牛の人工授精(前編)

2018年7月19日

6月24日~29日、繁殖学人工繁殖に関する技術移転をするため永野昌志専門家が派遣されました。永野専門家は、これまで生命科学大学獣医学部繁殖学研究室のErdenetogtokh先生をはじめ同研究室の教員に対し、良質な羊や牛の量産によるモンゴル食肉産業の発展を念頭に置いた家畜の人工授精に関する知識と技術を教授してこられました。昨秋から今春にかけては、モンゴル初の体外受精由来羊産子の作出に成功しています(2017年11月16日の記事をご覧下さい)。さらに前回の技術移転を受け、カウンターパート達は自ら体外受精卵を牛に移植し妊娠に成功したことも報告されました。

この度の派遣では、カウンターパートが習得した知識と技術を地方獣医師等に教授できるようErdenetogtokh先生も講師として参加する形で研修コースを郊外の農場にて開催しました。前回は羊を用いましたが、今回は牛10頭を用いて実習を行いました。JICAより供与した超音波診断装置を用いて牛の卵巣の状態を細かに確認し、それにより診断が下せるよう永野専門家が指導しました。さらに、より安定的かつ効率的に人工授精が行えるよう過剰排卵処理(注)に関する講義と技術指導も実施しました。農場から大学研究室に戻ると、採取した卵子について体外受精を行いました。

こうして実習の経験を重ねていくことで、カウンターパートの実践力が向上していきます。この後7月に、研修コースを引き継ぐ形で片桐成二専門家が派遣され、受精卵凍結に関する技術移転を行います。凍結受精卵移植が成功すれば、これはまたモンゴル初の成果となります。後編での報告を楽しみにお待ちください!

(注)過剰排卵処理とは、雌牛がたくさんの卵子を排卵するようホルモン注射をすること。

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永野専門家が作成した講義資料

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今回は講師として活躍しているErdenetogtokh先生(写真中央)。農場の職員と現地獣医師に牛の妊娠診断方法を教えています。

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牛の妊娠診断の手本を見せる永野専門家(写真左奥)

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大学の研究室に戻り、培養作業をする永野専門家(写真中央)と繁殖学チーム

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培養中の卵子

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永野専門家(写真中央左)と繁殖学チーム