2009年6月15日
2009年5月28‐29日の2日間、基礎教育リソース開発センター(Basic Education Resource Development Center 以下BERDC)にて、教育実習評価ツール改訂を目的とした研修を実施した。
ミャンマー国の教育大学(Education College 以下EC)では、学生は数週間にわたる教育実習に参加する。教育実習を通して、学生は、子どもに関する知識・理解、学校の政策に関する理解、実際の教育の場での授業設計および授業を実施する力を身につけることが期待されている。教育実習期間は、現場の教員(校長先生および先輩教員)がECの学生を指導し、評価する。指導方法は現場の教員の裁量に任されているが、評価方法については、ECが配布する評価ツールに記載される観点から教育実習生の知識・態度を評価することになっている。
学生は、教育実習を通して、ECの授業で学んだCCAの知識や技術を実際の現場で活用したり、経験ある教員の授業方法を観察して授業力を向上させることができる。しかし、現状では、次のふたつの理由から教育実習でCCAの授業を実践することが困難になっている。ひとつは、教育実習生が実施する授業の評価観点である。受け入れ先の小学校の教員は、評価の観点にそって学生を指導,評価する。現行のチェックリストでは、CCAの実践を評価するものでないため、たとえ学生がCCAに基づいた授業を実践しても評価されない。ふたつめの理由は、CCAを実践する環境の不整備である。教材の不足、保護者や指導する教員のCCAに関する不理解、CCAの授業を計画するための十分な時間が与えられないことなどである。
そこで、本研修では、教育実習でCCAに基づいた授業を学生が実践できる環境を整備するため、ECの教員および訓練部長、町の教育行政官補佐、小学校の校長先生が恊働で、学生が直面する問題を整理し、その解決策を出し合った。その具体的な解決策として(1)現行の教育実習評価ツールであるチェックリストをCCAの実践にあったものに改訂すること、(2)教育実習生が抱える問題をECと教育行政官補佐および校長先生が恊働で解決し、CCAの実践を支援していくことで合意した。(2)に関しては、ECの教員と教育行政官補佐、小学校の校長先生が連絡をとる手段として教育実習日誌を活用することで意見が一致し、そのための観点を教育実習日誌に組み込むことにした。
チェックリストの改訂では、CCAの観点のうち重要な点を厳選し、さらに選んだ項目を十分な理解がない教員でも評価ができるように分かりやすい表現に書き換えた。改訂したチェックリストは、実際に教育実習生の模擬授業(写真左)で活用してみて、評価しにくい点、表現が不適切な点を再度検討し(写真右)、完成させた。
教育実習日誌の改訂では、学生が教育実習でCCAを実践する上で関係者がどういった情報を必要とするのか、またどういう情報を提供しあうことができるかについて意見を出し合い、これらの観点を組み込んで完成させた(写真)。
本研修では、本来コミュニケーションをとることがないEC教員、訓練部長、教育行政官補佐、そして小学校の校長先生が教育実習に関する問題点や不満をお互いに出し合い、どう連携していくかという解決案が出された点においても、非常に意味のあるものとなった。
今後、8月までに近郊の小学校において試験試行を行い、改訂したチェックリストと教育実習日誌の有効性を検証する。さらに、9月には改訂した評価ツールをパイロット地域で導入し、活用状況をモニタリングしながら改訂を続け、来年度からは全国レベルでの導入を計画している。
文責:岸 磨貴子(ECモニタリング)