ベナン国保健人材調査団とRVT2010の保健人材情報システム経験共有会議(RVT事務局会議室)

2016年11月22日

保健人材開発支援の大きな柱の一つとして、質の高い保健人材情報システムの構築ががあります。途上国では、正確な保健人材情報(配置、職種、年齢分布、退職予定等)が不足しているために、透明性があり、民主的な保健人材計画が作成できず、また保健人材の適正配置対策の計画やその実施のモニタリングが困難になっています。RVT2010は仏語圏アフリカ保健人材ネットワークとして、保健人材情報システム等の保健人材開発に関わる成功事例の経験共有をおこなってきました。加盟国の1つであるコンゴ民主共和国保健人材開発支援プロジェクトでのMS ACCESSを活用した人材データベース事例やUSAID支援のiHRIS(注1)と呼ばれるソフトウェアの活用事例等の経験共有をしてきています。

11月21日から25日にかけて、ベナン国保健省で保健システムを支援するベルギー技術支援機構(BTC)のプロジェクトPASS Sourouの支援で、ベナン国保健人材調査団がiHRISのベナン国への導入・定着を目指して、セネガル事例を学ぶために、やってきました。11月22日、RVT2010事務局において、ベナン国保健人材調査団(3名)とRVT2010での保健人材情報システム経験共有会議が実施されました。セネガル国のRVT2010のフォーカルポイント(注2)TIAM女史は保健省人材局でのiHRIS事業の推進者であり、また今回のベナン国調査団長であるベナン保健省財務総務局保健人材・社会対話課課長であるHOLLOS氏も同国のRVT2010フォーカルポイントとして活動していることから、実現した経験共有会議でした。

ベナン国でも2000年にフランス支援でVirtualiaと呼ばれる保健人材管理ソフトウェアを導入したものの支援が途絶えると使われなくなり、2010年にはMS ACESSをベースにしたLOGI GRHを導入したものの、開発者が亡くなったため、必要な更新作業ができなり、現在MS Excel を現地で活用しているものの、課題が多いという説明がありました。

一方、セネガルも過去にアクセスをベースにした保健人材データベースの構築があったものの、十分な活用ができず、2013年にUSAID支援事業から、iHRISの紹介があり、USAIDの支援を受けて、2州と中央でのパイロット事業の実施、そして2013年-2015年に他の12州に拡大しています。現在保健省で期限付き公務員を含め、14383名(2016年11月現在)の公務員が把握されていますが、そのうち約11000名がデータベースに登録されています。

今回の経験共有会議では、セネガル保健省iHRISのアドミニストレーターの参加もあり、データベースの活用方法から、データ保管のためのサーバーの設置状況や、同ソフトウェアのセネガル保健省用へのアレンジ、アドミニストレーターに求められる資質、さらに人事情報ということで、プライバシー確保、特に遠隔地での普及・課題など、幅広い様々な議論が飛び交い、丸一日かけた経験共有会議になりました。また支援ドナーとして、JICAセネガルとBCTベナンがどのように、連携できるかという点も議論になりました。次回の総会(2018年予定)や事務局会合(2017年予定)までにベナン国のiHRISの定着がどこまで進むのか、楽しみです。

本事業は現在、13か国を対象にしており、予算や実施体制にも限りがあることから、各国に対して、きめ細かい支援が難しいですが、今回のように各国のRVTメンバーが好事例の経験共有を深めることで、各国のドナー支援を引き出して、他ドナーと連携して、効果的・効率的なネットワーク事業になることが期待されています。(以上)

(注1)iHRISはUSAIDの支援で開発された保健人材管理に特化したWbベースで稼働するオープンソースの無料ソフトウエアで、予算の限られた途上国、特にアフリカを中心に導入されています。

(注2)RVT2010は保健人材管理者のネットワークですが、加盟国保健省の人材担当局長だけでなく、各国にフォーカルポイントを設置し、多忙な人材担当局長を支援する役割を担っています。

文責:専門家(業務調整)岡安利治

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RVT事務局

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共有会議の様子(左から岡安、ベナン国保健省人材社会対話課BJOSSOU氏、BTC OUEGORAOGO医師、セネガル国保健省人材局THIAM氏)

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iRHIS デモンストレーション(左からベナン国保健省人材社会対話課長HOLLO氏,セネガル国保健省iRHISアドミニストレーターCAMARA氏)