プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)全人教育推進プロジェクト
(英)The Project for Promoting Holistic Education(MAKMur)

対象国名

マレーシア

署名日(実施合意)

2020年12月24日

協力期間

2021年6月17日から2025年6月16日

プロジェクトサイト

プトラジャヤ連邦直轄区、クアラルンプール連邦特別区セントゥル地区、パハン州ベントン市

相手国実施機関名

(和)教育省
(英)Ministry of Education

背景

マレーシアは、国際学力調査であるTIMSS(Trends in International Mathematics and Science Study)で2011年から2015年にかけ平均点を8年生数学で25ポイント、8年生理科で45ポイントと大幅に伸ばし、2003年以降続いていた下降トレンドに歯止めをかけることに成功した。一方で同国教育省の教育セクター計画文書であるMalaysia Education Blue Print(MEB)2013-2025では、社会経済的背景による学習到達度の格差が今後の課題として挙げられている。また、多民族国家であるマレーシアでは、近年各民族の母語を教育言語とするNational-type school(注1)の人気が高まっていることに伴い、子どもが異なる民族・文化的背景を持った人と関わる機会が少なくなっていることが課題として指摘されており、背景の異なる人との相互理解を深める機会を教育機関が確保することが必要であると述べられている。
上記の課題認識を背景にMEBでは、ただ知識を得るだけでなく、それらを組み合わせて新たな知識を作り出す力、異なる背景を持つ他者と協働する力、問題解決能力や争いを平和的に解決する能力が重要であると指摘している。このような背景のもと、マレーシア教育省は非認知能力注2)の向上に関連する学校活動を推進しているが、未だ実効性のある活動に至っていない。
1980年代のルック・イースト政策以降、マレーシアは日本を近代化のモデルとして積極的に学ぼうとし、日本人の勤労倫理、職場及び学校での協調性の高さに注目してきた。日本の学校教育の特徴の一つは、知識習得に偏重せず、人間性を調和的・全面的に発達させることを目的とする「全人教育」の理念の下、教科外教育や学級運営も含めた枠組みの中で、非認知能力の醸成を実現していることである。近年のマレーシアにおいても、教育は子どもの全人的な成長(holistic development)のための手段とされ、全人教育の必要性はマレーシア政府も認識しているところである。そこで、教育省は当機構に対し、子どもの全人的な発達の促進に向けた実践を行うための技術支援を要請するとともに、省内プロジェクトチームを立ち上げ、本事業をMAKMur(注3)と命名した。

(注1)マレーシアの公立初等学校にはマレー語で教育を行うNational schoolと、中国語・インド系タミル語で教育を行うNational-type schoolが存在する。なお本事業の対象校はNational Schoolである。
(注2)点数や数値で測ることができる認知能力に対し、非認知能力は意欲・態度やコミュニケーション能力といった数値化できない能力を指す。社会情動的スキルとも言われる。
(注3)“Strengthening Students’Internalization of Values”を意味するマレー語 “Memperkasakan Amalan Kemenjardian Murid” の略

目標

上位目標

マレーシア全国の小学校・幼稚園で、子どもの非認知能力の強化に向けた実践が普及する。

プロジェクト目標

子どもの全人的な発達を促進するための実践が特定され、全国普及のための準備が整う。

成果

1.非認知能力向上に効果的なMAKMurキャパシティビルディングツールキット(Capacity Building Tool Kit)が開発される
2.MAKMur実施ツールキット(Implementation Tool Kit)10が開発され、パイロット地域で普及する
3.MAKMur実践の全国への普及準備が整う

活動

1-1.教育省のプログラムも含め、マレーシアの教育・学校システムに関する情報を収集する。
1-2.ベースライン調査を実施する。
1-3.学校やDEO(District Education Office)、SED(State Education Department)、教育省向けのMAKMurキャパシティビルディングツールキットのドラフトを作成する。
1-4.TOT(指導者研修)を実施する。
1-5.ツールキットに関する研修を教員に対して実施する。
1-6.教育省が選定した学校でツールキットを使いながらMAKMur実践をパイロットする。
1-7.ツールキットの評価と最終化を行う。

2-1.教育省向けにMAKMur実施ツールキットのドラフトを作成する。
2-2.TOTを実施する。
2-3.DEOとSEDの職員も含めた教育省職員への研修を実施する。
2-4.パイロット地域のほかの学校に対してツールキットを使ってMAKMurの実践を普及させる。
2-5.ツールキットの評価と最終化を行う。

3-1.活動1、2の結果を検証し、MAKMurに関して必要な制度上の調整があれば特定する。
3-2.教育省の中で、MAKMur担当部署の設置を行う。
3-3.パイロット地域以外へのMAKMurの普及計画を策定する。
3-4.普及計画に基づき、予算確保の手続きを行う。
3-5.アドボカシーイベント(メディア広報、カンファレンスなど)を実施する。

投入

日本側投入

・専門家:総括(学校運営・学校改善)、就学前教育、全人教育
・ローカルコスト:TOT/教員中央研修費(2021~2022年)、広報活動、等
・本邦研修
・パイロット校における小規模な設備改善や備品配布

相手国側投入

・MAKMur Technical Committee(プロジェクト担当者)の設置
・案件実施に必要な教育省内の施設・設備等の提供
・その他諸経費:パイロット地域でのワークショップ・研修費用、マレーシア側関係者の研修や活動に係る移動費、各ツールキットの印刷・配送費
・通訳