プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)新しい学校教育制度に対応したカリキュラム普及プロジェクト
(英)Project for Expansion of New Curriculum in Mozambique
(葡)Projeto de Expansão do Novo Currículo em Moçambique

対象国名

モザンビーク

署名日(実施合意)

2020年11月30日

プロジェクトサイト

モザンビーク共和国 全公立小学校及び全初等教員養成校

協力期間

2021年3月2日から2027年3月1日(6年間)

相手国機関名

(和)教育人間開発省
(英)Ministry of Education and Human Developmen

背景

モザンビークでは、粗就学率が47%(1999年)から115.4%(2017年)に到達するなど着実に教育の量的拡大を遂げている一方で、全国学力調査(2016年)で規定の学力水準を満たす小学3年生が「読み書き」分野で4.9%、「計算」分野で7.7%であるなど、子どもの学びの改善が喫緊の課題となっている。このような状況下、教育戦略計画(2020年~2029年)では教育の質の改善が引き続き重要な政策目標に掲げられ、国定カリキュラムや初等教員養成校カリキュラムの改訂等に着手しようとしており、それらの実現に向けてモザンビーク側の関係組織と専門人材のキャパシティー強化が必要な状況にある。
JICAは2006年からこれまで、技術協力プロジェクト「ガザ州初等教育強化プロジェクト」等を通じて、モザンビークの教員の能力強化をソフト・ハード両面から支援してきた。2016年~2020年に実施された「初等教員養成校(IFP)における新カリキュラム普及プロジェクト」では、教員養成校用の算数・理科の教材開発を支援し、初等教員養成校の学生及び教官の指導力向上に大きく貢献した。
これらのプロジェクトを実施する過程で、モザンビーク教育人間開発省(以下、「教育省」)とJICAは、初等教育の算数及び理科の児童の学びを改善するために、国定カリキュラムとそれに基づく教科書等の改善、教育評価システムの強化など、教師教育を含めた更なる包括的な取り組みを行う必要性を合意し、今回の「新しい学校教育制度に対応したカリキュラム普及プロジェクト」が発足。教育省とJICAは、本プロジェクトを通じて算数及び理科のカリキュラム・教科書の改訂、教員養成、現職教員研修、教育評価システムの強化に取り組み、モザンビークの児童の算数・理科の学力向上を目指す。
本プロジェクトは、JICAが「教育協力ポジションペーパー」(2015)で掲げる「学びの改善のための総合的なアプローチ(注)」を1つのプロジェクトの中で取組む、JICAの教育協力プロジェクトの中でも非常にユニークなプロジェクトである。

(注)1)系統性・継続性のあるカリキュラムへの開発・改訂支援、2)カリキュラムとの整合性を確保した教科書及び子どもの基礎学力を身に付けるための学習教材、3)教員養成、現職教員研修を通じた教員の職能開発及び教師用指導書の開発・改訂の支援、4)カリキュラム・教科書・授業と一貫性のあるアセスメントの改善を支援し、総合的なソリューションを提供するアプローチ。

目標

上位目標

初等教育において児童の算数・理科の学力が向上する。

プロジェクト目標

一定条件下にある全ての小学校において、質量ともにカリキュラムで規定された内容の算数・理科の授業が実践される。

成果

1.教育人間開発省、国立教育開発研究所、遠隔教育研究所及び国立教育開発研究所の中核的専門人材と各IFPの算数科・理科の中核教員の能力が向上する。
2.12+33課程初等教員養成校(IFP)学生の算数・理科指導力が向上する。
3.教員の継続研修戦略に則し、ICT活用による自主研修(教員研修)と随伴指導を通じて、全ての小学校教員の算数・理科指導力が向上する。
4.新しい普通教育制度(新しい学校教育制度)に対応した、初等算数・理科の国定カリキュラムが整備される。
5.新国定カリキュラムに準拠した初等算数・理科(第1~6学年)の教科書と教師用指導書が整備される。
6.新国定カリキュラムに準拠した学力測定・評価システムが整備される(初等算数・理科のみ)。
7.プロジェクトの経験に基づいてカリキュラム・マネジメント・サイクル(カリキュラム改訂・教材改訂サイクル)が整備される。

活動

1-1.教育人間開発省と日本人専門家で作成する選考基準に基づいて、コアメンバーである中核的専門人材とサブメンバーであるIFP中核教員が選定され、算数科と理科のチームが形成される。
1-2.両チームがベースライン調査(全IFP38校の実態調査と初等教育の現状調査)を実施する。
1-3.両チームが成果2~6の全ての活動を実施する。
1-4.必要に応じて国別研修を実施する。
1-5.両チームがエンドライン調査(全IFP38校の評価調査とIFP卒業生の追跡調査)を実施する。
1-6.教育人間開発省と日本人専門家が作成する専門人材能力試験を実施する。

2-1.両チームが活動1-2の調査結果に基づき、先行案件で作成されたIFP学生向算数・理科教育関連教材の活用促進を目的として、IFP算数科・理科担当教員を対象とする追加研修(自主研修+集合研修)計画と随伴指導(モニタリング+個別指導)計画を策定する。
2-2.各チームが集合研修教材、自主研修アプリケーション(自主研修教材+ユーザーインターフェース)、随伴指導ツールを作成する。
2-3.各チームが活動2-1の計画に基づいて全IFP38校の算数科・理科担当教官およびIFP附属小学校教員に対して追加研修と随伴指導を実施する。
2-4.全IFP38校の算数科・理科担当教官と学生およびIFP附属小学校教員が自主研修アプリケーションで自習する。
2-5.各チームがIFP学生の模擬授業と年度末・学期末試験結果を分析する。
2-6.各チームが追加研修報告書、随伴指導報告書、IFP学生算数・理科指導力現状分析報告書を作成する。
2-7.活動2-6の結果の関係者へのフィードバックと追加支援を行う。

3-1.両チームが活動1-2の調査結果に基づいて全ての小学校教員を対象にICTを活用した自主研修計画と選択的随伴指導計画を策定する。
3-2.各チームが自主研修アプリケーション(自主研修教材+ユーザーインターフェース)を作成する。
3-3.活動3-1の自主研修計画に基づいて、全ての小学校教員が自主研修アプリケーションで自習する。
3-4.活動3-1の選択的随伴指導計画に基づいて、各チームが(一部または全部の)定点観測校の小学校教員に対して随伴指導を実施する。
3-5.各チームが自主研修報告書と随伴指導報告書を作成する。
3-6.活動3-5の結果の関係者へのフィードバックと追加支援を通じて現状の改善を図る。

4-1.両チームが初等算数・理科に関する新国定カリキュラム関連文書を収集・分析する。
4-2.初等算数・理科の新国定カリキュラムに問題が認められる場合には、両チームが新国定カリキュラム改訂提案書と同改訂案を作成する。
4-3.必要に応じて、両チームが新国定カリキュラム改訂案の承認手続を支援する。
4-4.各チームが初等算数・理科の新国定カリキュラム解説資料(自主研修教材)を作成する。
4-5.両チームがICTを活用した自主研修の一環として、新国定カリキュラムを小学校教員とIFP算数科・理科担当教官に周知する。
4-6.必要に応じて、両チームが活動4-5の自主研修の結果について関係者へのフィードバックを行う。

5-1.各チームが、初等算数・理科の新国定カリキュラムと現行の教科書・教師用指導書の比較分析を通じて、要改善点を取りまとめる。
5-2.両チームが初等算数・理科の教科書と教師用指導書の改訂計画を確認し、必要に応じて修正する。
5-3.活動5-1の結果に基づいて、両チームが教科書・指導書改訂方針(編集方針)を決定する。
5-4.各チームが教科書・指導書改訂案を作成する。
5-5.各チームが協力校(定点観測校の一部)で教科書・指導書のバリデーションを行う。
5-6.各チームがバリデーションの結果に基づいて教科書・指導書改訂版を完成させる。
5-7.両チームが教科書・指導書改訂版の承認手続を支援する。
5-8.教育人間開発省が教科書・指導書改訂版の印刷・配布を行う。
5-9.両チームがICTを活用して、小学校教員とIFP算数科・理科担当教官を対象に、教科書・指導書改訂版に関する導入研修を行う。
5-10.活動3-4の選択的随伴指導時に、各チームが定点観測校の小学校教員に対して随伴指導を実施する。
5-11.必要に応じて、両チームが導入研修と選択的随伴指導の結果について関係者へのフィードバックを行う。

6-1.両チームが初等算数・理科を中心に現行の学力測定・評価システム、同計画、同ツールを調査・分析する。
6-2.現行の学力測定・評価システム、同計画、同ツールに問題が認められる場合には、新国定カリキュラムに準拠するよう、両チームが改善提案書を作成する。
6-3.両チームが改善提案書に基づいて、学力測定・評価ガイドライン(同計画を含む)と初等算数・理科の学力測定・評価ツール改訂版を作成する。
6-4.各チームが学力測定・評価ガイドラインと初等算数・理科の学力測定・評価ツール改訂版のバリデーションを行う。
6-5.両チームが学力測定・評価ガイドラインと初等算数・理科の学力測定・評価ツール改訂版を完成させる。
6-6.両チームが学力測定・評価ガイドラインと初等算数・理科の学力測定・評価ツール改訂版の承認手続を支援する。
6-7.両チームが学力測定・評価ガイドラインと初等算数・理科の学力測定・評価ツール改訂版を関係者に周知する。

7-1.日本人専門家がプロジェクトメンバーを対象にプロジェクト経験体系化を目的としたワークショップを開催する。
7-2.日本人専門家と中核的専門人材が、ワークショップの結果を基にカリキュラム・マネジメント・サイクル基本構想案を策定する。
7-3.日本人専門家と中核的専門人材が、教育人間開発省の主要関係者の意見を反映させてカリキュラム・マネジメント・サイクル基本構想を完成させる。
7-4.日本人専門家と中核的専門人材が、基本構想に基づいてカリキュラム・マネジメント・サイクル・ガイドラインを作成する。
7-5.中核的専門人材が、カリキュラム・マネジメント・サイクル・ガイドラインの承認手続を支援する。
7-6.日本人専門家と中核的専門人材が、カリキュラム・マネジメント・サイクル・ガイドラインを関係者に周知する。

投入

日本側投入

  • 専門家(総括/制度構築、業務調整/教員研修、算数・数学教育、理科教育、ICT教育、教育評価)
  • 本邦研修:10名×2回
  • 機材供与:事務用機器、研修用機材
  • プロジェクト活動費(専門家活動経費、研修教材作成・印刷経費、各種報告書作成・印刷経費、ワークショップ・セミナー開催経費、通信費(専門家))

相手国側投入

  • カウンターパートとなる人材
    • 合同調整委員会(JCC)メンバー
    • 算数科・理科チームに従事するカウンターパート(教育人間開発省、国立教育開発研究所、遠隔教育研究所及び国立試験・認証・認定研究所職員、各IFPの算数と理科の教科主任もしくは代表教官)
  • 必要機材:備品付プロジェクトオフィス
  • 実施経費(研修経費、随伴指導経費、各種調査関連経費、教科書・教師用指導書改訂版印刷・配布経費、通信費(算数科・理科チーム分、研修参加者分、その他MINEDH関係者分)、光熱費等)