背景

(1)ネパール国の現状

ネパール国は南アジアのヒマラヤに位置し、周囲をインド、中国にはさまれた国土面積147,000平方キロメートル の山岳国家です。UNICEF(United Nations Children’s Fund)の世界子供白書によれば、ネパール国のGNI(Gross National Income)は、2006年で290USドル、また人口は2764万人です。2008年のUNICEFの統計によれば、ネパール国の保健指標は、5歳未満児死亡率59(1000人あたり)、乳幼児死亡率46(1000人あたり)、妊産婦死亡率740(10万人あたり)を示しており、母子の健康状態は劣悪な状態にあります。

また就学前児の鉄欠乏性貧血症78パーセント、潜在的ヨード欠乏症27パーセント、腸管寄生虫感染症66パーセント、ビタミンA欠乏症32パーセントや夜盲症といった、栄養不良に起因した子どもの発育不良や公衆衛生上の問題による疾患などが深刻です。

これら子どもの健康状態は、学齢児童の学校への出席、成績、進級にも悪影響を与えていることから、学校、行政、コミュニティ間の協働による学校保健活動の強化を通じた学齢児童の健康状態の改善が求められています。

これらの問題に対してネパール国保健人口省は、保健・栄養上ビタミンA配布、鉄分補給、寄生虫対策など様々な対策を講じてきましたが、乳幼児や妊産婦への対策の優先度が高く、学齢児童の保健と栄養の改善は後回しになっていました。

一方教育セクターでは、国家開発計画の一環で学校数を増やし、初等教育の就学率が80パーセントを超えるに至りましたが、初等教育レベルの中退率は21パーセントと高いままであるなど未だ課題を残しています。これらの課題を解決していくためには、学齢児童の健康・栄養状態、性別やカーストによる差別を含めた教育の質の改善が必要となっています。

(2)プロジェクト実施の経緯

このような状況下、ネパール政府は2006年6月、FRESH(UNICEF、WHO、世界銀行が連携して提唱する包括的学校保健の枠組み:Focusing Resources on Effective School Health)を基に、国際機関、政府援助機関、国際NGOなどの支援を得て「国家学校保健・栄養戦略」を作成・発表しました。

同戦略は、“Education for All”と“Health for All”の2つの大きな目標を同時に達成できるアプローチとして位置付けられ、保健人口省と教育省の2省が署名したものであり、以下の4つの戦略目標を掲げています。

  1. 学齢児童による学校保健・栄養サービスの利用が向上する
  2. 学校の衛生環境が改善する
  3. 健康と栄養に対する(学齢児童、両親、住民全体の)態度・行動が改善する
  4. 学校保健・栄養のための政策とコミュニティ支援システムが改善する

本プロジェクトは、2008年6月に4年間の予定で、シンドゥパルチョーク郡とシャンジャ郡の2郡を協力対象として開始されました。本プロジェクトでは、主に初等教育レベルの学齢児童の保健・栄養に関する態度や習慣の改善を図るとともに、本プロジェクト終了後も既存の国家学校保健・栄養戦略に基づいた学校保健活動が継続・普及されていくよう保健人口省と教育省による実施体制を整備することを目的としています。