2011年6月8日
ミャンマーの旧首都で大都市のヤンゴンから空路で北東方向に1時間程かかるシャン州の山の中にカローという場所があります。標高は1300m以上。緯度の低いミャンマーの中でも肌寒い日が多く、山には松の木が生い茂り、斜面に棚田が広がり、道路はその間を縫うように走り、水牛に乗った少年が道路わきを歩いています。どことなく昔の日本を連想させる懐かしく美しい風景です。そんな山と山の間に、シャン族、パオー族、ダンヌー族といった少数民族の人々が牛を追ったり、田んぼを耕したり、鉱山を掘ったりして暮らしています。
このカローは、2011年のCCA研修を実施する17のプロジェクト対象地域の一つで、171の小学校で793人の先生が子どもたちを教えています。その先生たち全員にCCAを広めるために、4月25日〜5月6日にクラスタートレーナー研修を、5月13日〜24日に小学校教員研修をおこないました(なお、残りの16地域の約14,000人の先生に対しても同様の研修をおこなっています)。
小学校教員研修会場の様子
模擬授業(社会科:気候地図の作成)
今回、私は小学校教員研修の様子をモニタリングしに、カローを訪れました。カローは「タウンシップ」という行政区域ですが、その範囲は広く端から端に移動すると車で3時間以上かかります。そのために先生が参加しやすいように小学校教員研修も5箇所にわかれて実施しています。その5つの会場を、時には泥濘で車がスタックしたりしながら、順番に見て回りました。研修内容は以前の記事「CCAの本格普及を始めました」でお伝えした内容に準じますが、今年は以下の点を少し変えています。
教師用の指導書が完成した算数の内容を追加したのに加え、研修評価時にCCAの知識だけでなくスキルについても確認して貰い、また理解度テストで間違った知識についてはしっかり再確認し、間違ったまま覚えてしまわないように改善しています。
さて、カローの先生たちの反応はどうでしょうか?CCAや研修について聞くと、「本当に面白い」、「役に立つ」、「CCAの研修が大好きです!」といった嬉しい反応が返ってきました。その中の一例として、クラスタートレーナー研修では参加者として、小学校教員研修ではトレーナーとして活躍してくれたウィン・ラインさんの言葉をご紹介したいと思います。
小学校教員研修の参加者の先生たち
インタビューに答えるウィン・ラインさん
私はカローの第76番小学校の校長をやっています。私の学校は、7人の先生がいて、152人の子供たちが勉強しています。実はタウンジー(注:プロジェクトのフェーズ1の対象地域)で先生をしていたので、以前からCCAについては知っていました。CCAの研修を受けるのはこれで2回目です。
私はCCAが大好きです。このCCA研修も大好きです。他の先生たちと議論することができるので、CCAや教え方についていろいろ議論できるので、とても満足しています。
私はタウンジーの学校にいた頃から、CCAをおこなってきました。CCAでは、子どもたちが考えたり、様々な体験の機会を与えられることで、より良く学ぶことができ、その結果、学んだことを日々の生活に活かす本当の知恵を持つ事ができます。だから、この子たちが大きく成長した時には、ミャンマーがもっともっと良い国になると信じています。CCAはとても役に立つと思います。私はこのCCAというやり方を作ったデューイという人が(注:以前の研修教材にはCCAの起源と哲学という項目でデューイの説明があった)、どこの国の人か知りたいです。
「デューイはアメリカの人です。しかし、現在のCCAを彼が全部作ったわけではありません。色々な人が様々なやり方で作り上げてきて、これからもより良くしていくものですよ。ミャンマーのCCAは、あなたたち先生方が創設者です」と答えると、ウィン・ラインさんは大きく頷いたあと、照れくさそうにほほ笑みました。
最後にCCA研修の様子について、フォトレポート(英語)を添付しますので、興味のある方はぜひダウンロードしてみてください(私のモニタリングしていない日の記録は抜けておりますが、何卒ご容赦ください)。
文責:山岡智亙(CCA研修/モニタリング)