検証に関するインパクト調査結果

2014年7月25日

SISMモデルの検証を行う検証対象郡4郡に加えて、統制郡4郡(SISM2による検証を通した技術支援を行わない郡で、検証対象郡との変化の比較を行うための郡)の合計8郡を対象に、検証によって、実際に検証対象郡の学校や住民、地方行政官などに意図した変化が現れたのか、あるいはどの部分に変化が現れなかったのか、その要因は何かを確認するために、インパクト調査を行いました。
各郡とも、郡行政事務所のある郡都に近い村落(アクセスがよく比較的開発が進んでいる)及びより遠い村落(アクセスが悪く比較的開発が遅れている)からそれぞれ10校ずつ合計20校をサンプル校として選定しました。サンプル学校数は、総合計で160校(20校×8郡)でした。それらの学校を対象に、検証を行う前の状況をみるためのベースライン調査と、検証を行った後の状況をみるためのエンドライン調査を行いました。この2つの調査の結果を比較すると、対象地域の変化が理解できるわけです。
これらの調査では、校長、教員、学校運営委員会メンバー、保護者、生徒、視学官(リソースパーソン:RP)を対象に、例えば「あなたは学校改善計画の目的を理解していますか」という質問に対して、「5点=非常によく理解している」から「1点=わからない」までで自己採点してもらうという「5段階尺度による質問票調査」を行いました。
ベースライン調査とエンドライン調査の結果、そして検証対象郡と統制郡の調査結果を比較することによって、SISM2の技術支援のある/なしが、校長、教員、学校運営委員会メンバー、保護者、生徒、RPにどのような変化をもたらしたかを分析し、「インパクト調査結果報告書」として取りまとめました。
SISMモデルによって様々なプラスの変化があったことがインパク調査によって理解されました。以下にいくつかの調査結果を紹介します。

学校改善計画(SIP)に係る変化

SIPに関して、SIPの役割を理解したか、手順や手法が理解できたか等について質問し、検証対象郡の校長、教員、生徒、学校運営委員会メンバー、保護者からの回答には、ベースライン調査時とエンドライン調査時で大きな変化がみられました。一方、統制郡のほうには大きな変化はみられず、検証対象郡における変化は、SISM2の検証活動以外から影響があったためではなく、主にSISM2の検証において学校関係者が研修やワークショップ、学校活動を通し、SIPの重要性、有用性を正しく理解し、その作成にしっかりと携わったによって引き起こされたものであることが理解できます。

学校運営委員会メンバーと保護者の学校運営に対する考え方

学校運営に関連しては、例えば学校の財務管理、教員管理、学校の各種記録や財務状況に関する情報開示等に関する質問を行いました。この中で、検証対象郡の校長に、教員や生徒の出席簿情報の学校運営委員会メンバーへの共有に関して大きな変化が見られました。統制郡では明確な変化はありませんでした。検証対象郡では、SISMモデルの指導員研修や学校レベル・ワークショップを通して、校長が、学校運営を改善するためには、自分だけが情報を大切に抱えるのではなく、学校運営委員会や保護者と学校情報を共有することの重要性を十分認識したためと思われます。また、検証対象郡では、学校レベル・ワークショップで自分たちの役割を認識し、学校への関心を強めた保護者たちによる学校訪問の回数が増加し、様々な学校活動に積極的に参加したり、支援したりするようになったことも調査からわかりました。

世帯収入による影響

検証対象郡のサンプル校80校を、比較的貧しい世帯の子どもたちが多い学校とそうでない学校の2グループに分けて(前者は59校、後者は21校)、今回の検証による変化に、両グループの間で何か違いが見られるか、家庭の所得の差がSISMモデルの機能に影響するかを分析してみました。この二つのグループの校長に以下の表の質問について、5段階の尺度(「5点=全くその通りである」から「1点=全く違う」まで」で回答してもらったところ、彼らの変化は、以下の図のようになりました。

表:比較的貧しい世帯の子どもが多い学校校長とそうでない学校校長への質問項目
  質問内容
質問1 教員は、授業や学級運営に関する問題をあなたにしばしば相談する。
質問2 あなたの学校は、SIP活動計画作成のために学校運営委員会会合を年に数回開催する。
質問3 SIP活動計画をSIP作成ガイドブックに沿って作成した(または作成中である)。
質問4 あなたの学校では、教員はSIP活動計画作成に積極的に参加している。
質問5 あなたの学校では、生徒はSIP活動計画作成に積極的に参加している。
質問6 あなたの学校のSIP活動計画は、学習達成度をあげるための活動を含んでいる。
質問7 あなたの学校のSIP活動計画には、ゼロ予算活動が含まれている。

下図の棒グラフのうち、赤は比較的貧しい世帯の子どもが多いグループの学校校長による上記各質問への回答平均値について、ベースライン調査時からエンドライン調査時の変化を示したもの、青はそうでないグループの学校校長による同回答平均値の変化を示しています。それぞれのポイントはグラフの左側縦軸を参照してください。また折れ線グラフは、各質問に対する回答平均値の両グループの差異(つまり赤いバーと青いバーの差)を示しています。こちらのポイントはグラフの右側縦軸を参照してください。

【画像】図:比較的貧しい世帯の子どもが多い学校校長とそうでない学校校長からみた学校関係者の変化

上記のグラフから、貧しい世帯の子どもが少ないグループの学校の校長が、より学校にプラスの変化が大きく見られたと回答したことがわかります。一方、ここで注目したいのが比較的貧しい世帯の子どもが多い学校グループです。貧しい世帯の子どもが少ないグループに比べれば変化の度合は小さいですが、このグループの校長もすべての質問に対してプラスの変化があったと回答しています。この結果は、SISMモデルを適用することによって、比較的貧しい世帯の子どもたちが多い学校でも、教員や学校運営委員会メンバー、保護者に学校運営への参加や教え方の面で意識や態度に変化をもたらす可能性があることを示すと言えるでしょう。