2016年9月の活動

2016年9月30日

1.活動写真集

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植林用ポットの引き渡し式典にて(ブングラバ県チンジョアリボイマンガコミューン)

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植林地を視察される小笠原日本大使の一行(ブングラバ県チンジョアリボイマンガコミューン)

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村から町へ、薪を売るためにやって来る人びと(ソフィア県アンバトリハコミューン)

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自ら製作した改良かまどの便益を説明する村人(ソフィア県ベアンドラレゾナコミューン)

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水力発電所近くの山並みの景観。CIの活動対象地(アンティナナナ県アンデカレカコミューン付近)

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CI主催のワークショップ。集まったVOIメンバーの人びと(アンティナナナ県アンデカレカコミューン付近)

2.今月の主な活動

(1)アロチャ・マングル県での活動(対象期間:2016年8月1日〜8月31日)

1)研修の実施と住民活動のフォローアップ

当初対象4コミューンでは2015年以降、出口戦略の一環として、住民による活動の持続性向上を目指し、エリア・マネージャーとローカル・トレーナーによる住民への直接モニタリングを中心とする活動を実施しています。2016年9月からの植林シーズンの開始に向け、住民が自家採種したり、近隣の農家へ採取した種を販売する事例が、エリア・マネージャーが訪問した60世帯ほどで確認されました。エリア・マネージャーによると、住民によるこのような自主的な活動の背景として、次のような理由が挙げられます。
1)住民が植林技術を十分に理解できている、2)住民が植林の時期を適切に判断できている、3)薪の価格が上昇しており、植林した木を将来薪として販売することが、収入源として評価されている、4)苗木の需要が高まっている、などです。またアンパシケリーコミューンにおいて、ラバカ対策研修が実施される予定です。
新規2コミューンでは、ライチ取り木のポットへの移植のためのローカル・トレーナー向け研修が、4回実施されました。また、住民向けの同研修が11回実施され、146人(男性89人、女性57人)が参加しました。改良かまどの住民向け研修は2回実施され、28人(男性19人、女性9人)が参加しました。新規2コミューンでは、本プロジェクトの終了に向けて、住民向けの研修をできる限り数多く実施することを目指しており、その一環としてローカル・トレーナーと住民への啓発活動が予定されています。

2)植林用ポットの配布

今年度は本プロジェクトの支援なしで、ニーズのある住民へ植林用ポットが配布できることを実証するため、県環境・生態・森林局(DREEF)とコミューンが協働してポットを配布する取り組みを試行しています。8月のPMUにおいて、DREEFと当該コミューン長が話し合い、その後、コミューン長が中心となってポットを希望する世帯のリストを作成し、DREEFに提出しました。
そのリストによれば、806世帯がポットの配布を希望しています。コミューンから提出されたリストに基づき、準備された75巻のポリチューブのコミューン別配布数を、DREEFが算出しました。1世帯あたりのポリチューブの配布は6.0メートルとし、約400ポット分(1ポット15センチメートル)とした。9月30日に各コミューンへ配布されたポリチューブの数は次のとおりです。

  • アンパシケリーコミューン:13巻
  • アンドレバケリスッドコミューン:15巻
  • ムララノクロムコミューン:11巻
  • アンボディラノコミューン:36巻

各コミューンによって配布数が大きく異なります。アンボディラノコミューンはコミューン長がリスト作成に積極的に取り組み、自らが1軒1軒を訪問し、住民のニーズを確認しました。アンパシケリーコミューンでは、ローカル・トレーナーが組織した組合とコミューン事務所が協力してリストを作成しました。

3)県水産局との協働による養殖農家の認可支援

県水産局との話し合いから、養殖農家の生産販売活動にはいくつかの認可が必要であることが判明しました。認可を受けていない養殖農家は県水産局による取締りの際に、全ての養殖魚が没収され、罰金が科せられます。
9月8日に開催されたPMUにおいて、本プロジェクトと水産局スタッフ、NGOの間で今後の対策が話し合われました。この結果を受けて、9月15日に水産局のスタッフを招いて、養殖農家を対象とする説明会を実施しました。この説明会に参加した養殖農家が水産局に提出した要請書を基に、それらの養殖農家が認可に必要な要件を満たしているかを確認するための水産局による現地視察が、10月3日〜7日に行われます。本プロジェクトでは、これら一連の手続きを支援する予定です。
なお、必要な認可は、次の3種類に大別されます。1)養殖場設置許可(自家消費用、販売用ともに必要とされる認可)、2)採集許可(養殖者が生産した魚を採集する許可。1)の認可を持った養殖者自身が養殖場から採集する場合と、採集はせず集荷のみの場合の2種類の認可がある)、3)販売許可。

(2)ブングラバ県での活動

1)研修活動

9月に入り、住民向けの播種・採種研修と改良かまど研修が実施されています。

2)ポット引き渡し式典の開催

住友商事よりCSRの一環としてプロジェクトに供与される植林用代替ポットの引き渡し式典を開催しました。
9月5日にブングラバ県チンジョアリボイマンガ市で開催されたポット引き渡し式典は、日本側から小笠原日本大使をはじめ、西本JICAマダガスカル事務所長、谷本住友商事アンタナナリボ事務所長などが出席されました。マダガスカル側からは、環境・生態・森林省の次官と森林総局長が海外滞在中で不在のため、同省大臣の代理として、保全地域システム局局長が出席されたほか、ブングラバ県知事、チロアノマンディディ郡長らが出席されました。
同式典は予定どおり執り行われ、住友商事様から寄付いただいた150万個の植林用ポットがPRODAIREを介して、ブングラバ県とアロチャ・マングル県の森林局へ引き渡されました。これらは、今期の両県での植林活動のため、対象地域の住民に配布されます。式典ののち、小笠原大使をはじめとする関係者一同は、同県チンジョアリボイマンガ市周辺の集落を訪れ、植林や改良かまどなどに関するPRODAIREの活動地を視察されたのち、JOCV隊員が活動するサカイ市を訪れました。

(3)他ドナー、他プロジェクトとの連携

1)アンバトビー鉱山会社との連携

アンバトビー鉱山会社との連携に関して、現在2つの問題が報告されています。1)再委託先としてのNGO登録に必要な書類の準備に時間を要しており、その登録手続きが完了していない、2)アンバトビーからNGO(Ezaka Vaovao)への資金提供が、NGO登録の完了後1か月ほどかかる。
8月22日のキックオフ会議にて、この2つの問題点についても議論され、同NGOはアンバトビーからの資金提供を待たずに、自己資金で活動を開始すること、その後アンバトビーから返金してもらうこと、で合意しました。
同NGOは、対象コミューン在住の候補者のなかからエリア・マネージャーを選出し、それらのエリア・マネージャーへの研修を終えています。また、コミューン長とフクタン長への表敬訪問を実施しました。植林時期の開始が迫っていることから、村での啓発活動やローカル・トレーナーの選出作業を駆け足で実施する必要に迫られています。
アンバトビー鉱山会社と同NGOは、同社がNGOによる活動を管理し、活動の質を維持するための指針を共同で作成することを検討中で、この指針について話し合うための会議を10月5日にアンバトンドラザカ市で開催します。

2)ソフィア県のMRPA連携サイトへの合同視察

2016年9月11日から16日までの6日間、UNDP/GEFのプロジェクトMRPAのスタッフとともに、ソフィア県の連携地へ合同視察を行いました。

TPFの普及体制

2016年4月に訪れたときは、ベアンドラレゾナコミューン:ミッシェル、ベアラナナコミューン:ルクマン、アンバラバトベノードコミューン:フローレンというように、3人のSO(アロチャ・マングル県のエリア・マネージャーに相当)がそれぞれのコミューンを一つずつ担当することになっていました。ところが今回訪れると、2人のSOが対象地域のすべてを担当することに変更されていました。全対象地域には6000世帯以上が住んでおり、2人のSOのみでカバーするのは、かなり難しい様子。そのため、SOとローカルトレーナー(LT)をつなぐ存在として、彼らはリソースパーソン(RP)を活用しています。今後、やみくもにRPが増えることを防ぐために、RPを活用する基準とRPの役割を明確にする必要があります。

ベアンドラレゾナコミューン

比較的アクセスのいいコミューンで指導のため、プロジェクトが派遣するアロチャ・マングル県のNGOチームは、このコミューンを中心に指導を実施しているものと思われます。
ここでは、選出され、TOTを受けたLTたちが活発に活動しています。実質的な活動はいまのところ改良かまど普及だけですが、今回のミッションで訪れた村の改良かまどの普及率は、すでにかなり高いです。研修を受けてない人も、デモンストレーションを見ただけで、どんどん作っているという印象です。普及面では歓迎ですが、なかには、丸いなべ用に四角い改良かまどを作っている人もあり、薪削減の観点からは、改善が必要です。LTたちによるモニタリングの強化で、住民のモティベーションを下げずに、より効果をあげていく必要があります。

アンバラバトベノードコミューン

アクセスの悪い対象地域で、水田の稲刈りが終わらなければアクセスができません。
低地を山に向かって走ると、徐々に水田地帯(現在は乾燥)に入ります。山が近づくほどに集落が見え、これらの集落のすぐ後ろの山もベアンドラレゾナコミューンと同じく、木はほとんどありません。ディエゴヘリという村ではデモンストレーションのあと、すでに2人の住民がユーカリの苗畑を作ったそうです。30センチメートル x 30センチメートルほどの小さなもので、そのうちのひとつはすでに発芽し、二枚葉が出ていました。
このコミューンの問題点は、遠隔地でアクセスが悪いこと、SO1人が担当する地域が広すぎることに起因しますが、5月のデモンストレーションでLT候補を選定して以来、活動が進んでおらず、LT向けTOTが実施されていないことです。この地にアクセスできるのが雨季の始まる12月中旬までということを考慮すれば、至急RPを活用するなどで、活動を加速化する必要があります。

3)CIとの連携候補地への訪問

2016年9月19日から22日までの4日間、国際NGOであるConservation International(CI)との連携候補地を訪れました。

対象地域

JIRAMA(マダガスカル国水電力公社)のためMADARailが運行するディーゼル機関車に乗ってムラマンガ駅を出発し、最終地のサドゥムナ駅に着きました。近くにJIRAMAの水力発電所があり、ここへのアクセスは列車のみです。

生業形態

活動対象となる2コミューン(アツィナナナ県に含まれるアンデカレカコミューンとロハリアンダバコミューン)は水力発電所の上流側と下流側に分かれています。ここに暮らす人びとの主要な生業は、焼き畑農耕(注)による陸稲、豆類、メイズの栽培、炭作りや畜産です。かつて1970年代には輸出用にコーヒー、バナナ、クローブなどの栽培指導が行われましたが、いまは自家消費用に栽培する程度となっています。

(注)CIスタッフからの情報です。ただし、当地の住民の多くが実際に焼き畑耕作を行っているのか、それとも斜面地に単に火入れして耕作をしているのかについては、精査が必要です。当地で活動を実施する場合、そのどちらなのかによって、活動の内容は大きく異なると考えられるからです。

ワークショップ参加

JIRAMAの施設のひとつである会議室でCI主催のワークショップが開かれ、ゲスト参加しました。

CIの活動計画

本件は、CIがHelmsley Charity Trustから資金を得て開始しているlivelihoodプロジェクトで、この地の2コミューンに含まれる8ローカルコミュニティの住民組織(VOI)メンバーを対象に活動を実施しています。保護林のパトロール、森林回復を目的とする在来種の植林、生計向上活動の3つを活動内容とします。VOIのメンバーが在来種を植林し、保護林をパトロールする対価として、生計向上活動を導入し、そのための資金を援助します。CIはこれまで他の5コミューンで同様の活動を実施し、今回は追加の2コミューンで2年間活動を実施しています。

連携の課題

VOIのメンバーに限ってインプットする現行の活動計画と、対象地域のすべての住民を対象とするLIFEアプローチでは、活動の理念が異なります。LIFEモデルでは住民全員を対象とするので、住民への資金援助はほとんど不可能で、ワークショップですでにVOIメンバーに活動内容(とくに資金援助すること)を紹介したいま、方針転換はむずかしいと考えます。
かりに住民の主たる生計手段が焼き畑であれば、その生業形態から、住民に植林や改良かまどのニーズがあるとはあまり思えません。このような地でLIFEモデルを活用して住民による植林活動を喚起するには、アグロフォレストリーのような、焼き畑に代わる生産様式の導入と抱き合わせで、活動を展開する必要があると考えています。

(4)ユーザー向け技術マニュアルの承認

2016年9月までに、関係諸機関の担当委員からなる技術マニュアル委員会が2回開催され、マダガスカルの人びとにとって読みやすく、理解しやすい技術マニュアルへの改善作業を進めています。同委員会での議論に基づいて改訂されたユーザー向け技術マニュアル第2版(草稿)が委員会委員および省庁関係者に配布され、現在関係者からの意見を収集している段階です。
これらの意見を取りまとめてユーザー向け技術マニュアルの最終版を完成させ、2016年11月にマニュアル承認ワークショップを開催して、環境・生態・森林省(MEEF)と農業・畜産省(MPAE)の承認を得る予定となっています。それに先立ち、10月初旬に環境・生態・森林省内部で、同委員やその他の同省職員を対象に、LIFEモデルの説明を兼ねた技術マニュアルの内容に関する説明会が開催されます。同省関係者に広くLIFEモデルを知ってもらい、技術マニュアルの省内での認知度を高め、11月に承認を得るための取り組みです。