クイック・インパクト・プロジェクト−契約署名式と起工式−

2015年3月7日

2014年3月、包括和平合意署名式典出席のため来比した田中理事長とMILFムラド議長との会談に基づき、クイック・インパクト・プロジェクト(以下「QIP」)が同年4月に始まった。紛争影響地域の村々20か所に、公民館や校舎、農業用倉庫など和平プロセスの平和の配当として人々の目に見えるものを建設。ムスリムだけではなく先住民やキリスト教徒も考慮し、既存のARMM地域以外も含めて対象サイトを選定。結果、対象地域は、東はダバオ地域から西は島嶼部のタウィタウィ州まで各地に散らばった。

【画像】事業位置図(注:赤星印が事業地)

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公民館(イメージ)

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小学校(イメージ)

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農業用倉庫(イメージ)

実施は、当該事業のカウンターパートであるバンサモロ移行委員会(BTC)が調整役となり、モロイスラム解放戦線(MILF)の開発機関であるバンサモロ開発庁(BDA)が7つの地域事務所を中心に事業地での調整を担っている。対象地域の選定も、BTCとBDAが協力して対象地域の推薦リストを作成、紛争の影響や貧困、物理的なアクセスや事業実施の安全性を考慮して、対象地域を共同で決定した。その後、建設物を決定するための住民集会の実施、建設サイトの決定、施工業者の入札など様々な段取りを踏まえて、2015年2月ようやく施工業者との契約署名式を迎えた。

2015年2月21日、BTCのイクバル議長やBDAのヤコブ事務局長などが同席し、JICAと5つの施工業者との施工契約署名式がコタバト市内のBTC事務局で行われた。JICA側の署名は丹羽事務所長が行い、BTC、BDA、JICAの3者で事業の意義について確認し合った。契約署名式の翌日には、施工業者やBDA関係者を対象に、2013年末のヨランダ台風などのJICAの復興経験を基にした防災技術セミナーを実施し、台風や地震に強い施工について関係者間で共有した。

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契約署名式で署名する丹羽フィリピン事務所長と施工業者。

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QIPに係る防災技術セミナー

3月7日には、コタバト市南郊のウピ町キブレッグ小学校にて起工式が実施された。JICA本部からは黒柳理事が出席。基本法草案の国会審議は中断しているが、バンサモロ地域の平和のために、JICAは和平プロセスを継続して支援することを強調した。参列者には、BTCイクバル議長、BDAヤコブ事務局長の他、MILFの地域幹部、ウピ町長などが参加。

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ウピ町キブレッグ小学校での起工式

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黒柳理事スピーチ

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起工式の鍬入れ式

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式典後、列席者と子どもたちの記念撮影

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式典で配布されたJ-BIRD(注1)の帽子を被る子どもたち

QIPは、建設だけでなく、建設後の維持管理のため住民組織を結成し、研修も進めている。BDAが有する研修のノウハウと7つの地域事務所を活用し、リーダーシップ研修や運営管理に関する研修を実施。建設後は、住民組織が各地域のBDA地域事務所の協力を得て管理していくことになる。

完工はサイトによって異なるが2015年7月から10月頃を予定している。和平プロセスの進捗を後押しし、少しでも人々に平和の機運が高まっていることを実感してもらえるよう、BTCやBDAと協力し安全かつ計画に沿って事業を進めていきたい。

(注1)J-BIRD(Japan-Bangsamoro Initiatives for Reconstruction and Development)とは、2006年12月の安倍総理(当時)のフィリピン訪問時に立ち上げられた、ミンダナオの平和と安定に資する日本政府によるミンダナオ支援の総称。参照:在フィリピン日本国大使館ホームページ