プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)遊牧民伝承に基づくモンゴル草原植物資源の有効活用による草地回復プロジェクト
(英)The Project for Restoration of Pastureland by Effective Usage of Wild Forage Plants based on Traditional Knowledge of Nomadic Mongolians

対象国名

モンゴル

署名日(実施合意)

2020年1月30日

協力期間

2020年7月6日から2025年7月5日

相手国機関名

(和)モンゴル国立大学工学(応用科学工学部)
モンゴル生命科学大学(家畜研究所、獣医学研究所、生態系研究センター)
(英)School of Engineering and Applied Sciences, National University of Mongolia
Institute of Veterinary Medicine, Mongolian University of Life Sciences
Research Institute of Animal Husbandry , Mongolian University of Life Sciences
Center for Ecosystem Studies, Mongolian University of Life Sciences

日本側協力機関名

東京大学・京都大学・東北医科薬科大学・農研機構

背景

モンゴル国の農牧業(農業・畜産)は、鉱業に次いでGDPの10.7%を占め、労働人口のおよそ3割が従事する同国の基幹産業である(モンゴル統計局、2017年)。国内に飼育される家畜頭数は約6,600万頭と、同国の人口約300万人の20倍以上となっている(同上)。伝統的に肉類が主食であり、モンゴルの人々の生計を支える上で家畜が重要な役割を果たしてきた。しかしながら、近年、モンゴル草原にも地球温暖化による天候不順の影響が及んでいるとともに、1992年以降の市場経済への移行と家畜私有化により、家畜の飼養頭数が、過去25年間で2,000万頭から6,000万頭台に急増したことで、「過放牧」と呼ばれる家畜過密状態が常態化しており、モンゴル草原の植物群落に大きな被害が発生している。とりわけ冬場の酷寒期に牧草が不足する事態が近年頻発しており、その結果、多くの家畜が餓死し、遊牧生活を放棄せざるを得ない状況に追い込まれる遊牧民が増えている。
モンゴルでは、近年、鉱工業生産が経済活動に占める割合が増加しているものの、農牧業生産は依然として国民生活を支える重要セクターであることに変わりはなく、モンゴル政府は各種政策において、一貫して農牧業及び農畜産品加工業の強化を掲げている。政府は、従来の一次産業としての生産に加えて、農畜産品の製造・加工、流通・販売、輸出の増大を重視する方向にある。政府は、長期政策として、「持続可能な開発ビジョン2030(SDV2030)」を策定し(2016年2月国会承認)、同国の持続可能な経済成長の実現に向け、農牧業セクターの発展を位置付けると同時に、先端技術の導入による農畜産品加工の促進や輸出振興を目標に掲げている。このようなモンゴル政府の開発政策を実現するためには、農牧業の健全な発展が前提となっており、同ビジョンでも、気候変動と生産性向上に適応した家畜品種の遺伝資源保護や集約牧畜業の育成による肉・生乳の生産増など4つの目標が設定されている。
本事業は、モンゴルの環境に最適な新規牧草品種開発による草地回復、薬草等在来資源の有効活用を促進することで、農牧業セクターの持続的な発展に寄与することを目的としており、モンゴル国の政策に合致するものである。

目標

上位目標

対象地域において草地回復技術と家畜健康保全技術に基づく普及活動が進められる。

プロジェクト目標

草原試験地近傍において迅速成長植物及び機能性植物による草地回復がなされる。

成果

1.草地回復に有用な植物が見出され、その遺伝的及び生理的機能の解明に基づいて新たな植物資源が選抜される。
2.モンゴル家畜の健康保全と維持に有用な機能性植物が見出され、その機能性成分が化学的に特定される。
3.遊牧民伝承に基づき、荒廃草原における迅速成長植物及び機能性植物の栽培技術が確立される。

活動

1-1.貧栄養条件で高バイオマス生産性を示す植物ホルモンストリゴラクトン変異体の性状解析を行う。
1-2.選抜された植物の栄養研究を実施する。
1-3.迅速成長植物の迅速成長機構ならびに環境ストレス耐性機構の解析を行う。
1-4.迅速成長植物由来の新規植物成長促進遺伝子の探索と同定を行う。
1-5.迅速成長植物由来の新規植物成長促進遺伝子の特許出願を行う。
1-6.選抜された植物の、新規植物成長促進遺伝子に起因する迅速成長性を検証する。

2-1.モンゴル草原の機能性植物の新規機能性化合物を探索し、化学構造を決定する。
2-2.モンゴルの家畜及び実験動物の健康保全活性に係るin vitro系(試験管内試験)及びin vivo系(家畜試験)薬理学解析を行う。

3-1.迅速成長植物と機能性植物に関する遊牧民伝承知識のデータベースを構築する。
3-2.選抜された草原植物の生育環境に関する実地調査を行い、生育可能条件についての理解を深める。
3-3.迅速成長植物と機能性植物を活用した栽培技術の開発を通し、荒廃草原における草地回復技術を確立する。
3-4.確立した技術の普及をすすめる。

投入

日本側投入

長期専門家、短期在外研究員、供与機材、研修員受け入れ

相手国側投入

カウンターパート人件費、試験・分析施設、試験圃場、プロジェクト事務所