コミュニティ助産師の育成

2016年4月4日

統計資料(注)によるとラゴス州では約87%の出産には産科医や助産師などの医療従事者が立ち会っているとされています。つまり残り13%は、正規の資格を有しない伝統的出産介助者や家族、親せき、友人が立ち会うか、または一人で産んでいることになります。割合的には小さいように感じるかもしれませんが、2000万人強の人口を抱えるラゴス州においては、91,000の出生に値すると推定されます。決して少ない数ではありません。この大部分が伝統的出産介助者立会いの出産であると考えられており、地域の母子保健向上には、伝統的出産介助者との連携が欠かせません。

ラゴス州政府も伝統的出産介助者の巻込みの重要性を認識し、コミュニティ助産師を育成することで、より質の高い助産サービスがコミュニティにおいて提供されるような体制づくりを始めました。

プロジェクトもこの流れを後押しするかたちで、伝統的出産介助者を対象とした能力向上研修を実施しました。この能力向上研修に参加した伝統助産師の一人は、これまでこのような研修に参加する機会がなく、今回初めて妊産婦や新生児の危険な症状を知ることができたと話していました。また、他の参加者からは、実技や写真などを使った説明は、非常に分かりやすかったとの意見も聞かれました。目に見える成果として、研修を受けた伝統的出産介助者が新生児を予防接種のためにプライマリー・ヘルス・センター(PHC)に連れてくる場面も見られました。今年2月からは、この研修で良い成績を収めた伝統的出産介助者を対象に、コミュニティ助産師になるための支援を開始しました。

コミュニティ助産師になるためには、ラゴス州の伝統医療委員会に登録後、同委員会での座学3〜4週間、病院での臨床研修を3〜4週間、最後にラゴス州保健技術大学での講義を6週間修了する必要があります。

現在プロジェクトが支援しているコミュニティ助産師候補者8名は今年5月には、課程をすべて修了し晴れてコミュニティ助産師として活躍する予定です。より質の高い助産サービスを提供するのみならず、近隣のプライマリー・ヘルス・センターと連携強化を図り、地域の全体的な母子保健サービスの底上げが期待されます。

(注)National Population Commission(NPC)[Nigeria]and ICF International.2014.Nigeria Demographic and Health Survey 2013.Abuja,Nigeria,and Rockville,Maryland,USA:NPC and ICF International.

【画像】

伝統的出産介助者を対象とした能力向上研修の様子。男性の出産介助者もいる。年齢層も幅広い。