デジタル技術の医学教育への活用

2018年3月8日

ミャンマーの医科大学では、ほとんどの学生がスマートフォンを持っており、2個3個と持っている教員もいます。そして、facebookに写真をアップして友人とコミュニケーションするのが大好きです。このツールとミャンマー人の習慣を病理医の教育に活用することを考えたのが、長崎大学福岡順也教授です。

以前のプロジェクトニュース「現地普及セミナー(5):病理診断技術」にてお伝えしましたとおり、福岡教授は2016年、長崎大学からの最初の帰国研修員と普及セミナーを開催した時から、ヤンゴンと長崎をインターネットで繋いでコンピュータ画面で病理画像を見ながら診断を行うデジタル・パソロジーを紹介してきました。インターネット接続により、ミャンマーではヤンゴン市内でも、マンダレーやマグウェイ、新設のタウンジー医科大学でも、若手病理医が物理的移動を伴わずに遠隔地にいるまま多くの症例を経験でき、病理診断の技術向上のための教育的効果が高まります。

その後、より多くの症例にいつでも接して学習することができるよう、ミャンマー側医科大学学長・教授達との協議を経て、2017年8月、クラウドを利用した病理データベース、CAMPAS(Cases for Young Myanmar Pathology Society)が開設されました。CAMPASは症例の病理データを蓄積してアクセス可能とするデータベースと、主にディスカッションやコミュニケーションを行うSNS(Facebook)にて構成されます。新たな病理画像がアップされ「この診断名は何でしょうか?」という問い掛けに、ミャンマーの様々な病理医が「私は〇〇だと思う」「△△ではないか」と意見交換しています。ある病理画像には870名を越えるビュウアーが記録されました。

長崎大学には、当プロジェクトから病理学の博士課程長期研修員1名が留学中で、毎年派遣される短期研修員2名と共にCAMPASのアドミニストレータとしても訓練を受けています。2018年度からは、短期研修員の帰国後にはミャンマーで見つけた興味深い病理データもアップされる予定です。ミャンマーと長崎を起点とした両国にて、ダイナミックな次世代型の病理医育成に貢献していけるよう応援したいと思います。

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