メキシコ自動車産業セクター関係者向け「日本のものづくり」研修会

2014年8月31日

プロジェクトによるメキシコの自動車部品メーカー二次取引先企業(以下Tier-2)へのKAIZEN指導の第2フェーズが本年4月より始まっています。このプロジェクトによるKAIZEN活動がより大きな成果を挙げるためには、前提として知っておくべき知識がいくつかあります。また、これらの知識はプロジェクトのKAIZEN指導を直接受けるTier-2だけでなく、広くメキシコの自動車産業セクター関係者にも普及していきたい内容です。そのため、プロジェクトでは一連の研修メニューを策定し、4回に分けて研修会を実施することとし、研修対象者もプロジェクト関係者に限定せず、広く自動車産業セクター関係者としました。

研修テーマは大項目として2つのテーマがあり、テーマごとにいくつかの具体的なテーマを設定しました(以下参照)。

大テーマ(1)日本のものづくり
1.「Just In Time」を支える「モノの流れ化(1個流し)」
2.「自働化」は「不良品をつくらない」ための重要な概念
3.5SはKAIZENの基盤
4.問題解決の手法
5.SMED(Single Minute Exchange of Die:シングル段取り)を目指して
6.QC(Quality Control)七つ道具

大テーマ(2)日本の商習慣と企業文化
7.日系自動車企業のサプライヤになるために
8.メキシコのサプライヤに期待すること

今回、第1回・第2回の研修会が8月に開催され、第1回(8月11日週)では小テーマ2及び8、第2回(8月18日週)では小テーマ3及び5について講習を行いました。プロジェクト対象地域である3州(ケレタロ、グアナフアト、ヌエボ・レオン)でそれぞれ実施し、各回約50〜80名が参加しました。

今回の目玉は、テーマ8に日系自動車メーカー(OEM)であるメキシコ日野自動車の古川社長に講演いただいたことです。実際にメキシコに進出している日系OEMが日々直面している困難や、日系企業として今後メキシコTier-2に期待することを直接聞けたことで、メキシコTier-2側からも多くの質問がなされ、活発な研修会となりました。特にメキシコTier-2からは、「日系企業の『人を大事にする』という考え方が印象的であった。」など、従来人材育成という観点があまり無かったメキシコの企業文化ですが、このような研修を通じてメキシコTier-2の経営者の意識改革にもつながれば、と思います。

その他、プロジェクトのJICA専門家からの講義を実施しました。特にプロジェクトで実施するKAIZEN活動の基盤は5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)であるため、この点について講義をしました。5S活動では、5番目に書いてあるSである「躾」をいかにメキシコの人々に理解してもらい、定着させるかが最も工夫がいるところです。「躾」とは「決められたことをしっかり守る」ということである一方、メキシコではルールを決めてもそれを守らない、ということが頻繁に起きているためです。また、5番目のSというと、他の4つが実現した後に取り組む課題のように感じます。しかし、本来は最後のSである「躾」ができていることを前提条件として、その他の4Sを定着させることが5Sの考え方です。メキシコでは「5S」という言葉は多くの製造業企業に周知されており、独自に取り組んでいる企業も多いですが、上述のように「躾」を後回しにしている例も散見されます。講義後にJICA専門家から受講者へ「これまで5Sに取り組んだが定着しなかった企業さんでは、おそらく5Sの考え方の順番を十分に理解されていなかったのでは?」という問いかけに対して「そのとおりである」といった回答が多く見られたため、今後のKAIZEN活動に大きな効果が期待できます。

第3回目の研修会については10月下旬を予定しています。

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Guajajuato州でのメキシコ日野自動車・古川社長による講演

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Queretaro州でのJICA川口専門家による講演

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Nuevo Leon州の講演会において熱心に受講する参加者