ネパール2018年経済センサスの速報結果が公表されました

2018年9月13日

2018年9月13日、カトマンズ市にて、ネパール国家計画委員会の委員であるラム・クマール・プヤル博士が、2018年経済センサスの速報結果を公表しました。本経済センサスは、2018年4月14日を調査日として実施され、全国、州及び郡(District)別事業所数及び従業者数が、約5か月にわたり集計されたものです。なお、州及び郡別の結果は、2017年11月2日現在の州及び郡の境界に基づいています。

本経済センサスの速報結果は、2015年4月及び5月に2回にわたって発生した大地震後、回復過程にあるネパール経済の現状を示しています。主な速報結果は以下のとおりです。

1.ネパール全国の事業所数は922,445事業所

ネパール全国の事業所数は、2018年4月14日現在で922,445事業所です。2018年経済センサスは、ネパールの国土全域を例外なく調査しているものの、国際的な実例に基づき、次の事業所は、調査対象から除外されています。国際標準産業分類Rev.4における農林漁業に属する非登記の事業所、国家公務・地方公務に属する事業所、世帯内の活動に限定された事業所(ホームヘルパー等)及び外国公務に属する事業所。このほか、移動事業所も調査対象から除外されています。
1,000人当たりの事業所数は31.6事業所です。これを諸外国と比較すると、日本が全国580万事業所(1,000人当たり事業所数は45.4事業所)、インドネシアが全国2,670万事業所(同104.6事業所)、スリランカが全国100万事業所(同50.3事業所)及びカンボジアが50万事業所(同34.6事業所)となっており、これらの5か国の中では、ネパールの事業所数は、その人口に対して比較的少ないことがわかります。これは、ネパールが、内陸国であり、なおかつ山岳国であるという地理的に不利な条件が重なっていることが主な要因と考えられます。
(ただし、これら5か国における事業所の定義には若干の差異があり、調査年次も異なります)。
事業所数を郡別にみると、カトマンズ郡は、ネパール全77郡の中で事業所数が最も多く、123,994事業所と、全国の13.4%を占めています。次いで、ジャパ郡が38,741事業所(同4.2%)、ルパンデヒ郡が38,415事業所(同4.2%)、モラン郡が35,237事業所(同3.8%)、スンサリ郡が31,486事業所(同3.4%)などとなっています。これら5つの郡は、カトマンズ盆地又は南側の平野部に位置しており、5つ郡で、全国の30%近くを占めています。
また、カトマンズ盆地に位置するカトマンズ郡、バクタプール郡及びラリットプール郡の3郡には、合計170,632事業所が所在しており、全国の18.5%を占めています。

2.ネパール全国の事業所密度は平方キロメートル当たり6.3事業所

ネパール全国の事業所密度は平方キロメートル当たり6.3事業所という結果が出ました。これを諸外国と比較すると、日本が平方キロメートル当たり15.3事業所、インドネシアが平方キロメートル当たり13.9事業所、スリランカが平方キロメートル当たり15.5事業所及びカンボジアが平方キロメートル当たり2.8事業所となっており、これらの5か国の中では、カンボジアを上回っているものの、ネパールの事業所密度は、その面積に対して比較的低いことがわかります。これも、ネパールが、内陸国であり、なおかつ山岳国であるという地理的に不利な条件が重なっていることが主な要因と考えられます。
これを郡別にみると、カトマンズ郡の事業所密度が最も高く、平方キロメートル当たり313.9事業所となっています。次いで、バクタプール郡が平方キロメートル当たり164.9事業所、ラリットプール郡が平方キロメートル当たり70.2事業所、ルパンデヒ郡が平方キロメートル当たり28.2事業所、スンサリ郡が平方キロメートル当たり25.0事業所となっています。上位の3郡は、いずれもカトマンズ盆地に位置しており、他の郡よりも、群を抜いて事業所密度が高いと言えます。

3.ネパール全国の従業者数は3,408,746人

ネパール全国の従業者数は3,408,746人という結果になりました。これを郡別にみると、カトマンズ郡が最も多く、575,003人となっており、全国の16.9%を占めています。次いで、ルパンデヒ郡が163,045人(同4.8%)、モラン郡が143,386人(同4.2%)、ラリットプール郡が139,686人(同4.1%)、ジャパ郡が129,180事業所(同3.8%)、となっています。これら5つの郡は、カトマンズ盆地又は南側の平野部に位置しており、5つ郡で、全国の3分の1以上を占めています。

4.ネパール全国の従業者数は男性が女性の1.5倍

ネパール全国の従業者数の男女比(女性100人に対する男性の比率)は150.0という結果になりました。これを諸外国と比較すると、日本が125.7、インドネシアが183.9、スリランカが154.0及びカンボジアが63.4となっており、これらの5か国の中では、ネパールの従業者数の性比は、平均的ではあるものの、男女平等の観点からは、未だ女性の比率が低いことがわかります。
これを郡別にみると、バラ郡が最も高く、301.9となっています。次いで、ラウタハット郡が300.5、パルサ郡が281.5、カピルバスツ郡が268.5、マホッタリ郡が264.4となっています。これら5つの郡は、いずれも南側の平野部に位置しており、これらの地域では、女性が農林業に従事している比率が高いため、非農林業では男性の比率が高くなっているものと考えられます。

5.ネパール全国の一事業所当たりの従業者数は3.7人

ネパール全国の一事業所当たりの従業者数は3.7人という結果になりました。これを諸外国と比較すると、日本が9.9人、インドネシアが2.6人、スリランカが2.8人及びカンボジアが3.3人となっており、これらの5か国の中では、ネパールは、やや多くなっています。これは、ネパールでは、屋台等の路上営業が比較的少ないためと考えられます。
一事業所当たりの従業者数を郡別にみると、ラリットプール郡が最も多く、5.2人となっています。次いで、マナン郡が4.9人、カトマンズ郡が4.6人、ラムジュン郡が4.6人、サルラヒ郡が4.6人などとなっています。ラムジュン郡には、ネパールでは有名なアンナプルナ・トレッキングの出発地点があり、多くの登山者や観光客が訪れています。これに伴い、小売店、飲食店、宿泊施設、銀行等が数多く営業しており、また、カトマンズやポカラと結ぶ交通手段も整備されているためと考えられます。サルラヒ郡には、有名な製糖工場が数社あり、数千人が雇用されています。

以上が速報結果の概要となりますが、現在はより詳細な報告をプロジェクトとCBSが集計しています。2018年経済センサスの結果は、中央や地方政府における各種政策や計画の立案に利用されるほか、大学や研究所における学術研究、民間部門における経営戦略や市場調査等に利用されます。