帯広畜産大学・原虫病研究センター、横山直明教授の訪問

2017年5月1日

4月17日から21日の日程で、帯広畜産大学・原虫病研究センターの横山直明教授がポスドクのシバクマール博士(スリランカ人)と博士課程学生のダヴァ研究員(モンゴル人)とともに、当プロジェクト推進のため訪問しました。今回訪問の主な目的は、モンゴル全土から採取した牛の血清サンプルを検査し、横山教授の専門である牛ピロプラズマ病の感染歴の有無を調べることでした。

牛や馬のピロプラズマ病は、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザと同等の扱いとなる家畜法定伝染病です。本疾病はマダニによって媒介されるため、一度感染動物が導入されると、我が国であっても大掛かりなマダニ駆除対策を実施しなければならず、極めて厄介な伝染病です。ピロプラズマ病に罹ると、発熱や貧血に加えて神経症状を呈します。例え重症化しなかったとしても、極寒のモンゴルでは飼料が乏しくなる冬を乗り切ることができず家畜の大量死を招く原因となります。牧畜が主要産業の1つであり家畜の健康維持が政府の重要課題であるモンゴルでは、そのピロプラズマ病の診断、予防、及びマダニ対策の整備が急がれています。

今回訪問中の3日間で、約2,000検体以上の血清サンプルを短時間で大量に処理できる酵素抗体法(ELISA)を用いて検査が行われました。この結果は今年度発行される牛ピロプラズマ病に関するモンゴル分布マップの作成に反映される予定です。また、この結果をさらに詳しく調べることによってピロプラズマ病を媒介するマダニの種類を特定することも可能になります。マダニは種類によって活動が活発になる時期が違うことから、いつどこで殺虫剤を散布すれば良いかなど、より効果的な予防法を確立できることが期待されます。

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実験室でELISA法を用い検査する(手前から)シバクマール博士、ダヴァ研究員、IVMのナラ研究員(一番奥)と、それを見守る横山教授。

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アナライザーで、データを記録中のシバマクール博士とIVMのナラ研究員。

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ELISA法によって、病気の有無を検査。色が濃いのが陽性。