プロジェクト終了後の展開に向けた取り組み

2015年6月23日

(1)終了時評価の実施(2016年2月)

プロジェクト開始当初に計画されていた協力期間は、2016年8月までの5年間でした。プロジェクトの成果及び目標達成の状況を把握し、当初計画通りの協力終了適否などを判断することを主眼として、2016年2月に終了時評価が実施されました。終了時評価は、ミャンマー・日本側の団員による合同評価方式により実施され、団員は合計10名にのぼる評価団となりました。評価実施期間中、双方の団員はプロジェクトサイトを訪れ、種子フローの各段階に応じた種子の品質向上にかかるプロジェクト活動の成果を確認するとともに、プロジェクト終了までに対処する事項や、プロジェクト終了後に対処する事項を整理しました。
この結果、プロジェクトの成果は着実に発現し、プロジェクト目標として設定された指標は概ね達成されていることが確認されました。しかしながら、プロジェクト終了後を視野に入れて、プロジェクトが支援した種子フローの全工程における品質向上に向けた取組みの持続性を高めることを主な焦点として、プロジェクトは2017年3月まで7ヶ月間延長することが合意されました。
合同評価団からは、延長された期間を用いて、1)保証種子(CS)が種子として販売されるような活動の継続、2)エーヤワディ地区全体にCSの適切な増殖方法を広げるための土台作り、3)将来プロジェクト活動の成果が全国に波及していくために必要な要件の検討を行うこと等の提言が出され、プロジェクトはこれらの提言を踏まえて、プロジェクト終了に向けて、現在以下の活動に取り組んでいます。

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プロジェクトサイトで種子生産農家等にインタビューを行う調査団

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合同評価報告書の内容を承認する署名の様子と、合同評価団員

(2)アクションプラン作成

2014年2月の中間レビューの提言に基づき、プロジェクト終了後のCS増殖の道程を示すアクションプランの策定が提言されていました。アクションプランは、プロジェクト終了後にCSの適切な増殖方法・圃場審査など、現場の普及員が中心となって今後継続・普及していく技術指導事項について、プロジェクト実施期間中に対象としてきた3つのタウンシップから、どのようにエーヤワディ地域全体に展開していくかを取りまとめる全体計画書のことです。アクションプランの実施主体はミャンマー側で、ターゲット期間は、プロジェクト終了後の3年間(2017年から2019年まで)と定めています。
プロジェクトチームでは中間レビューでの提言を踏まえて、プロジェクト終了後にミャンマー側が迅速にアクションプラン作成に着手できるよう、現在のエーヤワディ地域内の状況や、プロジェクトの経験を共有し、課題に対処していくべき事項を整理するための広域研修を複数回実施してきました。終了時評価では、こうしたプロジェクトの取り組みが評価されるとともに、更に踏み込んで、アクションプランの策定自体をプロジェクト実施期間中に完了させることが提言されました。
この提言を踏まえ、エーヤワディ地域農業局は、地域内の6つのDistrictを中心とするアクションプラン策定委員会を組織し、管下のタウンシップ事務所が実施するCS増殖計画やその実施体制を確認しつつ、これを円滑に実施するための技術指導・研修実施などの活動計画について検討を始めています。プロジェクトはDistrictの種子担当者を集めて、各Districtが抱えているCS増殖の弱みや、これを克服するために必要な活動、CS市場動向やCS増殖を取り巻く環境など、計画策定に向けて必要になる議論のファシリテーションを行いつつ、計画取りまとめの上で必要な助言を行っています。こうしたDistrict単位の活動計画は、最終的にエーヤワディ地域全体の計画(アクションプラン)として取りまとめられ、必要な予算を計上した上で、エーヤワディ地方政府の裁可を求めることになります。

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アクションプラン作成に向けて、エーヤワディ地域全域の種子担当者と議論する様子

(3)マニュアル作成・広域研修の実施

Districtの種子担当者は、管下で横断的に行う技術支援活動を行いますが、もっとも頻繁にCS生産農家と接して普及活動を行うのは、タウンシップ事務所の普及員です。プロジェクトではこれまで3つのタウンシップの普及員のCS増殖に関する技術指導能力の強化を行ってきましたが、エーヤワディ地域は全部で26タウンシップにより構成されるため、残りの23タウンシップの普及員の能力強化をどのように技術を広めるかが課題となります。
これに対処する上で、プロジェクトではこれまでの研修で活用してきた研修教材をわかりやすくまとめた教材集や、赤米対策、圃場審査実施マニュアルを作成し、エーヤワディ域内の全タウンシップを始めとする関係者に配布してきました。今後はプロジェクト延長期間を通じて、合同研修や圃場実習により26タウンシップ内の種子担当普及員に技術移転を行っていきます。
エーヤワディ全域を対象とする合同研修・実習は、稲の生育段階に応じて合計5回予定しており、それぞれの段階で必要になる技術事項がクラスルームでの受講と圃場での実習を通じて習得できるように計画しています。こうした研修で講師を務めるのは、これまでプロジェクトの活動に関わってきたミャンマー側のカウンターパートが中心です。この合同研修・実習を通じて、タウンシップの種子担当普及員がタウンシップに戻った後は、CS生産農家に対して配布済のマニュアル類も活用しつつ、他の普及員とともにCS増殖にかかる普及活動を実践していくことを求めています。
プロジェクト終了までの間、こうした技術習得機会の提供やアクションプランの策定支援を行いつつ、プロジェクト実施期間中に取り組んできた事項が、プロジェクト終了後もミャンマー側の管理下で持続的に継続されるよう、関係者への働きかけや対話を重ねています。

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プロジェクトが作成したマニュアルの内容と使い方を説明するカウンターパート

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2016年雨期の農家研修計画について説明する種子担当職員

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エーヤワディ全域の種子担当者や種子農場担当者を集めて実施した圃場審査実習の様子

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実習用圃場で苗床づくりと播種の実習を行う研修参加者