プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)ミャンマー「エーヤーワディ・デルタ住民参加型マングローブ総合管理計画」プロジェクト
(英)Integrated Mangrove Rehabilitation and Management Project through CommunityParticipation in the Ayewady Delta

対象国名

ミャンマー

署名日(実施合意)

2006年9月29日

プロジェクトサイト

エーヤーワディ管区、ラプタ、ボガレーおよびビャーポン郡

※ 「プロジェクト概要の詳細」の「プロジェクト対象地」をご参照ください。

協力期間

2007年4月1日から2013年3月31日まで
(2008年のサイクロン・ナルギス以降1年間延長された)

相手国機関名

林業省森林局

背景

ミャンマーは人口5,217万人(2002年、政府統計)、国民一人当たりのGDP180ドル(2003年、IMF)であり、アセアン諸国の中でも最も貧しい国のひとつです。ミャンマーの森林面積は、国土面積(6,765万ヘクタール)の約47パーセント(3,222万ヘクタール)を占めています。しかしながら、2000年から2005年の森林面積の年間減少率は、平均1.3パーセント(2005、FAO)と、アセアン諸国の中でも高い率で推移しており、木材の輸出による外貨獲得、薪炭材・建築用材の確保など、住民の生活にも様々な影響を与えています。

その中でも、特に、森林資源の荒廃が深刻な箇所がエーヤーワディ・デルタにおけるマングローブ林です。この地域では20世紀初頭に保全林区が設定された歴史がありますが、炭の生産、水田開発、エビ・魚の養殖、薪炭材の収穫、塩田開発など、様々な要因の結果、1920年代の森林面積に比べ、現在はその4割弱しか残存していません。このような背景の下、JICAは、2002年2月から3年間にわたり、開発調査「エーヤーワディ・デルタ住民参加型マングローブ総合管理計画調査」を実施し、地域住民とマングローブ林の共生を目標としたマスタープランを策定しました。

これを受け、ミャンマー政府は、2005年5月、同計画の実施に必要な森林局および住民組織の森林管理能力向上と、それに基づくマングローブ林の再生を図ることを目的とした技術協力プロジェクトをわが国政府に要請しました。同マスタープランは、基礎開発、普及、地域定着期間の3つの段階に分かれますが、本プロジェクトは、同計画の基礎開発期間に当たる事業を支援し、(1)住民による森林の持続的利用、(2)住民参加型森林管理の促進、(3)マングローブ林減少に関連する調整機能の構築などの課題に取り組み、デルタ地域に居住する住民の生計向上、マングローブ林の持続的管理の両立を目指します。

本プロジェクトは、2006年9月29日に署名された実施協議議事録(R/D)に基づいて実施されることとなり、2006年度後半に専門家チームの選定などの準備期間を経て、2007年度より専門家チームによる現地活動支援が開始されました。

ところが本プロジェクトの2年目にあたる2008年5月2日から3日にかけて、サイクロン・ナルギスがプロジェクト対象地域を直撃し、地元住民、マングローブ林、行政機関に甚大な被害をもたらし、一時的な活動の中断を余儀なくされました。JICAはミャンマー政府と協議し、プロジェクト協力期間を1年間延長した上でプロジェクトの再開を決定しました。再開にあたり、本プロジェクトを対ミャンマーサイクロン被害復興支援の一環として位置づけ、2008年度以降の活動においては、初期の目的に加えて、地元住民の生計の復旧およびマングローブ林の捕食・造林や防災にかかる啓蒙普及を通じた地域防災の強化の活動も加味されました。

プロジェクト・デザイン・マトリックス(PDM)の内容の変遷

 変更点
PDM(version 0)
(2006年9月29日)
 
PDM(version 1)
(2009年1月28日)
サイクロン・ナルギス復興支援活動の内容を追加
PDM(version 2)
(2011年7月14日)
目指す成果とそのための活動を整理し、サイクロン被害からの復興に係る追加活動を集約した成果項目を追加

目標

上位目標:

エーヤーワディ・デルタ地域において、マングローブが持続的に管理され、同時に地域住民の貧困が緩和される。

プロジェクト目標:

エーヤーワディ・デルタ地域内のプロジェクトが実施された地域において地域住民とマングローブ林が持続的に共生する。

成果(アウトプット)

1. 対象とする村落において経済的、環境的にも持続可能な共有林活動が実施される。

2. 効果的な共有林管理・支援体制が、森林局内で確立される。

3. 荒廃したマングローブ林の再生、マングローブ林ならびに関連する森林の管理のために必要な造林技術が開発される。

4. マングローブの荒廃に対処するための関係機関の調整機能(メカニズム)が構築される。

X. サイクロン・ナルギスの被害からの復興が促進される。(2008年5月のサイクロン・ナルギス後の追加活動を集約した成果項目)

活動

ア 成果1に係る活動

1-1
共有林活動に関心を示す村落の中から共有林活動を導入する村落を選定する。
1-2
選定した村落の基本的社会経済状況のベースライン調査を行う。
1-3
選定した村落において、共有林ユーザーグループを組織化・再組織化する。
1-4
共有林ユーザーグループに対し、共有林管理計画および共有林証書のプロポーザル作成・更新を、参加型計画プロセスを通して支援する。
1-5
森林局共有林令に則り、上記プロポーザルに基づき、共有林ユーザーグループに対して、共有林証書を発行する。
1-6
共有林ユーザーグループに対し、承認された共有林管理計画の実施を支援する。
1-7
共有林ユーザーグループの所得水準向上のための様々な能力強化プログラムを、水産局(DoF)、ミャンマー農業サービス(MAS)といった協力機関と連携して、実施する。
1-8
承認された共有林管理計画の共有林ユーザーグループによる実施をモニタリング・評価する。
1-9
共有林ユーザーグループの生計における共有林の効果についてインパクト調査を行う。

イ 成果2に係る活動

2-1
総合マングローブ管理プログラムの共有林関連箇所のレビューに基づき、共有林管理および普及・支援に必要な活動を保全林区ごとに特定する。
2-2
特定された活動に対する共有林タスクフォース技術メンバーの役割と責任を確認にする。
2-3
特定された活動を実施するため共有林タスクフォースのニーズ(例:資金、ロジスティックス、人材開発ニーズ)を評価する。
2-4
上記の人材開発ニーズ評価に基づき、研修計画・教材を作成する。
2-5
上記研修計画に基づき、共有林タスクフォース技術メンバーに研修を行う。
2-6
各保全林区において、共有林普及・苗畑センターを建設・改修する。
2-7
各保全林区において、共有林ユーザーグループへの普及サービス・支援を提供する。
2-8
共有林およびマングローブ保全に関する広報活動を行う。
2-9
森林局の既存の標準運用手続(局令など)およびプロジェクト活動からのフィードバックをもとに、マングローブ林の共有林に関する標準運用手続を作成する。

ウ 成果3に係る活動

3-1
エーヤーワディ・デルタの生態‐地理的ゾーン・管理ゾーンごとに、共有林および非共有林のための造林技術を特定する調査を実施する。
3-2
特定された造林技術(例:苗木生産、植え付け設計・方法、間伐、枝打ち、森林管理)ごとにアクションリサーチ試験を設計する。
3-3
各保全林区においてアクションリサーチ試験を実施する。
3-4
アクションリサーチの植林地において、定期的な技術モニタリングおよび初期評価を実施する。
3-5
マングローブ林のアクションリサーチに関する技術レポートを作成する。
3-6
アクションリサーチのファインディングに基づき、マングローブ林の復旧・管理に関する技術ガイドラインを作成する。

エ 成果4に係る活動

4-1
管区レベルで、エーヤーワディ・デルタのマングローブ林減少の根本原因を検討するために、関連省庁(例:農業、水産、人間居住・地籍)の調整会合を開く。
4-2
調整会合メンバーの協議に資するために、デルタ地域の総合的森林資源評価およびマングローブ林の転用情報を含む土地利用情報を、最新の衛星画像を基に、定期的に更新する。
4-3
エーヤーワディ・デルタのマングローブ生態系の持続的管理のため、関連セクター間のシナジーを促進するセミナーを開く。
4-4
県レベルで、対象地域で活動するドナー・NGOの調整会合を開く。

オ 成果Xに係る活動

X-1
サイクロン・ナルギスの被害分析に基づき、ハザードマップを作成する。
X-2
対象地域の簡易被災調査・復興調査を行う。
X-3
対象地域の村落プロファイル調査を行う。
X-4
対象地域のマングローブ植生のサイクロン・ナルギスからの復旧状況調査を行う。
X-5
各保全林区において、耐サイクロン構造を備えた施設を含む共有林普及・苗畑センターを再建する。
X-6
対象地域における実施機関・協力機関の災害復旧・防災事業に対し、資材供給を通して支援する。
X-7
対象地域において、防災に係る意識向上活動を行う。
X-8
総合マングローブ管理に関し、ドナー間の必要な調整を行う。

投入

ア 日本側投入

  1. 専門家派遣:総括、参加型村落開発、マングローブ保全、調整員、その他の技術分野(例: 普及、GIS、アグロフォレストリー、水産養殖、マーケティングなど)
  2. 機材供与:車両、ボート、GPS、OA機器、他
  3. 現地活動費
    • 生計向上活動関連:野菜種子・果樹苗木・稚魚、肥料・えさ、農園・養殖池の整備費
    • マングローブ植林関連:種子・苗木、肥料・農薬、苗木生産・間伐・枝打ちなどの経費
    • 施設整備:苗畑、森林局キャンプ、共有林普及・苗畑センターなどの改修・建設、他
    • その他: 研修・セミナー、巡回指導、調整委員会開催などの経費

イ 相手国側投入

  1. カウンターパートおよびその他スタッフの配置:プロジェクト・ディレクター、プロジェクト・マネージャー、プロジェクト・コーディネーター、フィールド・プロジェクト・マネージャー、共有林タスクフォース、クラーク、ドライバーなど補助員
  2. 建物、建設、資機材の提供:プロジェクト・オフィス、試験植林用の土地、ボート、車両およびその他機材の保管場所
  3. プロジェクト活動に必要な経費:5年間で100,000ドル相当のプロジェクト活動経費(人件費を除く)

外部条件

ア 前提条件

  • マングローブ復旧活動に甚大な影響を及ぼす自然災害が発生しない(サイクロン、津波、洪水、病虫害など)。
  • プロジェクトに関連する行政機関や関係者がマングローブ林の持続可能な管理を推進することに協力的である。

イ 外部条件

  • 当該保全林区内で、急激な人口増加が起きない。
  • マングローブ林を伐採し、他の土地利用を進める外圧が増えない。
  • 薪炭材など共有林生産品の生産者に有利な市場が存在する。
  • 森林局の4つの保全林区の管理方針に大きな変更が無い。
  • マングローブ林の持続可能な管理のために、十分な予算およびその他資源が確保される。