プロジェクト概要

プロジェクト名

(日)フィリピン地震火山監視能力強化と防災情報の利活用推進プロジェクト
(英)Enhancement of Earthquake and Volcano Monitoring and Effective Utilization of Disaster Mitigation Information Project

対象国名

フィリピン

プロジェクトサイト

マニラ都ケソン市のフィリピン地震火山研究所、アルバイ州のマヨン火山観測所、バタンガス州のタール火山観測所

署名日(実施合意)

2009年12月1日

協力期間

2010年2月21日から2015年2月20日

相手国機関名

【写真】

PHIVOLCS本部

(和)科学技術省 地震火山研究所
(英)PHIVOLCS(PHILIPPINE INSTITUTE OF VOLCANOLOGY AND SEISMOLOGY)-Department of Science and Technology

日本側協力機関名

独立行政法人 防災科学技術研究所、ほか

背景

【写真】

マヨン火山の視察

フィリピン共和国(以下「フィリピン」)は西太平洋のプレート沈み込み帯に位置し、我が国と同様に世界で最も地震・火山の活動が活発な国の一つです。東側のフィリピン海溝ではフィリピン海プレートが、西側のマニラ海溝ではユーラシアプレートが沈み込み、その中央には国を南北に縦断するフィリピン断層が存在します。これらのプレート境界と内陸活断層は、1976年ミンダナオ島沖地震(M7.8 死者約6000人)、1990年ルソン島地震(M7.7 死者2412人)、1994年ミンドロ島地震津波(M7.1 死者81人)など、過去に数多くの地震災害を引き起こしています。また内陸には、22の活火山が存在し、1981年のマヨン火山噴火では、泥流と火砕流で107人が、1991年のピナツボ火山噴火では土石流により約200人の犠牲者が出ています。

これらの災害を軽減するためには、調査研究によって将来発生し得る地震・火山噴火を長期的に予測し、災害に対する備えを十分に行なっていくこと、住民や、行政等に地震や火山噴火の発生時にリアルタイムの監視情報を提供して、避難警報の発令や住民避難等、緊急災害対応に役立てることが必要です。

フィリピンにおいて地震・火山監視は、科学技術省(DOST)所管のフィリピン火山地震研究所(PHIVOLCS)が担っています。我が国は、PHIVOLCSの地震・火山監視能力強化を目的として、無償資金協力による「第一次地震・火山観測網整備計画(1999年)」、「第二次地震・火山観測網整備計画(2001年〜2002年)」を実施し、地震・火山監視ネットワークの設置を行ないました。また、同無償資金協力で設置した監視ネットワークの運用指導を行なう技術協力プロジェクト「地震火山観測網整備計画」(2004年3月〜2006年3月)を実施しました。これにより、地震発生後15分程度で震源や規模を把握する体制と主要6活火山の常時観測体制が構築され、地震・火山観測能力はそれ以前に比べて大きく向上しました。

しかし、上記無償資金協力によるプロジェクトの実施から10年近くが経ち、その間に我が国や各国の地震火山監視技術は大きく進歩しました。特に、2004年のスマトラ沖地震・津波以降、アジア各国では、津波早期警報システム構築のために広帯域地震計の整備が急速に進んでおり、そのような中において、フィリピンのみが、広帯域地震計によるテレメータ観測網を有しておらず、大地震発生時に正確なマグニチュードと震源の特定、地震波の到達予測が行なえておらず、地震発生後の緊急地震速報も正確性を欠くものとなっています。

【写真】

フィリピンの建築材料を用いての振動台による耐震実験

火山観測においては、「第二次地震・火山観測網整備計画(2001年〜2002年)」において、テレメータ観測網が整備されたが、観測網には短周期地震計のみが設置されているため、長期的な噴火予測や避難命令の解除に必要な長周期地震の観測に基づく噴火予兆を観測することが困難です。また、これまでのPHIVOLCSと我が国の大学との研究では、火山における電磁気観測に関する研究実績があり、電磁気観測が噴火予測に有効なことが証明されています。これまでの観測体制の強化と最新の観測技術を用いて火山噴火予測を行なうことにより信頼性の高い火山噴火予測体制の構築が可能となります。

上記に加えて、地震・火山観測から得られた情報を被害軽減に役立てるには、情報の迅速さと正確さだけではなく、国・地方自治体・企業・住民が、最新観測情報に基づく防災関連情報にアクセスし、その意味を理解し、情報を適切な緊急対応や事前の備えといった具体的な行動に反映できる仕組みが必要です。

以上の状況を受けて、フィリピン政府は、我が国の地震火山観測技術、情報伝達技術のフィリピンでの適用に関する支援を地球規模課題対応国際科学技術協力案件として我が国に要請してきました。

要請を受けてJICAはプロジェクト実施体制、協力計画等「フィ」国実施機関と協議することを目的とした詳細計画策定調査を2009年9月2日〜17日に実施し、協議議事録(M/M)上で協議結果を確認、その後討議議事録の署名を2009年12月8日に行いました。

プロジェクト目標

PHIVOLCSの地震、津波および火山の監視能力が向上し、精度の高い防災情報が防災機関や関係団体に活用される。

成果

  1. リアルタイムで地震と津波の情報を把握できるようになる。
  2. 地震発生ポテンシャル評価の精度が向上する。
  3. リアルタイムで総合的に火山情報を把握できるようになる。
  4. 有効な情報発信手段の一つとしてのポータルサイトを通じて、より精度の高い防災情報が迅速に発信される。

活動

【写真】

ミンダナオ島スリガオでのGPS測定

【写真】

PHIVOLCSを見学に来た生徒に説明するカウンターパート

1-1-1
広帯域地震計と強震計を設置し、観測網を構築する。
1-1-2
高度震源解析システムを導入し、運用する。
1-2-1
リアルタイム震度計をマニラ近郊に設置し、パイロット観測を行う。
1-2-2
上記の結果に基づき、全国規模のパイロット観測を実施する。
1-3-1
津波警報システムを強化する。
1-3-2
リアルタイム潮位監視システムを強化する。
2-1-1
GPSキャンペーン観測を実施する。
2-1-2
GPS連続観測を実施する。
2-2-1
内陸地震を対象とした地形・地質調査を行う。
2-2-2
海溝型地震を対象とした地形・地質調査を行う。
3-1-1
広帯域地震計と空振計(注1)をタール火山及びマヨン火山に設置する。
3-1-2
地震・空振データのリアルタイム伝送・解析システムを導入し、運用する。
3-2-1
GPSをタール火山及びマヨン火山に設置する。
3-2-2
GPSデータのリアルタイム伝送・解析システムを導入し、運用する。
3-3-1
地磁気地電流計と全磁力計をタール火山に設置する。
3-3-2
地磁気地電流と全磁力データのリアルタイム伝送・解析システムを導入し、運用する。
4-1-1
地震火山防災情報ポータルサイトを構築する。
4-1-2
成果1と2のための活動から得られた結果を活用するために災害解析システムであるREDAS(Rapid Earthquake Damage Assessment System)の改良を行う。
4-1-3
住宅簡易耐震診断ツールを作成する。
4-1-4
プロジェクトで得られた地震火山情報をポータルサイトを通じて発信する。
4-1-5
コミュニティーの津波防災普及に関する研究を行う。
4-2
ポータルサイトの利活用に関するセミナー・研修を実施する。

(注1)火山噴火などにより発生した空気の急激な圧力変化が、大気中を周囲に伝わる現象を空振といいます。この空振を捉え、火山の噴火予測に役立てるための計測装置(低周波マイクロフォン)を空振計といいます。

投入

日本側投入:

【写真】

パラワン島バタラザにおける地震計の設置

専門家:短期専門家 27名

  1. 本邦研修(出張ベースの短期研修含む ):20名/年
  2. 供与機材:広帯域地震計等観測機材
  3. 在外事業強化経費

相手国側投入:

  1. カウンターパート(C/P):28名
  2. 施設、機材等:PHIVOLCSにおける研究者執務用事務室と設備、参加研究者の研究に係る諸費用(研究予算、旅費等)
  3. プロジェクト運営費(会議開催費、機材維持費等)