2012年2月3日
ミャンマーでは、雨期明けの11月の満月の日にパゴダ(仏塔)にロウソクを灯し、大きな気球のような灯籠を空に飛ばす灯明祭の日を迎えます。タウンジーという街では、何百という灯籠が一斉に空に向かって放たれ、それは幻想的な光景が広がるそうです。今年のその灯明祭が終わった頃には、早いものでフェーズ1から数えると足かけ7年におよび、CCA(児童中心型教育)を全国規模で普及するための仕組み作りを目指した当プロジェクトも、ついに最後の局面を迎えました。その仕上げに向けて、11〜12月には様々な活動の仕上げが行われましたのでご報告します。
教育大学向け教材
CCAを導入した教育大学の改定版教科書ができあがり、約200人の教育大学の先生にその使い方を研修しました。これをもって来年度から、正式に教育大学で新たなCCAの授業が行われることになります。また、すべての教育大学に授業研究ハンドブックが配布されました。これは教育大学の先生たちが自主的に授業研究をする助けとなることでしょう。
開発された算数指導書
算数指導書についてはすでに完成・配布されている1〜3学年に続き、4〜5学年分の最終版が完成し、教育省は来年度から独自の予算で印刷・配布します。また、算数の授業に使うイラストレーションセットがプロジェクトの対象地域の小学校に配布されました。全国の残りの小学校へは、他教科のイラストレーションセットと合わせて日本からの支援で配布される予定です。
CCA研修キット
69タウンシップの5万人の先生を対象におこなってきたカスケード研修をもとに、4つのCCA研修キットが完成しました。キットは教育省による2012年からのCCA普及に活用される予定です。また、研修後のCCA実践状況を213の教室でモニタリングしました。その結果、CCA研修後には、教員の授業実践と、授業中の児童の学習の質が向上していること、質の高いCCA授業をうけているクラスの児童はテスト結果の平均点が高い傾向にあることなど、今までのプロジェクトの活動の成果が最終的に確認されました。結果の一例を下に示します。
そして、今年の初めから何回も協議してきた、CCAの全国普及計画の最終版が教育省の主導で策定されました。ミャンマー政府は、この計画を基にCCAの全国普及に約2億円を予算案として計上しており、2012年から2015年までの4年間で全国の残りの261タウンシップ、約18万人の教員に対してCCA研修を実施することになります。
教育大臣にプロジェクト活動を紹介する伊藤総括
12月14日には、教育大臣のミャ・エー博士の出席のもと、首都ネピドーで最後の合同調整委員会が開催されました。教育大臣はその開会スピーチの中でプロジェクトの成果を称賛すると共に、教育省関係者に対して、プロジェクトで開発された教材等を活用して効果的なCCA研修を行い、それぞれのタウンシップの学校でのCCA実践を全面的に支援するよう激励しました。合同調整委員会の模様は、翌日から現地のテレビ、ラジオ、新聞等にニュースとして取り上げられ、広くミャンマーの人々に教育省の意気込みが伝わったかと思います。
カウンターパート・教育省の面々と
その後、12月22日に日本人専門家は、全員帰国の途につき、プロジェクトは終了の刻を迎えました。一抹の寂しさはありますが、これからミャンマーのすべての子ども達のためにCCAが広がっていく予感を十分に感じられるミャンマーの人々の思いを目の当たりにできたことは、非常にうれしく思います。その思いは、灯明祭の灯籠のように高く広く大空に舞い上がり、ミャンマーにいる多くの子ども達を明るく照らしてくれるだろうと信じています。
さて、どこまで私の拙文でお伝えできたかわかりませんが、日本ではなじみのないミャンマーという国の教育に興味を持っていただき、このホームページに目を通していただいた皆様には厚く御礼申し上げます。本当に長い間どうもありがとうございました。ピャン・トウェ・バー・メー!(ミャンマー語で“また会いましょう”の意味です)
文責:山岡智亙(CCA研修/モニタリング)