家畜の内科診断講習会を開催しました(オブス県)

2018年8月20日

内科診断講習会

(参加人数:約25名×3セッション)

地方獣医師にとって最も基本とも言えるのが内科診断。今回は、羊と山羊を用いて視診、触診、聴診、尿検査、血液検査の実習を通して臨床診断法の基礎を学びました。

まず、飼い主から個体に関する履歴を聴取します。個体がどのような環境でどのように飼育されていたかは、正確な診断を導き出すための重要情報となります。視診では、体格と栄養状態の把握、姿勢と歩行状態の観察を行います。触診により皮膚や毛の状態を確認し、続いて聴診により呼吸状態と心音を調べます。次に採血と採尿をおこない簡易検査にかけます。最後に、これら一通りの診察・検査を通して考えられる疾患とその可能性について議論しました。猪熊専門家の指導を受けながら地方獣医師達が導きだした診断結果は以下の通りです。この後、梅村専門家の病理解剖講習会において羊2)を解剖し実際に病原を確認します。(レポートの続編をご覧ください!)

所見

  視診、聴診、触診 血液・尿検査結果 診断結果
羊1) 体温、心拍数、呼吸数異常なし。呼吸性雑音なし。傾きと歩行障害が観察された。 TP(たんぱく)6.8g/dl
Ht(赤血球容積率)34%
脳障害の可能性あり。Ht値が高く脱水状態。
ヤギ1) 体温、心拍数、呼吸数異常なし。呼吸性雑音なし。 TP 6.6g/dl
Ht 25%
BUN(尿素窒素)10mg/dl
栄養失調気味。
羊2) 体温、心拍数、呼吸数異常なし。呼吸性雑音なし。毛の状態が悪い。 TP 7.3g/dl
H 24%
極度の衰弱状態のため寄生虫の可能性あり。慢性的な肺炎の場合は聴診では判断困難。便が乾燥しており脱水状態。背中に深い外傷あり。

今回は基礎的でありながら大変重要な内科診断に関わる一連の実習を行いましたが、地方獣医師達に症状と検査結果から導き出される疾患の可能性と、それに対する適切な治療を論理的に考えることを指導するのに苦労しました。地方ではまだまだ、“この治療をしたい”という獣医師の意向が先行した診断が一般的です。我々プロジェクトは、より体系的な診断手法と思考が普及するよう、粘り強く活動を続けていきます。

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山羊の体温を測る社会人獣医師とアドバイスをする猪熊専門家(写真右)

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切片の作り方を指導する猪熊専門家(写真左)

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採血した血液から切片を作る実習の様子。参加者は、猪熊専門家から切片の作り方を一人ひとり指導してもらい、大満足の様子です。

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会場の様子。湖畔の側にある小屋で開催されました。立見が出るほどの盛況ぶりでした。

【画像】内科診断講習会の参加者との集合写真