微生物学、迫田義博専門家による技術移転

2018年5月16日

5月に入り、モンゴルにも春が訪れました。気温がマイナス30度を下回る日が続くこともある厳しい冬が明けると、短期専門家の派遣が再開します。5月6日、2018年度の来訪1人目となる迫田義博専門家が微生物学の技術移転活動のためモンゴルへ派遣されました

モンゴルの家畜は、国が陸続きであることも影響し多種多様な感染症に感染しています。したがって、これら感染症の診断、治療、そして予防のために微生物学の教員・研究者を育成することが急務となっています。本プロジェクトは、犬猫が感染するウィルス性疾患から鼻疽、豚コレラ(注)といった人獣共通感染症や広域(transboundary)感染症まで幅広く対象としています。

迫田専門家はこれまで、モンゴル生命科学大学獣医学部の微生物学分野における実習の充実化に特に力を入れてこられましたが、今回は大学院生たちに対し細胞培養技術が定着しているかどうか、確認と復習を通してフォローアップを実施されました。待ちに待った短期専門家による技術指導ということで、学生達もいつも以上に真剣かつ熱心に勉強していました。

また、迫田専門家は今回の滞在中に、同学部教員・研究者以外にも国立獣医衛生中央ラボラトリー、ウランバートル獣医局及び獣医学研究所(IVM)の豚コレラ教育研究グループ研究者達に対しても指導を行いました。JICAより供与した豚3頭を使用して豚コレラウイルスに対する抗体価の測定結果を確認したところ、モンゴルの豚コレラワクチンは日本産ワクチンと異なり、1回の接種で十分な抗体が上がらず、2回目の接種でようやく十分な免疫が得られることが判明しました。これにより、当地での1回接種による不十分なワクチン接種方法が豚コレラが発生した原因である可能性が高いと考えられる、と結論付けられます。

このモンゴルにおける豚コレラ撲滅にも繋がりえる大変重要な研究結果を含めた同グループの成果発表は2018年10月に実施予定です。続報を楽しみにお待ちください。

(注)豚コレラとは、豚コレラウイルスによって引き起こされるブタに対して強い伝播性と高い致死率を特徴とする疾病です。有効な治療法はなく、感染した場合には先進国では殺処分、多くの途上国ではワクチン接種となるため家畜に大きな影響を及ぼす疾病です。

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学生に細胞培養の手本を見せる迫田専門家(写真右)

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細胞培養に使用するクリーンベンチと器具

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培養した細胞を顕微鏡で確認する学生達

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顕微鏡写真:培養した細胞で増殖するモンゴルで分離された犬パルボウイルス(緑色蛍光部分)