プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)キガリ市水道事業体運営改善プロジェクト
(英)The Project for WASAC Utility Turnaround with KAIZEN Approach

対象国名

ルワンダ国

署名日(実施合意)

2021年10月22日

プロジェクトサイト

キガリ市及び周辺7セクター

協力期間

2022年3月11日から2027年3月10日

相手国機関名

(和)水衛生公社
(英)Water and Sanitation Corporation(WASAC)

背景

ルワンダ政府は、中長期国家開発計画「変革のための国家戦略」(2017年)に基づき、2024年までに全国民に安全な水を提供することを目標に挙げている。一方で、ルワンダでは都市部における急速な発展が顕著であり、2020年に改訂されたキガリ市マスタープランにおける人口増加シナリオでは、2012年に約110万人であったキガリ市の人口は、地方からの人口流入により、2050年にはおよそ380万人に増加する見込みである。さらにキガリ市周辺の7セクター(Shyorongセクター、Rundaセクター、Rugarikaセクター、Ntaramaセクター、Muyumbuセクター、Gahengeriセクター、Nyakaliroセクター)では、キガリ市よりも安価な土地利用が可能であることから、居住を目的とした開発が進められている。ルワンダの第5次Integrated Household Living Survey(2016年/2017年)によると、キガリ市内の水供給サービス(戸別給水による管路給水および公共水栓等によるものを含む)は87%であるが、キガリ市及び周辺7セクター(以下「キガリ市広域地域」という。)の急激な人口増加による水需要の増加に対応できておらず、浄水場の処理能力不足や大量の漏水による給水制限や給水停止が起きていることに加え、水源の濁度が高いことに起因する浄水場の浄水量低下や維持管理上の負担の増大等が起きている。
2014年にルワンダ政府は水衛生公社(Water and Sanitation Corporation Ltd。以下「WASAC」という。)を新設し、WASACがキガリ市を含むルワンダ全国での水衛生に携わっている。キガリ市広域地域においては、キガリ市内の3箇所の主要浄水場と総延長4,000キロメートルを超える送配水管網の維持管理をWASACが担っている。一方で、キガリ市広域地域の全支店では、既存の給水システムでは潜在的な需要量に追い付いておらず、24時間連続給水が不可能であり、恒常的にレーショニング・プログラム(計画的な間欠給水)が実施されている。2019年時点で、北部幹線系統は週4日の給水、南部幹線は週3日の給水にとどまっているなど、該当地域の状況は深刻であるといえる。
このような状況下において、JICAは開発計画調査型技術協力「キガリ市上水道改善整備マスタープランプロジェクト」を2019年から実施している。主な目的は、将来的な水需要の急増に対して給水を確保するため、既存及び新規の給水システムを長期にわたってより効率的・効果的に活用するための包括的なマスタープランを策定することである。現在、2050年を目標年次としてキガリ市広域地域の水需要量である1,067,000立方メートル/日(一日最大給水量)を賄うマスターシナリオを作成するとともに、マスターシナリオを達成するための15年投資計画を策定している。今後、策定した計画を実現していくにあたり、キガリ市水道事業体運営改善プロジェクト(以下「本事業」という。)では以下の事項を支援することが期待される。
維持管理の観点では、漏水箇所の把握、補修を適切に対応し、高低差の激しい地形条件に対しても効率的な運用を行っていくことが求められている。また、浄水場においても、高い濁度への対応として薬剤注入量の最適化を行い、運転コストの削減に取り組む必要がある。組織・人材面では、地下水源の管理を行う技術職員を育成することで、持続可能な水資源の開発と適切な維持管理を行っていくことが求められている。また、WASACが部門間で協力していく体制を構築していくことや、様々な政府省庁との調整を行っていく必要がある。財務面では、今後設備投資を行っていくため、適切な料金改定の計画を検討していく必要がある。加えて、コスト構造の認識を財務部にとどまらず各部局が認識し、効率化を検討することが今後の投資計画の検討にあたり重要となっている。これらの事項を本事業では支援し、WASACが今後マスターシナリオ及び15年投資計画を実現していくための基礎を構築する。
また、2016年からJICAが実施している技術協力「キガリ市無収水対策強化プロジェクト」を通じて、WASACは無収水対策として漏水対応のノウハウを習得し、パイロットエリアにて無収水対策の効果を実証してきた。今後は、広域での無収水の削減を目指し、根本的な原因である、配水区域のブロック化(配水区域を分割して管理する手法)がされていないことによる不均衡な送配水圧や質の低いサービス管の利用を減らすための配水管網整備・機材活用の検討や制度管理について、本事業で支援する。
ルワンダ国政府はこれまでのプロジェクト成果を踏まえ、マスタープランを効果的に実施するためのWASACの能力強化を目的とするだけでなく、能力強化を通じた組織改革により顧客サービスの向上を目指し、我が国に対し技術協力プロジェクトの実施を要請した。

目標

上位目標

WASACが信頼のおける給水サービスを持続的に提供できるようになる。

プロジェクト目標

WASACの上水道マスタープランの計画・実施能力が向上する。

成果

1.事業体改革の実施の枠組みが確立され、WASACが組織横断的な問題を解決できるようになる。
2.マスタープランを実施するための財務管理能力が向上する。
3.効率的な無収水削減を実施するための能力が向上する。
4.上水道施設が効率的に運用される。

活動

成果1に係る活動

1-1.WASACの現在の経営の枠組みを分析する。
1-2.マスタープランや事業体改革戦略実施のための組織的な枠組みを検証する。
1-3.マスタープランや事業体改革戦略の実施をけん引し、調整や監督組織でもあるOne Strategic Team(OST)と、関連団体との調整をするプログラムサポート委員会を設置する。
1-4.直近のWASACの5か年ビジネス戦略計画と年間アクションプランの実施について評価を実施する。
1-5.活動1-4の結果を反映した給水サービスに係る5か年ビジネス戦略計画を作成する。
1-6.5か年ビジネス戦略計画に基づいてキガリ市3か年ローリング活動計画とパフォーマンス指標(PI)を設定する。
1-7.3か年ローリング活動計画を実施する。
1-8.パフォーマンス指標を通して実施をモニタリングする。
1-9.3か年ローリング活動計画の年次評価を実施し、計画を修正する。
1-10.組織の分野横断的な課題を抽出し、それらの課題を解決するための方法を検討する。
1-11.解決策をWASACの部署や関連組織に提案する。
1-12.提案された解決策の実施についてモニタリングする。
1-13.3か年ローリング活動計画の総合評価を実施する。
1-14.戦略的ビジネスプランに活動1-13の結果を反映させる。

成果2に係る活動

2-1.WASACの現時点での財務管理能力についてのアセスメントと分析を実施し、収益増加やコスト削減につながる優先的な活動を選択する。
2-2.関連政策、プロセスマニュアルの見直し、見直された政策やプロセスマニュアルに関する説明や研修を含むキャパシティ向上のための活動計画を作成する。
2-3.活動2-2で作成されたアクションプランを実施する。
2-4.財務諸表を分析し、その結果を関連部署と共有する。
2-5.統合されたマスタープランの実施に必要な資金を概算する。
2-6.資金繰りのシナリオや条件を精査する。
2-7.WASACの財政状態や投資計画に基づいて、水道料金改訂や資金繰り戦略を作成する。

成果3に係る活動

3-1.パイロット支店またはエリアを選択する。
3-2.選択したパイロット支店またはエリアを分離し流入量をモニターする。
3-3.活動3-4と3-5に必要な配水管網(口径、材質、修理記録等)のデータベースを準備する。
3-4.配水管網の再構築に関する設計の研修を実施する。
3-5.現状の配水管網の水圧ゾーンマップを作成する。
3-6.パイロット支店またはエリアにおける無収水削減に関する活動計画(フロートバルブの設置や修理、水圧削減バルプの設置、漏水修理、検針エラー、不法接続の減少など)を作成する。
3-7.ベースライン調査を実施する。
3-8.活動3-6で作成された無収水削減年間活動計画を実施する。
3-9.無収水削減対策のコスト便益パフォーマンス指標を選択する。
3-10.コスト便益パフォーマンス指標を定期的にモニターする。
3-11.コスト便益パフォーマンス指標のモニタリングに関する研修を支店に対して実施する。
3-12.活動3-10の結果を次年度の年次活動計画に反映させる。
3-13.活動3-6、3-8、3-10及び3-12を各財政年度に繰り返して実施する。
3-14.サービス管の接続に関する現在の課題を抽出する。
3-15.サービス管の接続の向上に重要な対策を考慮する。
3-16.改善策を導入したサービス管設置の結果をモニタリングする(手順書の作成など)
3-17.パイロット活動の結果を無収水削減5か年計画に統合する。
3-18.成果3の活動をWASACの幹部や全支店にセミナーやワークショップを通して共有する。

成果4に係る活動

4-1.浄水場の調査とアセスメントを実施する。
4-2.手順書(SOP)チームを編成する。
4-3.浄水場の薬品注入の最適化に関する手順書を作成する。
4-4.浄水場の薬品注入の最適化に関するOJTを実施する。
4-5.浄水場やポンプ場の電力消費量についての調査とアセスメントを実施する。
4-6.高い電力消費量または非効率な電力量消費の設備を特定し分析する。
4-7.特定したパイロット設備に節電機器を設置する。
4-8.パイロット設備の節電機器の効率や効果を評価し報告する。
4-9.活動4-8に基づいて各設備の節電計画を作成する。
4-10.成果4の活動をWASACの幹部や全支店にセミナーやワークショップを通して共有する。

投入

日本側投入

1)専門家派遣:業務主任者、事業運営管理、水道事業戦略、財務管理、財務計画、無収水管理、無収水削減計画、配水管網設計/水理解析、上水道施設維持管理、水源管理、電気・機械、費用便益分析、水道事業経営アドバイザー
2)研修員受け入れ:本邦研修(顧客サービス)
3)機材供与:無収水削減に必要なバルブ類、節電機器類

相手国側投入

1)カウンターパートの配置:プロジェクト・ディレクター、プロジェクト・マネージャ、各成果のチームリーダー及び職員
2)案件実施のためのサービスや施設、現地経費の提供:専門家のための執務スペース等
3)その他:カウンターパートの活動費、機器装置設置に係る工事費、成果3の活動に係る要員配置