(和)シャン州北部地域における麻薬撲滅に向けた農村開発プロジェクト
(英)Project for Eradication of Opium Poppy Cultivation and Rural Development in Northern part of Shan State
ミャンマー
2013年9月13日
・シャン州北部地域の3県(チャウメ、ムセ、ラオカイ)
・パイロット地区(Village Tract)は同3県内の7つの地区
2014年5月1日から2019年4月30日
(和)国境省、国境地域少数民族開発局
(英)Ministry of Border Affairs, Progress of Border Areas and National Races Department(PBANRD)
シャン州北部地域(旧北シャン州)は麻薬の原料となるケシ栽培で世界的に知られる「ゴールデントライアングル」の一角に位置し、様々な反政府少数民族グループによって長年にわたりケシ栽培が行われてきた。ミャンマー政府は1989年からこれらグループとの停戦・和平合意交渉を行い、同時に麻薬撲滅に対する同意を取り付け、1999年から「麻薬撲滅15ヵ年計画」(1999年〜2014年)を開始した。ミャンマー政府の努力に加え、我が国の代替作物導入に関する技術協力ならびに国際社会の支援もあり、ケシ栽培は撲滅にむけて進展を示してきた。しかし急激なケシ栽培撲滅を行ったラオカイ県(旧コーカン特別区)では、代替作物導入が追いつかず、収入源を喪失した農家の間で深刻な貧困状況が発生した。
同状況を踏まえ、我が国は2005年からラオカイ県に協力を集中させた「コーカン特別区麻薬対策・貧困削減プロジェクト(以下、コーカンプロジェクト)(2005年〜2011年)」を立ち上げ、緊急支援を行うとともに、ケシ撲滅後の貧困削減活動を実施。2011年3月のプロジェクト終了までに一定の成果を挙げ、ラオカイ県はケシ撲滅状態をほぼ維持している。
一方、国連薬物犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime, UNODC)報告(2011年)によれば、ラオカイ県以外のシャン州北部地域はケシ栽培が撲滅に近いレベルまで達したものの、近年は増加の兆しを示している。同地域の農家の多くは、所有農地規模は小さい一方で、農業資材(化学肥料)の投入率は同国平均に比べ高く、借金して資材投入を行っている。しかし適切な利用技術が普及していないこともあり生産性は低く、貧困から抜け出せない状態に陥っている(国連世界食糧計画(World Food Program, WFP)、2010年)。現状の貧困が継続すれば、人道上の問題のみならず、ケシ栽培の再開と増加につながり、さらに、地域経済格差の拡がりが少数民族と中央政府との対立を助長する危険を孕んでいる。こうした点から、先ずは当該地域における食糧生産と収入の安定が望まれている。
本案件は同地域の食糧生産と収入の安定を通じ、地域経済格差を縮小し、地域の安定を維持する意味からも重要と考えられる。
シャン州北部地域におけるケシ栽培面積が増加しない。
ケシ栽培回帰を防止するための収入源多様化と農業生産性向上を通じ農家の家計状況が改善する。
1.対象地域において、農家の生活環境と生計に関する課題と優先事業が特定され報告書に纏められる。
2.農家の意向・市場性・技術上の妥当性等を考慮した代替作物/品種が同定され農家に提示される。
3.農業改良普及員の普及方法が改善される。
4.対象地域における生計向上手段と収入源が特定される。
1-1 国境少数民族開発局(PBANRD)と農業局(DOA)が合同調査チームを形成する。
1-2 農家の生活環境と生計に関する社会経済調査を行う。
1-3 調査を基に優先事業を特定し、開発計画策定へ提言する。
1-4 報告書を関係者に共有するワークショップを開催する。
2-1 農家の意向と市場性を考慮した有望な代替作物・品種の選定を行う。
2-2 栽培と肥培管理技術の実証を行う。
2-3 有望な代替作物の研究開発拠点を対象試験農場と農家の圃場に設置する。
3-1 対象地域における農業普及の現状を調査する。
3-2 普及員に対し、農家のニーズに基づく普及方法に関する研修を実施する。
3-3 普及拠点を設置する。
3-4 農家に対し、普及サービスを行う。
3-5 普及員が実施した普及サービスを評価し、フィードバックする。
4-1 有益な農村開発活動(日本のODA事業含む)にかかる情報の収集/レビュー/分析を行う。
4-2 可能性のある収入源に関するバリューチェーン分析 と妥当性確認調査を実施する。
4-3 パイロット活動を計画する。
4-4 パイロット活動を実施し、評価する。
・長期専門家:チーフアドバイザー、営農技術、農業普及/研修、農村開発、業務調整/広報の5名、5年間で計300MM
・短期専門家:茶栽培、農村開発、その他、必要に応じ派遣する。
・カウンターパート研修:本邦研修、アセアン域内研修、他
・機材供与:活動用車両、普及活動用バイク、農場用トラクター・耕耘機、事務機器など
・プロジェクト活動経費
・カウンターパート(C/P)配置:プロジェクトディレクター1名、プロジェクトマネージャー1名、チーフカウンターパート4名(農業研究局(DAR)、DOA、PBANRD)、対象地域のDARとDOA農場職員、DOAの県事務所長3名/タウンシップ事務所長7名/パイロット地区担当職員7名、対象地域内PBANRD事務所所員6名
・施設及び事務スペースの提供
・プロジェクト事務所:PBANRDシャン州北部地域事務所(於ラショー)敷地内
・サテライトオフィス:チャウメ県、ムセ県、ラオカイ県にそれぞれ設置予定。
・プロジェクト活動経費