3回目の本邦研修を実施しました

2018年1月26日

障害のある子どもの早期発見・発達支援に関わる専門職8名、教育に携わる専門職8名の合計16名を招聘し、2018年1月15日~26日、本プロジェクト3回目の日本での研修を実施しました。
日本での研修は、モンゴルにおけるプロジェクト活動を補完する重要な活動です。参加者が、モンゴルの課題解決に向け日本の取り組みから示唆を得ることが主な目的ですが、2週間、同じものを見て、同じ話を聞くなかで、中央省庁、大学、医療/教育/福祉現場の関係者がモンゴルの課題やその解決方法について議論することも期待されます。
研修第1週目には、インクルーシブ教育の世界的潮流についての講義、地域で学び地域で生きることについて障害当事者からお話をうかがったほか、1ヵ月児健康診査及び発達外来の見学、障害のある子どもたちの学びの場等を訪問しました。研修第2週目には、長年にわたり、障害のある人もない人も、ともに地域で暮らすことができるまちづくりに取り組んでいる東松山市を訪問しました。また国際生活機能分類(ICF)を用いたアセスメント、発達支援計画の作成について学びました。

ここでは、研修最終日に行われた研修の成果発表の内容を紹介します。

第1グループ:障害のある子どもの早期発見・発達支援に関わる専門職8名

家族児童青少年発達庁専門家、障害児の保健・教育・社会保障支部員会メンバー、医療職で構成される本グループは、日本での視察や講義を通して、モンゴルにおける障害のある子どもの発達支援体制のあり方について協議し、以下のような示唆を得、今後の取り組みについて検討しました。

障害の早期発見の段階

得られた示唆

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参加者が提案した今後の取り組み

モンゴルでも既に用いられている母子健康手帳、2017年6月から試行されている乳幼児健康診査を活用し、発達の遅れや障害のある子どもを早期に発見するよう努めます。障害のある子どもの家族への支援は大変重要だと認識しました。二次医療機関には心理士、作業療法士、理学療法士、言語療法士を配置することを目指します。

発達支援計画策定の段階

得られた示唆

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参加者が提案した今後の取り組み

各区、県に設置されている「障害児の保健・教育・社会保障支部委員会」が福祉手当の給付や発達支援を受けるための決定を行います。従来の医療モデルから社会モデルに転換していかなければなりません。国際生活機能分類ICFを活用することで、保健、教育、福祉分野の専門職の連携が促進され、包括的な発達支援計画を策定することができることを学びました。帰国後、パイロット地域の支部委員会において試行したいと思います。

発達支援サービス提供の段階

得られた示唆

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参加者が提案した今後の取り組み

子ども預かりサービスなど既存のサービス、バヤンゴル区で試行中の親子教室を通じて発達支援を行います。本研修を通じて、訪問教育や院内教育にも関心を持ちました。現在、ホロー(区の下位行政区分)には、ソーシャルワーカー、医師、警察官等で構成される多職種連携チームがあります。そのチームが、障害のある子どもの発達支援についてモニタリングを行うことを新たに検討します。

第2グループ:教育に携わる専門職8名

教育・文化・科学・スポーツ省職員、パイロット通常学校教員、モンゴル国立教育大学教員で構成される本グループは、日本での学びを通し、帰国後、以下の活動に取り組みたいと考えています。

就学支援委員会の設置 モンゴルでは、各学校が入学を希望する子どもを就学させる仕組みが取られています。保護者が就学を望まず在宅のままになったり、学校側が障害のある子どもの入学を拒むケースもあるのが現状です。そのような状況の改善に向け、日本の就学支援委員会にアイディアを得て、各県の教育文化芸術局が中心となって障害のある子どもが就学できる仕組みを作ることを検討します。
言語療法士による巡回指導 参加者間の意見交換を通じ、モンゴルの通常学校には言語療法に対するニーズが高いことが分かりました。日本で視察した巡回指導にアイディアを得て、特別学校等の言語療法士が通常学校を巡回する仕組みを整えることを提案します。教育省が経費を負担し、モンゴル国立教育大学が言語療法士養成に協力することを目指します。
校内支援委員会の設置 通常学校において障害のある子どもたちが安心して楽しい学校生活を送れるよう、校内支援委員会を立ち上げたいと思います。プロジェクト活動で結成されているワーキング・チームメンバーを補強して校内支援委員会にしたいと思います。
ユニバーサル・デザイン及び合理的配慮の取り組み 日本での講義や学校現場視察を通じて、ユニバーサル・デザインや個々のニーズに応じた合理的配慮について学びました。各学校で実践したいと思います。
教員養成課程へのインプット 日本での講義を通じて、国際生活機能分類(ICF)や応用行動分析(ABA)についても学びました。これらを教員養成課程の講義内容に追加することを検討します。

研修参加者から挙げられた様々な提案は、講師、視察先の皆様からたくさんのヒントをいただき、異なる分野、立場の参加者同士が議論を重ねたからこそ生まれてきたものです。今後の連携、各所属先での取り組みが楽しみです。

今回の研修にご協力くださった皆様に心より御礼申し上げます。

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