ネパール2018年経済センサスの確報結果(第一報)が公表されました

2019年7月1日

ネパールでは史上初めてとなる、すべての事業所(注1)を調査対象(注2)とする2018年経済センサス(事業所の国勢調査)が、2018年4月14日を調査期日として実施されました。その後、14か月に及ぶ集計期間等を経て、2019年7月1日、確報結果の第一報が公表されました。主な確報結果は以下のとおりです。

1.ネパールの事業所数は92万事業所

2018年4月14日現在におけるネパール全国の事業所数は、92万事業所となっています。また、従業者数は323万人で、このうち男性が201万人(62.3%)、女性が122万人(37.7%)と男性の方が、かなり多くなっていることが特徴です。さらに、1事業所当たりの従業者数は、3.5人となっています。
これを日本と比較すると(注3)、日本の事業所数は558万事業所で、ネパールの約6倍、また、日本の従業者数は5687万人で、ネパールの約18倍、さらに、日本の1事業所当たりの従業者数は10.2人で、ネパールの約3倍となっています。このことから、ネパールの経済は、日本と比較すると、かなり小さな規模であることがわかります。

2.卸売・小売業(自動車・バイク修理業含む)が全体の5割以上

事業所数を産業(NSIC Section)別にみると、卸売・小売業(自動車・バイク修理業含む)が49万8千事業所と最も多く、全体の53.9%を占めています。次いで、宿泊・飲食業が13万1千事業所(同14.1%)、製造業(衣服製造業、精穀・製粉業等)が10万4千事業所(同11.3%)、その他サービス業(理容・美容業、通信機器修理業、寺社、家電修理業等)が5万8千事業所(同6.2%)などとなっています。
これを従業者数でみると、卸売・小売業(自動車・バイク修理業含む)が98万8千人と最も多く、全体の30.6%を占めています。次いで、教育業が51万3千人(同15.9%)、製造業(レンガ製造業、衣服製造業、精穀・製粉業、家具製造業等)が51万1千人(同15.8%)、宿泊・飲食業が34万6千人(同10.7%)、金融・保険業が20万7千人(同6.4%)などとなっています。

3.新設事業所数は39万事業所

2015年4月から2018年4月までの3年間に新設された事業所数(注4)は、39万事業所で、全事業所数の42.7%を占めており、また、従業者数も91万人(同28.2%.)となっています。ネパールには、新しい事業所が多いことがわかり、このことは、経済が着実に成長していることも、同時に意味しています。
産業別に見ると、卸売・小売業(自動車・バイク修理業含む)が22万9千事業所と最も多く、全体の58.1%を占めています。次いで、宿泊・飲食業が6万9千事業所(同17.5%)、製造業が4万3千事業所(同10.9%)、その他サービス業(理容・美容業等)が2万2千事業所(同5.7%)などとなっています。
これを従業者数でみると、卸売・小売業(自動車・バイク修理業含む)が41万2千人と最も多く、全体の45.3%を占めています。次いで、宿泊・飲食業が16万5千人(同18.2%)、製造業が14万5千人(同15.9%)、その他サービス業(理容・美容業等)が4万6千事業所(同5.0%)などとなっています。

4.屋台等の露天商(Street Business)の数は少なめ

屋台等の露天商の数は3万4千で、全体の3.7%、また、これらの従業者数は4万5千人(同1.4%)となっています。
これをカンボジアと比較すると、カンボジアの屋台等の露天商は4万2千(注5)で、全体の8.3%、また、これらの従業者数は6万3千人(同3.8%)となっており、ネパールでは、カンボジアよりも、屋台等の露天商の数が少なく、割合も低いことが分かります。

5.半数近くが事業所の建物又は室を所有

事業所の建物又は室の所有率は、46.7%を占めており、半数近くが比較的安定した経営基盤を保持していることを示しています。これをカンボジアと比較すると、カンボジアの所有率は、68.7%となっており、ネパールでは、カンボジアよりも、所有率がかなり低いことがわかります。

6.2割以上が9.3平方メートル未満の狭いスペースで営業

建物又は室の面積が9.3平方メートル(100平方フィート)未満の事業所は、20.8%に達しており、ネパールでは2割以上の事業所が極めて狭いスペースで営業していることがわかります。また、93平方メートル(1000平方フィート)以上をみても、9.7%とかなり低い水準となっています。

7.事業所の代表者のうち女性は3割弱

事業所の代表者のうち女性は27万3千人で、全体の29.6%を占めている。これをカンボジアと比較すると、カンボジアでは65.1%となっており、ネパールでは女性の代表者の割合が、かなり低いことがわかります。
また、この女性代表者の割合を産業別にみると、宿泊・飲食業が40.3%と最も高く、次いで、健康・社会福祉事業(避難民救済活動、医科歯科活動、病院等)が40.2%となっています。これは、2015年4月及び5月に2回にわたって発生したネパール大地震が影響している可能性が考えられます。

8.事業所の代表者のうち39歳以下は5割強

事業所の代表者のうち39歳以下は49万9千人で、全体の54.0%を占めており、若い世代が半数を超えていることがわかります。このことは、経済的には将来性のある年齢構成になっていることを意味しています。これを産業別にみると、芸術・娯楽業(冠婚葬祭用の看板や装飾品の作成等)が63.7%と最も高く、次いで、その他のサービス業(理容・美容業等)が62.8%、情報通信業(インターネットや携帯電話網の提供等)が61.7%、金融・保険業が59.2%などとなっています。

9.半数近くが非登録の事業所

公的な機関に登録していない事業所数は、46万事業所に上り、全事業所の49.9%を占めています。この割合を産業別にみると、宿泊・飲食業が63.3%と最も多く、次いで、卸売・小売業(自動車・バイク修理業含む)が56.0%、その他サービス業が52.7%などとなっています。

10.会計帳簿を作成していない事業所が5割強

会計帳簿を作成していない事業所数(支店や支所を除く)は、47万2千事業所で、全事業所の52.4%を占めています。この割合を産業別にみると、宿泊・飲食業が60.8%と最も多く、次いで、卸売・小売業(自動車・バイク修理業含む)が58.2%、製造業が55.0%などとなっています。

(注1)ここでいう事業所とは、固定の場所で経済活動を営み、固定的な設備を所有しているところであり、国際標準産業分類第4版(ISIC)におけるEstablishmentの定義に準じています。ネパールでは、このISICに基づいたネパール標準産業分類(NSIC)が使用されています。一方、広義の事業所には、Fixed(固定の事業所)及びMovable(移動可能であるが、固定の場所で営業している事業所)のほか、Mobile(移動しながら営業している事業所)も含めて3種類とする場合がありますが、この結果には、Fixed及びMovableのみが含まれており、固定的でないMobileは含まれていません。

(注2)ネパール2018年経済センサスでは、次の産業に属する事業所は、国際的な実例に基づき調査対象としていないため、結果には含まれていません。農林漁業(NSIC Section A)に属する事業所のうち公的な機関に登録されていない事業所、官公庁等(NSIC Section O)、個人のホームヘルパーなどの世帯活動(NSIC Section T)及び大使館や国際機関等の外国公務の施設(NSIC Section U)。

(注3)本稿に掲載されている日本の数字は、すべて2016年経済センサス活動調査の全国結果によるものです。

(注4)ここでいう新設事業所には、2015年4月から2018年4月までの3年間に新設されたものの、2018年4月までに廃業した事業所は含まれていません。

(注5)本稿に掲載されているカンボジアの数字は、すべて2011年経済センサスの全国結果によるものです。

以上が確報結果の概要となります。これら2018年経済センサスの結果は、中央や地方政府における各種政策や計画の立案に利用されるほか、大学や研究所における学術研究、民間部門における経営戦略や市場調査等に利用される予定です。なお、この結果の英語版は、次のネパール中央統計局(CBS)のページからも参照が可能です。