プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ウランバートル市大気汚染対策能力強化プロジェクトフェーズ2
(英)Capacity Development Project for Air Pollution Control in Ulaanbaatar City Phase 2

対象国名

モンゴル国

署名日(実施合意)

2013年9月24日

プロジェクトサイト

ウランバートル市(面積:4,700平方キロメートル、人口:120万人)

協力期間

2013年12月15日から2017年6月30日

相手国機関

実施機関:ウランバートル市大気質庁(AQDCC)
協力機関:カウンターパート・ワーキンググループ(C/P-WG)
※本プロジェクトではウランバートル市の大気環境改善に寄与するために複数の協力機関と協調・連携して実施するため、C/P-WGを設置している。構成機関は以下の通り。
[国レベル]国家大気汚染低減委員会、自然環境・グリーン開発省、クリーンエアファンド(CAF)、エネルギー省、建設都市開発省、道路交通省、鉱物省、国家気象・環境モニタリング庁(NAMEM)
[市レベル]戦略政策計画課、エンジニアリングファシリティ課、内部監査局、公共熱供給公社、自然環境・グリーン開発局、道路局、交通局、警察庁
[事業者、大学等]石油庁、火力発電所No.2.3.4、モンゴル国立大学、モンゴル国立科学技術大学

背景

モンゴルは石炭資源に非常に恵まれた国であるため、燃料エネルギー確保の点で石炭への依存度が高い。ウランバートル市で使用されている石炭のほとんどは、水分と灰の含有量が多く、燃焼時に煤煙排出量が多い。大気汚染源は、3カ所の火力発電所、約200カ所の地区暖房ボイラ施設(HOB;Heat Only Boiler)と小型石炭焚き温水ヒーター(CFWH;Coal Fired Water Heater)、ゲル地区居住13万世帯以上の20万から30万に及ぶゲルストーブである。大気汚染は、石炭が暖房に使用される冬期に特に著しく、現在もっとも問題とされているのが、暖房施設や火力発電所から排出される粒子状物質(TSP、PM10、PM2.5)である。また、火力発電所の焼却灰や道路粉じんの飛散による大気汚染への影響も大きい。近年、ウランバートルの人口集中と経済発展に伴い飛躍的に自動車登録台数や交通量が増加し、自動車排ガスによる大気汚染の悪化も懸念されている。
国家気象・環境モニタリング庁(以下、「NAMEM」)によると、ウランバートル市の大気環境モニタリング局では、2011年の冬季にPM10の最高月平均濃度が1,000μg/立方メートル前後で推移し、全ての局でモンゴルの環境基準(24時間値100μg/立方メートル、年平均値50μg/立方メートル)を超える高濃度となるなど、市民への健康リスクが高まっている。さらに、SO2やNOxなどの大気汚染物質では、年間を通じて、環境基準を超過しているケースがみられる。
ウランバートル市は大気汚染対策を推進するために2006年に同市自然環境保護局に大気質課を設立し、その後、2009年2月に同部を大気質庁(以下、「AQDCC」)に格上げしたが、同庁職員は大気汚染の複雑な問題を取り扱うための知識と経験が不足していた。当時は各汚染源が大気環境に及ぼす影響が不明であり、大気汚染が問題となっている原因・実施すべき対策を検討するに当たり、科学的根拠に基づいたデータがほとんど存在しない状態であった。
この様な状況下で、JICAはウランバートル市の大気汚染対策能力を強化するため、技術協力プロジェクト「ウランバートル市大気汚染対策能力強化プロジェクト(2010年3月〜2013年3月)」(以下、「フェーズ1」)を実施した。このプロジェクトの中で、AQDCC及び関係機関に対し、発生源インベントリ作成、大気拡散シミュレーションモデル構築、排ガス測定、ボイラ登録管理制度導入、発電所及びHOB等の診断・対策案の検討等に関する技術協力を行い、大気汚染対策を科学的根拠に基づき検討する能力の向上に貢献してきた。しかし今後の効果的な大気汚染対策の推進のためには、モンゴル側が自立的に検討・実施できる技術的能力の強化に加え、具体的な対策・施策を進めるための仕組み・体制作りが不可欠である。また、フェーズ1では協力対象に含まれていなかった大気環境モニタリングについても、データ管理・精度向上に関して課題が残されている状況である。こうした背景から、モンゴル政府からの要請に基づき、同プロジェクトの後継案件となるフェーズ2を実施することとなった。

目標

上位目標

ウランバートル市において大気汚染物質の排出削減のための施策が強化される。

プロジェクト目標

ウランバートル市と他の関係機関 の人材育成と組織体制構築を重視しつつ、ウランバートル市の大気汚染対策能力が強化される。

成果及び活動

以下のサイクルに基づき成果1〜9を設定:

【画像】

ウランバートル市で望まれる大気環境管理サイクルを構成するステップとしては、1)大気環境・汚染源の分析、対策効果の評価(成果1〜3)、2)大気汚染対策・戦略・政策の検討/意思決定(成果4〜5)、3)大気汚染対策の評価・審査(成果6)、4)大気汚染対策の実施(成果7〜8)を想定する。それらのステップを有機的に結び付けるために、5)大気環境管理サイクル構築(成果9)として組織間連携・協調のための制度作りを支援する。特に、成果1〜3では技術面での能力強化、成果4〜9では大気汚染対策の検討・実施プロセスの改善を図ることに重点を置いている。具体的には以下の通り。

《1)大気環境・汚染源の分析、対策効果の評価(成果1〜3)》
成果1:排出源モニタリング能力が強化される。
【フェーズ1で能力強化を行ってきた固定発生源モニタリングについては、モンゴル側が自立的に測定できる能力を強化すると共に、監査に活用可能な手法をプロトコルとしてまとめる。移動発生源及びその他面的発生源については、現地に適したモニタリング手法を確立する。】
活動1-1:専門機関(AQDCC、NAMEM)が自立的に排ガス測定を行う。
活動1-2:ボイラ登録制度の排ガス測定義務に必要とされる排ガス測定能力の構築を図る。
活動1-3:火力発電所における排ガス測定能力強化を図る。
活動1-4:ボイラ監査のためのプロトコルを作成する。
活動1-5:自動車排ガス測定のための車載計を導入し、モンゴルにあった測定方法を測定マニュアルとしてまとめる。
活動1-6:自動車排ガス測定の理論と機材に関する研修を行う。
活動1-7:車載計を用いて、自動車の自立的な排ガス測定を開始する。
活動1-8:灰捨て場、道路粉じん等に関するモニタリング体制を構築する。
活動1-9:大気汚染対策効果を排ガス測定により把握する。

成果2:大気環境モニタリング能力が強化される。
【大気環境モニタリングについては、GIZにより供与されたAQDCCの機材と、フランス政府により供与されたNAMEMの機材が別々に管理されている状況を踏まえ、これらの情報の統合ネットワーク化を図る。また、PM10及びPM2.5の測定・成分分析に関する能力強化を行う。】
活動2-1:既存の大気モニタリング局における機材の稼働状況を調査する。
活動2-2:AQDCCの大気環境モニタリングのリハビリを行う。
活動2-3:NAMEMのQA/QC(精度管理/精度保証)の能力強化を行う。
活動2-4:AQDCCとNAMEMの統合大気環境モニタリング情報ネットワークを構築する。
活動2-5:機材の維持、保守体制を構築する。
活動2-6:将来的なモニタリング局配置計画を策定する。
活動2-7:モニタリングネットワークに関する必要なマニュアルを作成する。
活動2-8:AQDCCとNAMEMのPM10とPM2.5の大気環境濃度測定に関する能力構築を行う。
活動2-9:NAMEMのPM10とPM2.5の成分分析能力構築を行い、AQDCCへの研修も実施する。
活動2-10:PM10及びPM2.5測定・成分分析に関する必要なマニュアルやSOPを整備する。

成果3:大気環境及び発生源の評価分析能力が強化される。
【フェーズ1で構築支援を行ってきた発生源インベントリとシミュレーションモデルについては、モンゴル側が自立的に更新できる能力を強化する。ただ、PM10については、ダストの排ガス測定に基づくシミュレーションモデル構築あるいは大気環境モニタリング結果に不確実性があり、その原因解明のための活動を含める。成果1−3に係る活動で得られたデータを活用することで、大気汚染対策案の評価を行うことが可能となる。】
活動3-1:発生源インベントリの更新計画を策定する。
活動3-2:排ガス測定データ、ボイラ登録データ、自動車登録データ、統計データ等を用いて発生源インベントリを更新する。
活動3-3:大気環境データと発生源インベントリに関する基礎解析を実施する。その解析方法をガイドラインとしてまとめる。
活動3-4:更新された発生源インベントリ、大気環境データ等を用いて、SO2、CO、NOxシミュレーションモデルを構築し、発生源インベントリの精度及びシミュレーションモデルの再現性を確認する。
活動3-5:更新された発生源インベントリに基づき、SO2、NOx等の二次粒子を考慮したPM10シミュレーションモデルを再構築する。
活動3-6:ウランバートル市におけるPM10の発生メカニズムを調査する。
活動3-7:更新した発生源インベントリ、二次粒子等を考慮して、シミュレーションによりPM10発生源を特定する。
活動3-8:PM10及び環境基準を達成していないその他汚染物質について、モンゴルとJICA専門家との協議を通じて、大気汚染対策案を策定する。
活動3-9:これらの対策案を、発生源インベントリ、シミュレーションモデル、大気環境データを用いて評価する。

《2)大気汚染対策・戦略・政策の検討/意思決定(成果4〜5)》

(注)PM10及びPM2.5は、発生源から直接排出される一次粒子と、大気中での光化学反応等によりガス成分(SO2, NOx, VOC等)から生成される二次粒子に大別される。フェーズ1で実施したPM10のシミュレーションは、排ガス測定によるダストの排出量のみに基づいて行っており、二次粒子の影響を考慮していない。SO2やNOxから生成される二次粒子の存在は、PM10及びPM2.5削減に際してのSO2,NOx対策の重要性を示唆することとなり、これまでのウランバートル市における大気汚染対策の考え方の大幅な見直しが必要となる可能性がある。

成果4:AQDCC及び関係機関による技術的な検討が活用されることによって、大気汚染対策に係る意思決定プロセスが改善する。
【専門機関(AQDCC、NAMEM等)の技術的な知見が意思決定者の判断に使われ、科学的な根拠に基づき、有効な大気汚染対策・戦略・政策を検討・実施できる仕組みを検討する。】
活動4-1:意思決定プロセスに専門機関(AQDCC、NAMEM等)の技術的な知見が使われる。
活動4-2:AQDCCとNAMEMは、定期的な大気環境管理報告を作成し、意思決定者への報告体制を強化する。
活動4-3:C/P及びC/P-WGのメンバーが本邦研修及び現地セミナーにより、大気環境行政における制度比較等を行う。
活動4-4:AQDCCとNAMEMは、意思決定者に対し、大気汚染対策に関する技術的アドバイスを行う。

成果5:AQDCC及び関係機関が一般市民や関連専門家に対して、大気汚染に関連する公表・啓発及び警報活動を行える能力が強化される。
【大気環境モニタリング結果の公開、セミナーやシンポジウムの実施等を通じて、一般市民や関連専門家に対して分かりやすく効果的な情報発信・広報を行える能力の強化を図る。】
活動5-1:大気環境モニタリングネットワークの運用により、大気環境情報の公表・警報の発令を行う。
活動5-2:AQDCCとC/P-WGが、市民向け啓発活動を実施する。
活動5-3:AQDCCの大気汚染に関する市民への対応能力を強化する(苦情処理など)。
活動5-4:AQDCCとC/P-WGが大気汚染状況及びプロジェクトの内容を紹介する専門家向け啓発セミナー及びシンポジウムを実施する。
活動5-5:ニュースレターの作成、新聞記事への投稿、及びマスメディアを通じて、プロジェクトの内容を発信する。

《3)大気汚染対策の評価・審査(成果6)》
成果6:大気汚染対策実施案に係る評価・審査能力が強化される。
【様々な大気汚染対策案が国内外から提案されており、CAF及び関連機関がそれらを正しく評価・審査するための能力強化を図る。審査のプロセスに専門機関の技術的知見が活用されるような仕組みが望ましい。】
活動6-1:CAF及び関連機関における大気汚染対策案件の審査状況を確認する。
活動6-2:大気環境関連案件の技術審査ガイドラインを作成し、活用する。
活動6-3:審査のプロセスにAQDCC、NAMEM及び有識者の技術的知見を活用する。

《4)大気汚染対策の実施 (成果7〜8)》
成果7:AQDCC、関係機関による排出源の規制及び管理能力が強化される。
【AQDCCや監査官庁、市の熱供給公社等の、行政による排出源の規制及び管理能力の強化を図る。フェーズ1の支援により運用開始したボイラ登録制度の完全実施、MNS遵守を前提とした規制・管理体制を構築するためのMNS改訂提案等が含まれる。】
活動7-1:全ての対象ボイラを登録し、排ガス測定の義務化を開始する。
活動7-2:策定した測定プロトコルに基づきボイラ監査を行い、HOBのMNS排出基準の遵守状況を確認する。
活動7-3:要件を満たしたボイラに利用許可(もしくは優良ボイラ認定)を出す。
活動7-4:MNSの規制値・測定方法等の妥当性について検討し、必要であれば改善を提案する。
活動7-5:移動発生源及びその他発生源に対する規制等の対処方法を検討する。

成果8:AQDCC及び関係機関によって、主要な大気汚染物質発生源の事業者側による対策が喚起される。
【事業者による大気汚染対策を喚起するため、AQDCC及び関係機関が事業者に対して技術的なアドバイスを行う。また、事業者による対策を喚起するための仕組みを、AQDCCを初めとする関係機関と共に検討する。】
指標8-1:事業者(火力発電所、HOB、工業、その他)の大気汚染対策案策定に向けて、AQDCC及び関係機関による技術的アドバイスが少なくとも10件以上実施される。
指標8-2:自動車及びその他発生源に関する大気汚染対策案が少なくとも5件提案される。
活動8-1:JICA専門家が事業者(火力発電所、HOB、工業、その他)の大気汚染対策案策定を支援する。
活動8-2:第4、第3、第2火力発電所(燃焼施設及び焼却灰捨て場)の汚染源モニタリングを強化し、大気汚染対策案を検討する。
活動8-3:自動車及びその他大気汚染排出事業者による大気汚染対策を支援する。

《5)大気環境管理サイクル組織体制構築(成果9)》
成果9:成果1〜8に係る組織体制が構築される。
【専門機関であるAQDCCとNAMEMの役割分担を明確化し、また、専門機関と国家大気汚染低減委員会、CAF、監査官庁、火力発電所等との協調体制を構築し、大気環境管理サイクル全体に係る組織体制の構築を図る。】
活動9-1:発生源インベントリ、シミュレーションに関する専門機関(AQDCC、NAMEM)の役割について協定を締結する。
活動9-2:AQDCCとNAMEMが統合大気環境モニタリングネットワークに関する協調体制を構築する。
活動9-3:専門機関と国家大気汚染低減委員会の協調体制を構築する。
活動9-4:専門機関とCAFの協調体制を構築する。
活動9-5:専門機関と排出源監査に係る関連機関の協調体制を構築する。
活動9-6:ウランバートル市と火力発電所の協調体制を構築する。