「自動車産業基盤強化プロジェクト」が実施される背景 (メキシコの自動車部品産業が抱える課題) と その目指すもの

2013年7月16日

チーフ・アドバイザー 池畑博実

1. メキシコの自動車部品産業が抱える課題

「迫り来る危機(グローバルな競争に曝される)を直視しないため、長期的視点でグローバルな競争力をつけることを考えない…」
これが多くのメキシコ地場サプライヤの現状です。この状況から脱却して「10年後、20年後でもグローバルな競争に打ち勝てる自動車部品サプライヤを育成しなければならない」という課題がこのプロジェクトの背景にある、と理解する必要があります。
メキシコにおいては、安い労務費の陰に隠れて真の問題点が見えなくなっているのではないかと感じています。例えば「製造工程の中で沢山の不良品ができても、顧客に納入する前に人手をかけて選別し顧客に迷惑をかけなければそれでいい」という状況がそれです。長期的視点がないと真の問題点は見えません。そのため「品質は工程で造り込む」ことの大切さを理解し、改善活動によって不良品を作らないようにしよう、というモチベーションがわきにくいのです。
又、「一過性の改善活動はするが、改善を継続させるための人材がいない」がために改善後の現場の状況が後戻りしてしまうことも大きな問題です。改善活動を自立して継続できる人の育成が何にも増して必要なことと考えています。

2. このプロジェクトが目指すもの

メキシコ地場サプライヤに対する改善技術指導がプロジェクト活動の根幹をなすことは紛れもない事実ですが、技術指導自体を目的化すべきではありません。究極の目標は「サプライチェーンの強化とそれを支えるしくみ」を構築することです。そして、近い将来このしくみの継続的成長をメキシコの人たちの手に委ねられるようにすることこそがこのプロジェクトが目指すものです。そのため、州政府に於いて中小企業の継続的改善活動を支援するための体制/しくみづくりは最も重要な活動となります。その中で、継続的改善活動を支援できる人材(マネジメント人材と技術指導人材)を州政府の中に確保することが急がれていますが、「この人材育成は改善活動の現場でしかできない」ことを肝に銘じて活動する必要があると考えています。