンバトランピコミューンのコミューンホールから歩いて5分ほどの国道沿いに位置する研修対象のラバカを訪問。ラバカのすぐ下部にキャッサバ畑が広がり、さらにその下方に水田地帯が広がっています。水田で働いていた土地のオーナーとともに、明日のラバカ研修の段取りを話し合い、ラバカの状況や発生経緯などについて聞き取ります。内容は以下の通りです。

  1. ステークホルダー:ラバカの土地と下流部の耕作地の土地の所有者は重なっており、これら全ステークホルダーは4世帯、約30人。これら4世帯は互いに家族・親族関係にはありません。
  2. ラバカ発生の経緯:2003年に国道の建設工事があり、そのときに斜面に亀裂が入り、それが歳月の経過とともに大きくなって、ラバカに発展しました。ラバカに降雨が流れ込むのを防ぐために、道路の側溝はラバカをすぎて、谷の方向へ排水するように設計されているものの、降雨時に側溝はすぐにオーバーフローして、雨水がラバカに流入する状況です。
  3. 野火の発生:ラバカ横の谷間に生えている高さ3〜5メートルほどのユーカリの疎林は、根元あたりに野火で焼けたあとがあります。土地のオーナー曰く、国道を走る車からのタバコの投げ捨てによって発生した野火ではないかとのことです。
  4. ラバカ研修の準備:明日5時からステークホルダーで集まり、バシン(柵)製作用の杭を用意します。周辺の灌木の枝を伐って用います。

ラバカ研修の実施(11月25日)

  1. 参加者:DRDA職員、DREEF職員、CDR、ステークホルダー住民など、合計25人。
  2. バシン(土砂止め柵)の作製:
    付近の灌木の枝を伐って集めた杭を使って4列の柵を製作しました。ラバカ側から順に、
    第一列:幅2.1メートル 高さ70センチメートル
    第二列:第一列目の3.5メートル下方に幅3.5メートル,高さ70センチメートル
    第三列:第二列目の7メートル下方に幅5メートル,高さセンチメートル
    第四列:第三列目の12メートル下方に幅5メートル,高さセンチメートル
    杭用の材には地元でrotraと呼ばれる楕円形の厚手の葉を持つ灌木を使用しました。柵用の横木には小葉の灌木の細めの枝を使用しました。
  3. 植樹方法のデモンストレーション:
    ラバカの拡大を防ぐために、ラバカの外周部に苗木を植樹する方法について指導しました。斜面に穴を掘って、その下部に掘った土を積み上げて、その上に苗木を植樹しました。
  4. 質疑応答:
    研修講師の総括説明の後、住民と講師の質疑応答。講師から、バシンの材料が薪炭用として盗まれることがあるため、頻繁にラバカを訪れ、バシンの状況を観察するとともに、雨期の間のラバカの進行状況について留意するよう発言がありました。住民から、バシンの設置でラバカが崩れるのを防げるのかと質問あり、講師からバシンはラバカからの土砂の流出速度を緩和するためのものと返答しました。
  5. 今後の予定:
    これからの約3カ月間、住民による観察を続け、2016年2月に第4回ラバカ研修としてモニタリングを実施します。そこで現行のラバカ研修がこの地で機能するかを確認し、問題があれば改善点を検討し、当地にあったラバカ研修の方法について提言を行います。

PAPRiz研修
ブングラバではPRODAIREの普及システムを活用したPAPRizの技術パッケージの普及を進めていきます。PRODAIREが対象とするチンジョアリボイマンガとアンバトランピの2コミューンで、3スキーム(斜面で囲まれた谷地に広がる一続きの水田地帯)を対象に、当面のところ、次の手順で普及を進めていくことを計画しています。

  1. PAPRIZの概要と家計研修DVDを使った広報活動の一環としての研修
    全住民を対象として、能力ややる気のある農家をリソースパーソン(RP)とするためのスクリーニングを行います。
  2. 1)の研修で選んだRPを対象とする苗床づくり研修のToT(レクチャー+実習)を実施します
  3. RPを研修講師として、周辺住民を対象とする苗床づくり研修を実施します
  4. 3)の研修の2週間後にRPを対象とする移植(田植え)研修のToTを実施します
  5. RPを研修講師として、周辺住民を対象とする移植(田植え)研修を実施します
    (以下省略)

これまでのところ、1つのスキーム(チンジョアリボイマンガコミューンのフォノラティフクタン)で上記1)の研修を実施したに留まっている(表2には記載されていない)。

2.2015年12月の専門家の離着任予定

12月3日 小川専門家離任
12月11日 白石専門家着任
12月12日 北窓専門家離任

3.活動写真集

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村をも襲う野火(アロチャ・マングル県ムララノクロムコミューン)

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山だし(植林地への定植)の際に、持ち運びがしやすいように、オイルの廃タンクを利用して作成した個人苗畑(アロチャ・マングル県アンパシケリーコミューン)

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講師育成のための播種研修を受けるローカルトレーナー(アロチャ・マングル県アンディラナトビコミューン)

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ポット移植を終えた個人苗畑のユーカリ苗(アロチャ・マングル県アンディラナトビコミューン)

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アロチャ・マングル県から講師を招いた第3回ラバカ研修(ブングラバ県アンバトランピコミューン)

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2015年11月26日に開催されたPMU会議。トマ局長を議長に活発な議論が交わされた(ブングラバ県)