オブス県にて大規模な技術移転講習会を開催!(馬の関節疾患診断講習会編)

2018年8月6日

2018年7月24日、首都ウランバートルから1,600km離れたオブス県ヒャルガスにて、現地の社会人獣医師を対象とした大動物内科診断、病理解剖、馬の関節疾患診断に関する技術移転を目的とした講習会を開催しました。講師を務めたのは、プロジェクトチーフアドバイザーである梅村専門家、奥村専門家、猪熊専門家です。モンゴル生命科学大学獣医学部の呼びかけで西部5県(オブス県、バヤンウルギー県、ホブド県、ザブハン県、及びゴビアルタイ県)から現地獣医師約50名と同大学獣医学部の教員・研究者約10名、そして遊牧民約10名が集まり、1日かけて上記3分野に関する実践的な臨床技術習得のために講習会に臨みました。このような大規模な講習会は、本プロジェクトでは初めての試みでしたが、カウンターパートとのコラボレーションにより、大成功に終えることが出来ました!それでは、一つ一つの講習会の様子を3回のレポートに分けてご紹介します。

1.馬の関節疾患診断講習会

(参加人数:約40名×17セッション)

まずは、奥村専門家から馬の関節疾患とその診断方法に関する解説を聞きました。座学で理解を深めた後に、実際に疾患のある馬を診療しました。どのような歩行障害があるとどの部位に疾患が認められるのか、またその場合にはどのような治療が適切であるのか、脚を痛めた馬を用いて丁寧に実習を行いました。当該地域では、馬の脚を刺して血抜きをする手法が一般的に用いられており、馬の病状を悪化させる原因となっていました。奥村専門家から馬の病状を悪化させない最新の診断・治療方法を学んだ獣医師と遊牧民達は『馬の脚を刺してはいけなかったのか!教えてもらえて本当によかった!』と驚きの様子。地方ではより伝統的な診断・治療方法が用いられていますので、技術移転を行う際には論理的に考察・判断し基礎的な知識・技術で診断することを意識したアプローチが必要です。大好評であった同講習会の噂はあっという間に広まり、午後には馬を連れた獣医師と遊牧民の行列が出来ていました。その結果、当初は3セッションの実施予定であった本講習会は好評のあまり夜まで続き、計17セッションの実施となりました。家畜の中でも特に馬を大切にするモンゴル人にとって、馬の疾患に関する講習や技術移転に対する需要が大変高いことを改めて認識しました。今回講習を受けた地方獣医師達が地元に戻り、習得した最新の診断・治療方法を普及させていくことが期待されます。

(注)参加者は複数の講習会に参加可能です。

【画像】講習会参加者との集合写真

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馬の腱の損傷について説明する奥村専門家(写真手前左)とツェルメグ現地スタッフ

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馬に円を描くように歩かせ、左右どちらの脚を痛めているか観察します。

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馬の関節疾患診断講習会の様子

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噂を聞きつけて会場に集まった獣医師・遊牧民達の馬