現地普及セミナー(4):救急科

2016年8月24日

ミャンマーでは2013年12月の東南アジア競技大会開催を契機に、救急医療体制が急ピッチで整備されましたが、それまでは国内最大のヤンゴン総合病院にも救急医が存在しませんでした。現在、ヤンゴン総合病院はコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴映像法(MRI)を備え、救急外来にも必要な機器が装備されてきています。救急医療の人材育成については、2014年にヤンゴン第一医科大学にミャンマー最初の救急医学教室が誕生、教授は脊髄外科のProf.Zaw Wai Soeが学長と兼務しています。

日本側ではプロジェクトの国内協力機関6大学のうち岡山大学が救急科研修を担当し、2015年度は氏家良人名誉教授のもとでヤンゴンとマンダレーより2名の救急医が研修を受けました。2016年4月には氏家教授の後任として中尾篤典教授が就任されましたので、両教授、湯本哲也助教、岡山大学病院高度救命救急センターの林久美子臨床工学技士の4名が、帰国研修員による普及セミナーを支援するために6月にミャンマーを訪問しました。

6月14日にヤンゴンで開催された普及セミナーでは、帰国研修員であるヤンゴン総合病院のDr.Aung Myo Naingが岡山大学病院救急科・救急集中治療部(EICU)での研修について多くの写真を用いて報告しました。また特別講義として、氏家名誉教授は救急患者の挿管困難時の気道確保について、中尾教授は大量出血コントロール、湯本助教は外傷初療の超音波診断、林氏は臨床工学技士の役割と重症救急患者に対する血液浄化について発表を行い、午後はこれら講義に基づき、参加者約110名を3グループに分けてハンズオン・セッションを実施しました。

6月16日にマンダレーで開催された普及セミナーには、マンダレー医科大学に救急医学科がまだ設置されていないため、外科・麻酔科・脳神経外科等の関連科目の修士課程に在籍中の医師とマンダレー管区のタウンシップ病院長、合計約120名が参加しました。マンダレー総合病院から岡山大学での救急科研修を受講したDr.Nyein Chanは、同病院ではかつてベッド1床しかなかった救急受付から救急外来へ、現在の救急部へ整備された進展を説明し、今後の更なる発展への期待を併せて報告しました。

これに対して氏家教授は、日本の救急システムと救急医の育成制度の経緯、岡山大学病院救急科の発展について紹介しました。中尾教授はAcute Care Surgeryの紹介と災害医療チームの説明を行い、参加者より多くの質問が寄せられました。また、林臨床工学士の講義を受けて、参加者の整形外科教授より臨床工学技士の存在・役割を初めて聞いたが非常に有益であると感じたとのコメントがありました。2016年度の研修員候補の1名はさぃねんと同じくマンダレー総合病院の救急医であるため、次回の普及セミナーはハンズオン・セッションを含めマンダレーで実施し、マンダレー総合病院救急部のさらなる発展を技術支援したい、との日本とミャンマー双方の熱い思いが語られました。

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ヤンゴン普及セミナーの様子

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ヤンゴン普及セミナーでのハンズオン・セッション

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マンダレー普及セミナー閉会時にコメントをする参加者の教授