家畜の病理解剖講習会を開催しました(オブス県)

2018年8月20日

病理解剖講習会

(参加者人数:約35名×1セッション)

3頭の家畜を内科診断した後、うち1頭の衰弱し有効な治療手段のない羊を病理解剖しました(前回記事の「所見」欄内の羊2))。病理解剖は、家畜の病気や死因について検査することで診断します。さらには臓器や組織の一部から標本(組織切片)を製作し顕微鏡下で組織検査をすることで細胞レベルでの観察が可能となります。地方の獣医師にとっては内科診断が日常の中心業務ですが、感染症や内科診断では判断し切れない病状が観察された場合には、原因を究明するための病理解剖が重要となります。

今回解剖をした羊からは、1)皮下及び筋肉の外傷による新鮮な出血、2)慢性気管支肺炎、3)左右心室の拡張、及び4)腸炎が観察されました。寄生虫はありませんでしたが、貧血と脱水症状が顕著でした。特に、2)はこの羊が発育不良で痩せて衰弱していた主要な原因であり、1)と3)は高温化で長距離を運搬された結果と診断されました。これらの病変を講習参加者全員が視診と触診で確認しました。今回の実習は、獣医学を座学のみで学んだ社会人獣医師達にとって、正しい病理解剖の手順を目の前で見て学ぶこと、健康な臓器と病変のある臓器とを見て触って比較すること、内科診断と病理解剖診断を一連の流れで経験することなど、初めての体験と学びが多く詰まったものとなりました。

最後に梅村専門家より、地方獣医師達が組織検査を実施したい場合には、臓器をホルマリン漬けにしてモンゴル生命科学大学獣医学部宛に送るよう勧めました。同学部には本プロジェクトで供与した組織切片製作用機材と国別研修派遣によって養成した技師が配置されており、地方から送られてきた材料から組織切片を製作し検査することが可能です。

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病理解剖する梅村専門家(写真右)

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病理解剖講習会の様子

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所狭しと集まる講習参加者たち