患者中心の医療の提供に向けた取り組み

2022年4月26日

日本モンゴル病院(日モ病院)において「患者中心」の医療が提供されることは、プロジェクトが目指す成果であり、また、日モ病院の重要なコンセプトの一つでもあります。患者中心の医療を実現するためには、患者に関わる様々な職種や部署が連携・協働していくことが重要ですが、そのように連携して取り組むことはモンゴルにとって新しいカルチャーであり、一人ひとりの意識の醸成を図ることは決して容易ではありません。そのため、プロジェクトでは連携のための仕掛けやきっかけをつくることで、協働を促し、患者中心の医療サービスが提供されるよう支援しています。

そのような仕掛けの一つとして、プロジェクトでは日モ病院に対し「患者基本情報の統一化」を提案しました。これまで患者さんが入院する場合には、受付、患者支援センター、病棟など、それぞれの部署が用意する問診票や記録用紙に必要情報を記入する、またスタッフからの聞き取りに応じる必要がありました。中には重複する質問もあり、患者さんの負担となっているのが現状でした。これを改善するため、プロジェクトでは各部署でどのような患者情報を収集しているのか確認・整理し、重複を省いた共通のフォーマットを病院全体として運用していけるよう支援しました。

具体的には、患者支援センター職員、看護部、病棟の師長に働きかけ、合同で協議する場を設けました。当初、患者支援センターで聞き取りをしていた患者基本情報項目の多くが、病棟で看護師が記入する患者基本情報記録用紙(保健省指定様式)で網羅されていることが明らかとなったため、患者支援センター側の記録用紙を見直すこととしました。そして、患者基本情報としては、病棟で活用していた患者基本情報記録用紙を院内共通のフォーマットとし、入院前までに把握すべき事項は患者支援センターにて、入院中に確認すべき事項は病棟にて聞き取りを行うことで合意しました。

協議の場では、患者支援センター、病棟いずれも人材が不足していることから、聞き取りの項目が増えることは業務の負担になるといった懸念や、質の良い看護計画を立てるためには看護師がアセスメントすべき、といった意見が出されました。しかし、入院から退院までのサービスを患者さん本人の視点でみると、病棟の看護師と患者支援センター職員が情報共有しながら協働して関わることで、退院後の生活を見据えた入院中のケア、より良い退院支援をすることができます。協議を重ねた結果、患者さんを中心としたサービスを提供するために、患者支援センターと病棟が連携して取り組むことについて、双方の理解が得られました。

今後は、統一化された患者基本情報の共同運用に向けて、規程の作成や関係者への周知を図るなど体制を整えていきます。プロジェクトでは、このように様々な関係者と対話を重ね、各部署の役割や抱える課題など状況を確認しながら、部署同士が有機的に連携できるよう支援し、日モ病院における患者中心の医療の実現に向けて取り組んでいきます。

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患者支援センター、看護部、病棟師長の合同会議(2022年4月26日実施)

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看護・患者管理専門家による指導の様子