2009年7月2日
「は〜い、一人、ひとつずつ、このパーツを取りに来てね。そして各グループで木のイラストを完成させましょう!」先生が木の各部分に切り分けたイラストを生徒に配って、グループワークです。子どもたちは紙の木を完成させながら、植物の各部分(根、茎、葉、花など)を覚えるという授業です(写真1)。小学校教員研修の最後で、参加者の先生がCCAの授業研究をしているひとコマです。この後の振り返りでは、本物の植物を教材として使うのが良いか、紙の植物を使うのが良いかという事を、先生たちが議論し始めました。半年前のベースライン調査で、黒板の前に立って、ずっとしゃべって授業していた先生達を思い出すと、専門家としてはちょっとうれしい瞬間です。
さて、申し遅れましたが、伊藤専門家(チームリーダー)、相馬専門家(CCA研修/モニタリング:短期)と一緒にプロジェクトの現職教員研修と自主研修を担当している山岡です。現職の小学校の先生対象のプロジェクト活動を、これから定期的にご報告させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
今回はプロジェクトのカスケード研修についてご報告します。カスケード研修は、同じ内容の研修を何段階かにわけて行い、多人数を対象にする研修でよく使われる方法です。その様子が徐々に広がる段々の滝がイメージされるので、カスケードという名前がついています。SCCA2では、3段階にわけたCCAのカスケード研修を実施します。
まず、2009年3月に選抜された教育大学の先生と教育行政官補佐(ATEO)を対象に①マスター・トレーナー研修をおこないました。次に4月下旬から5月上旬にかけて、このマスター・トレーナーの受講者が、選抜された小学校の校長や先生(クラスター・トレーナー)を対象にCCAを教えるのが、②クラスター・トレーナー研修です。最後の研修は、5月中〜下旬にクラスター・トレーナーが対象タウンシップの小学校の先生全員にCCAを教える③小学校教員研修です(図参照)。今年の研修はパイロット地区のヤンゴン近郊3タウンシップ(バハン、サウス・オカラパ、モビ)を対象にしています。しかし、パイロットとはいえ、最終的には先生全員を対象とするので、マスター・トレーナーが18人、クラスター・トレーナー研修の参加者が146人、小学校教員研修の参加者が1,250人と結構な人数となりました。
このカスケード研修では、小学校の先生が「CCAで授業をやってみよう!」というきっかけを作ることと、自分たちの学校群で授業研究を核とした自主研修を始めてもらうことを主な目的にしています。その研修プログラムは大きく分けると4つのステージにわかれます。
① CCAの基礎(1日目〜4日目):CCAとはどういう教育方法なの何か?という事を、実際に模擬授業を見たり、CCAの教員用指導書の授業案を研究したり、視覚教材(イラストレーションカードとポスター)を使う練習をしたりしながら、徐々に学んでいきます。
② CCAの技術(5〜6日目):子ども達が自由に意見を言ったり、質問したり、クラスメートとグループ活動をする授業の進め方、実験(写真2)や歌を授業に取りいれるやり方、教材作りの実習、教育評価(テストなど)をどうするのか、といったCCAに関連した、具体的な授業の実践技術を学びます。
③ 授業研究(7日目〜9日目):カスケード研修後におこなう自主研修の核になる授業研究のやり方を学びます。授業をみんなの前で発表する先生は、もちろん研修で学んだCCAの授業に挑戦します。授業を観察して、意見交換をする他の先生たちも、CCAに沿った視点で、授業を見ます。この授業研究の研修は、授業研究のやり方を伝えるだけでなく、研修のまとめと、振り返りの役目も果たしています。
④ 次の研修準備(9-10日目):特にマスター・トレーナーとクラスター・トレーナーは、研修に参加した後は、自分たちで今度は研修をしないといけません。そのための研修のやり方の技術を学んだり、計画を立てたりするのが、研修の最後の部分です。他の人に研修をしない小学校の先生たちには、自分たちの自主研修の計画を立ててもらいます。
小学校教員研修の最終日は大雨で会場が水びたし!(写真3)にも関わらず、終了後のアンケートでは6割の人が「非常に役に立つ」、4割の人が「役に立つ」と回答してくれ、「非常に役に立つ内容で、毎年研修をやって欲しい!」といった嬉しいコメントも貰い全体としては好評に終える事ができました。
一方、「もう少しわかりやすい研修教材が欲しい」といったトレーナーからのコメントや、「10日間の研修期間は長い」といった参加者からのコメントもありました。また、研修トピックによっては参加者から「難しくて良くわからない」という意見もあります。これらの参加者の意見と、カウンターパートと日本人専門家で研修をモニタリングした結果から、来年はさらにより良い研修にしていけるよう研修プログラムをこれから約半年かけてじっくりと質の高いものに改訂していきます。来年の研修は対象がぐっと増えて20タウンシップ、約15,000人の先生を対象にします。良い研修にしなければなりません。また、時期が来ればご報告させて頂きます。
最後にクラスター・トレーナー研修のフォトレポート(英語)を添付します。研修の雰囲気をつかんでみたい方は、どうぞダウンロードしてみて下さい。
クラスター・トレーナー研修フォトレポート(英語)(PDF/1.03MB)
文責:山岡智亙(CCA研修/モニタリング)