プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)保健システム強化プロジェクト
(英)Health System Strengthening Project
(通称)HSSプロジェクト

対象国名

ミャンマー

署名日(実施合意)

2014年7月3日

プロジェクトサイト

ネピドー、カヤー州

協力期間

2014年11月23日から2018年11月22日(4年間)

相手国機関名

ミャンマー保健スポーツ省

背景とプロジェクトの概要

1.背景

(1)基礎情報

ミャンマー連邦共和国(以下、「ミャンマー」)は、長期の軍事政権に対する国際的な経済制裁による経済低迷期を経て、民主化以降、経済成長を遂げています。しかしながら、ミャンマー国民の健康状況は、長期化した経済停滞も影響して保健医療サービスの整備が滞る中、5歳未満児死亡率(2015年、出生1,000に対し72。出典:World Bank, Data Bank)、妊産婦死亡率(2015年、出生10万に対して200。出典:World Bank, Data Bank)ともに高く、東南アジア諸国連合の中で最も悪い水準にあります。

保健医療サービス供給の問題の根底には、公的財源の不足があります。ミャンマー保健省は2011年以降の民主化の動きに合わせ、保健医療予算を毎年漸増させており、国家総支出に対する政府医療費支出の割合は、2011年以前の1%前後から、2014年には3.5%まで増加させてきているものの、東南アジア諸国連合内の他国と比較しても依然公的医療財源は極めて少ない状況にあり、それが高い医療費の患者負担(2012年、全医療費に対し71.3%)につながっています。また、医療従事者の不足(2011年、医師の充足率63.4%、看護師充足率62.7%)や不十分な医療施設・設備、非効率な保健医療サービスのマネージメント体制なども、住民の保健医療サービスへのアクセスを妨げる原因となっています。こうした状況で、限られた公的資源を最大限に活用し、保健医療サービスの質と住民のサービスへのアクセスを改善するために、中央と地方の保健行政マネージメント能力を向上させ、保健医療サービスの供給体制を強化することが急務となっています。

(2)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(以下UHC)の達成に向けたミャンマー政府の取り組みと本プロジェクトの関係

ミャンマー政府は、すべての人々が適切な保健医療サービスを受けられるUHCの達成を政策として打ち出しています(「UHCに向けた戦略的方向性」2014)。しかしながら、UHC実現には保健省により示されたビジョンだけでは足りず、それを遂行する現実的な計画策定とその実施が中央と地方行政(州/地域)の両方で不可欠となっています。本プロジェクトは、ミャンマー政府によるUHC達成に必要な保健省の計画策定及び遂行能力の強化と、州保健局の保健医療サービスマネジメント能力の向上を目的としています。

(3)ミャンマーの保健システムの概観

(ア)保健サービス

ミャンマーの医療サービスは保健省が大部分を占める公的医療、民間の医療機関(病院もしくはクリニック)、そして国内外のNGOや宗教団体によって提供される非営利のサービスに大別されます。公的医療機関では診断および基本的な医薬品は基本的には無料ですが、治療や検査にかかる経費は患者負担になります。民間の一般医では1回あたり邦貨にして200円〜400円程度の診察料を支払います。一部の民間病院ではより高度な専門医療を提供しており、診察内容に応じてより高額な診察料が必要になります。

医師数は約28,000人、その内公務員医師は11,700人弱ですが、かれらは民業医療兼務が認められており、実際ほとんどの公務員医師は平日の時間外ならび休日に民業医療を行っています。看護師数は、約28,200人名で医師との比率はほぼ1:1です。コミュニティーでの保健サービスの主体的役割を担っているのは助産師(教育期間は2年間)で、その総数は約20,600人です。その他の医療専門職には歯科医師、保健アシスタント、訪問保健師、公衆衛生師1および公衆衛生師2、がいます。保健省は、末端での保健サービスの強化に向けて公衆衛生師2(研修期間6か月)の養成を急務としています。

公的医療サービスは、中央の三次医療機関の他、各州・地方に中核となる総合病院(州および郡)、さらに各タウンシップには医師数名が常駐するタウンシップ病院、その下に、医師1名が駐在する1〜3ヶ所のステーション病院が設置されています。さらにタウンシップ内には、保健師、助産師が常駐する都市/農村保健センター、もしくは母子保健センター、さらにその下に、助産師と公衆衛生師が駐在するサブセンターが設置され末端での保健活動を行っています。

(イ)保健行政

ミャンマーにおける保健行政は、副大統領が議長を務める国家保健委員会の下で、保健省が主管しています。保健省は7つの局からなり、保健局が医療および公衆衛生全般にわたる保健サービスに関する行政を担当しています。

州・地方における保健医療行政は、州政府のもとに州保健局が設置され、保健本省から配置された州保健局長以下の医療行政官(医師もしくは看護師)が執務しています。州保健局の下には、州病院、軍病院の総合病院管理のラインと、タウンシップ病院以下の保健医療活動を所管する行政・公衆衛生ラインがあります。本プロジェクトでは、比較的連携が希薄であった州総合病院とタウンシップ病院以下の、医療活動にかかる連携体制を構築することを目指しており、その連携調整を州保健局が行うことになります。

2011年以降、ミャンマー政府は保健事業の地方への分権化を進めており、これまで中央で一括購入し、地方に配布していた医薬品についても、各州で州ごとの需要に応じた調達を直接行えるように変更されています。今後、医師を含めた保健人材のリクルートが各州に移管されることも議論されており、州保健局が担うべき役割は確実に拡大していくこととなります。

(4)日本の対ミャンマー保健セクター支援方針と本プロジェクトの関係

本プロジェクトは、日本政府の対ミャンマー経済協力方針(2012年4月)の「国民の生活向上のための支援」の中の、保健・保健医療サービスの整備への支援として位置づけられます。

日本政府は長年にわたってミャンマーの保健セクターを支援し、保健省の能力強化に貢献してきました。本プロジェクトのパイロット州であるカヤー州の総合病院に対しては、無償資金協力「カヤー州ロイコー総合病院整備計画」(2014年〜2016年)を実施しており、相乗効果が期待できます。

2.本プロジェクトの概要

上位目標

国家UHC戦略達成に向け、地域ニーズ、事情、利用可能な資源に応じて、国家及びすべての州/地域レベルの保健計画が体系的にマネージメントされる。

プロジェクト目標

国家UHC戦略達成へ向けて、中央レベルおよび対象州の保健計画を管理する能力が強化される。

成果1

保健スポーツ省において、保健計画管理に必要なデータの収集、集計・分析、利活用の組織的能力が強化される。

活動

1-1.国家保健計画管理の現状分析を行う。
1-2.病院データの管理、利活用の現状分析を行う。
1-3.研修講師の育成しつつ、現任MRTに対し効果的な再教育研修を実施する。
1-4.州・地域レベルの病院データ管理能力強化をめざして、新規雇用MRTに新任研修を実施する。
1-5.保健スポーツ省職員が全国の病院データを分析し、病院管理計画に活用する能力を強化するために、セミナーや本邦研修を実施する。
1-6.サンプル地域において、域内の病院情報の集計、分析を行い、報告書を作成する。
1-7.州・地域保健計画の策定・管理に関するレビューを実施し、提言を行う。
1-8.成果2および3を本省の担当局を通じて、他州/地域に紹介する。
1-9.保健システム強化に関する国内外の経験共有の場を提供する。

成果2

カヤー州において、プロジェクトの活動によって策定されたマニュアルに沿って、州保健計画がマネージメント(立案、実施、モニタリング・評価)されるようになる。

活動

2-1.カヤーにおける州保健計画の現状を確認する。
2-2.カヤーにおける州保健計画の既存のモニタリングおよび評価のツールを見直す。
2-3.州保健計画のマネージメント・マニュアル(案)を作成する。
2-4.マネージメント・マニュアル(案)に基づいて州保健計画をマネージメント(立案、実施、モニタリング・評価)する。
2-5.州保健計画マネージメント・マニュアルを最終化し、最終版マニュアルを他州/地域に紹介する。

成果3

カヤー州において、保健サービス提供の改善活動が州保健計画に統合される。

活動

3-1.州内の保健サービス提供および利用状況を把握するための州レベル保健行政局の能力を向上させる。
3-2.保健スタッフを対象とした州内のトレーニングのマネージメント(立案、実施、モニタリング・評価)能力を向上させる。
3-3.州内で提供する保健サービスについて、地域住民の理解を高めるために、Enter-Educationを導入する。
(注)Enter-Education:エンターテインメントの形式を用いた保健教育。
3-4.州の保健サービス提供改善に関する活動の管理能力を強化する。
3-5.保健サービス提供の改善に関する活動を、州保健計画に反映させる。