地すべりハザードマップ−作成・復興庁への引き渡し・TOT(トレーナーのためのトレーニング)の実施−

2017年2月24日

ネパール地震復旧・復興プロジェクトでは、BBB (Build Back Better:より良い復興)の考えに基づき、ネパール国のゴルカ地震からの復興を支援しています。2015年4月の地震では、約50万戸の家屋が全壊、約27万個が半壊という被害が発生しており、テント生活を余儀なくされる住民が多くいる状況で、早期の復興は必至です。同時に、住宅再建やインフラの復旧には、将来の災害の危険性を考慮することが重要です。復興計画の検討に役立てるため、本プロジェクトでは、特に被害の大きかったゴルカ郡およびシンドパルチョーク郡の被災2郡において、地すべりハザードマップを作成しました。

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被災者は、様々なドナーの支援により、広場に準備されたテントで避難生活をしていました。

作成方法は、下記の通りです(図1参照)。
1.衛星画像から地すべり箇所、範囲および形状を判読
2.現地踏査より、1.の判読結果と実情の相関確認による判読精度向上
3.地すべりに影響を与える要素の解析・抽出
4.数量化理論(傾斜角度・斜面方向・MCT(主中央衝上断層(Main central thrust)と呼ばれる活断層)からの距離、震源地からの距離)による危険度分類(危険度をグラデーションで表現)
本マップはすべての場所を実際に訪れて作成しているものでないことから、計画策定の際、本マップのみで安全・危険の判断をするのではなく、資格のある技術者が現場で状況を確認・判断することが不可欠です。また本マップを現場調査前に補助的に活用することで、効果的な計画作りに役立てることを推奨しています。

【画像】図1 ハザードマップの作成手順

作成したハザードマップの利活用のためのトレーニングの実施・引き渡し

ハザードマップの利活用には、ハザードマップを正確に読み、現場で判断する事が必要です。そのため、本プロジェクトでは、作成した地すべりハザードマップをネパール政府が自ら使用できるように、ハザードマップの利活用のためのTOT (トレーナーのためのトレーニング)を2017年1月から2月にかけて実施しました。復興庁やネパール産業省鉱山地質局などから、土木、地質学、地盤工学の学位取得者、且つ実務経験のある21名が参加者として、また、今後のトレーナーとして選出されました。参加者は講義だけではなく、GISを用いた実習や地すべり危険地での地すべりハザードマップの確認など、実践的に学び、今後はトレーナーとして各省庁および郡で広くハザードマップの利活用について普及させることが期待されます。

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ハザードマップTOTでの現地視察の様子

JICAにより作成されたハザードマップは、復興庁のゴビンダ・ポカレル長官(CEO)に正式に引き渡され、今後は復興庁を中心に、被災地での復興において活用されていく事となります。
今後、地すべりハザードマップ作成時における留意点について、第2回目のTOTを実施する予定です。

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復興庁へのハザードマップ引き渡しの様子
(左から、ゴビンダ・ポカレルCEO、カマル・ギミレ氏、佐久間潤ネパール事務所長)