プロジェクト概要

プロジェクト名

農業普及システム改善プロジェクト

対象国名

ニジェール共和国

署名日(実施合意)

2018年10月15日

協力期間

2019年3月7日から2024年3月6日

相手国機関名

農業畜産省

背景

ニジェールでは、労働人口の約8割が農業に従事し、GDPの約4割を農業セクターが占め、農業は同国の主要産業に位置付けられています。また、人口の約8割が農村部に居住し、その多くが自給的農業を営んでいます。近年、ニジェール政府は「ニジェール国民の空腹からの解放と国民生産への十分な寄与と将来に亘る所得向上の保障」を目的とする「ニジェール人によるニジェール人のための食料生産政策(3Nイニシアチブ)(2012年~2021年)」を推進し、農業生産性の向上とともに、農産物の質の改善を目指し、各州の穀物生産および園芸作物の振興に努めています。
上記政策推進のため、農業畜産省(以下、農業省)は、農業技術普及の手法として国連食糧農業機関(FAO)が導入した参加型学習の手法であるFarmer Field School(FFS)アプローチを採用しています。JICAが実施した「ニジェール国サヘル地域における貯水池の有効活用と自律的コミュニティ開発プロジェクト(VRACS)(2012-2017)」では、貯水池の有効活用を目的とした農業普及活動にこのFFSアプローチを採用したところ、調査対象者の94%の家計が向上し、乾季作では農産物販売金額が2.4倍、雨季作では1.8倍の増加が見られました。また生産者が、新しい作物を導入することに対する自信を獲得するなど、意識変革の側面からも効果が確認され、零細な生産者であってもFFSアプローチを通して、技術力が改善し、生産性の向上と作付けの多様化によって収入の向上が実現できることが立証された。
一方で農産物販売の側面から見ると、生産者の市場への持ち込みは限定的で、適切な販売先を確保できていない上に、同一作物の収穫が一定時期に集中して市場価格が暴落するなど、農業生産の増加が生産者の収入向上に直結していない事例も多く見られる。生産者がより高い収益を上げていくためには、市場志向型のアプローチをニジェールの農業普及システムに導入し、生産者が自分自身の置かれた市場環境とそのニーズを的確に理解し、農産物からより高い収益を獲得できるようなノウハウを身につけさせることが必要である。
このような課題に対して、農業実践開発大学校(IPDR)は、2016年からJICAが実施する課題別研修に同職員を派遣し、既に同校のカリキュラムに市場志向型農業アプローチの講義を取り込んでいます。また、ニアメ特別区農業局(DRA)も上記課題別研修に毎年職員を派遣しており、研修中に作成したアクションプランをもとに地域の園芸栽培グループに対してSHEP活動を実施し、既に一部の生産者では収入の向上が見られます。上記取り組みを受け、農業省は市場志向型農業を加味し、現地に適した農業普及パッケージを検討し、IPDRを含む農業畜産省の農業普及員養成能力と農業普及員自身の能力のさらなる向上を達成するために、本プロジェクト「農業普及システム改善プロジェクト」の実施を我が国に要請しました。

目標

上位目標

質の向上した農業普及サービスが継続的に提供される。

プロジェクト目標

ニジェールにおける農業普及サービスの質が向上する。

成果

1.農業省の普及員養成機能が向上する。
2.現職の農業普及業務者の農家指導能力が向上する。
3.IPDR農学部の学生が現地ニーズに即した農業普及について理解する。
4.市場志向型農業を取り入れた普及サービスが確立される。
5.ニジェールの農業普及政策に市場志向型農業が導入される。

活動

1-1.プロジェクト関係機関によるプロジェクトタスクフォース(PTF)を組織する。
1-2.IPDRの普及講義における参加型課題分析(キャパシティアセスメント)を行う。
1-3.現職普及員向け研修モジュールを確立する。
1-4.IPDRでの普及講義に関する研修カリキュラムを確立する。
1-5.マスタートレーナー養成研修(TOT)用の研修ツールを作成する。
1-6.マスタートレーナー養成のためのTOTを実施する。
1-7.マスタートレーナー認定のための試験を実施する。

2-1.現職普及員向け研修の参加者を決定する。
2-2.研修モジュールに則り、現職普及員向け研修を実施する。
2-3.研修参加者の評価を実施する。
2-4.各研修参加者がアクションプランを作成する。
2-5.各参加者が自身の担当地域でアクションプランに則り普及活動を実践する。
2-6.研修参加者の活動モニタリングを実施する。
2-7.研修カリキュラム、モジュールの見直しを実施する。

3-1.1-4で定めたカリキュラムに則り普及の講義を実施する。
3-2.普及講義の修了試験を実施する。
3-3.研修カリキュラムや研修モジュールを評価し、必要に応じ改訂する。

4-1.ニアメ特別区のプロジェクト対象農家グループを選定する。
4-2.農家への指導用普及パッケージ(普及マニュアル・ツール)を作成する。
4-3.対象農家グループにて農家参加型のベースライン調査を行う。
4-4.普及パッケージに則り、対象農家グループに対して研修を実施する。
4-5.対象農家グループにて参加型のモニタリング・評価を行う。
4-6.普及パッケージ(普及マニュアル・ツール)を必要に応じ改訂する。

5-1.4-4、4-5を踏まえ市場志向型農業を取り入れた普及ガイドライン改定版を作成する。
5-2.普及ガイドライン改定版を農業省内で正式承認する。
5-3.普及ガイドライン改定版に関するワークショップ等を実施する。

投入

日本側投入

専門家5名

総括副総括/農業普及1、副総括/農業普及1、園芸栽培1、園芸栽培/研修1、業務調整/研修1

研修員受入

カウンターパートの本邦研修

その他の活動経費

必要に応じてプロジェクト活動に係る現地経費

相手国側投入

カウンターパートの配置

プロジェクトダイレクター
プロジェクトマネージャー
農業畜産省からの人材

施設・機材

プロジェクト実施に必要な事務所及び施設の提供

プロジェクトにかかわる現地経費

プロジェクト実施に必要な支出(カウンターパートの人材に係るニジェール国内の旅費や手当他)
プロジェクト実施に必要な運用経費(電気、水道、通信費等)