プロジェクト概要

プロジェクト名

(和)国家乳がん早期発見プログラム改善プロジェクト
(英)Project for Improvement of the National Program for Early Detection of Breast Cancer

対象国名

セルビア

署名日(実施合意)

2015年8月19日

プロジェクトサイト

セルビア全土

協力期間

2015年11月16日から2018年11月15日

相手国機関名

(和)保健省およびナショナルタスクフォース(がん・放射線専門病院、公衆衛生院など)

背景

セルビア共和国は1990年代の紛争や経済制裁によって大きな打撃を受け、ミロシェビッチ政権崩壊後の国際社会への復帰から10年以上を経た現在でも社会経済の再建の途上にある。同国政府は貧困削減文書(PRSP、2003年)に沿った開発を進めており、その中で重点開発分野の一つとして位置づけている保健医療分野においては、医療費のかかる治療よりもプライマリーヘルスケアの拡充と疾病予防を重視している。
医療費の削減は、セルビアにとって大きな課題となっている。人口動態を見ると、65歳以上の比率は毎年上がっており、2012年には14%を超え、高齢社会に突入している。セルビアの健康保険は国民皆保険加入であり、全ての公立医療施設の保健医療サービスは、雇用者・被雇用者による保険料を主な財源とした医療保険基金から支払われていることから、高齢化の進展は保健財政を圧迫する。既に、2012年時点でGDPに占める保健支出は10.5%であり、ベルギー(10.8%、2012年)、オーストリア(11.5%、2012年)等と同程度であることから、医療費の高騰はマクロ経済の観点からも深刻な課題となりつつある。
また、セルビアの疾病構造は、心臓血管病に次いでがんによる死亡が多く、全体の約4分の1を占めている。このうち、乳がんは罹患率にして各種がんの中で最も高く(10万人あたり69人、2012年)、また死亡率も肺がんに続いて高い(同22人)。女性に限っては、乳がんによる死亡率が肺がんを上回り、最も高い状況にある。特に、乳がん患者の5年生存率は欧州平均に比べて低い。
セルビアにおける乳がん患者の約7割は、診断時点でがん組織が2cm以上となっており、その半数以上が既に他の部位に転移しているといわれている。この早期発見の遅れが高い死亡率の背景の一つであり、加えて、がん治療に必要な機器の不足や医師・技術者等の人材不足、研修不足なども原因になっているとして考えられている。
これら状況に対し、2009年にセルビア政府は、「セルビアがん対策プログラム(National Cancer Control Program、以下NCCP)」および「乳がん対策プログラム(National Breast Cancer Prevention Program、以下NBCPP)」等の5カ年計画を策定した。さらにNBCPPは、2013年に「国家乳がん早期発見プログラム(National Program for Early Detection of Breast Cancer、以下、NPEDBC)」に改訂された。
しかしながら、これらのプログラムにおいては基本方針こそ示されているものの、具体的なアクションプランや到達指標などは定められていなかった。また、体系的なレビューがこれまで実施されてこなかったため、乳がん対策として今後どのような点に優先すべき課題が存在し、かつ、どのような活動に焦点を当ててゆくべきか等が明確になっていないまま、現在に至っており、効果的な乳がん対策の実際的取り組みが遅れている状況にあった。基本計画策定調査の結果からは、住民への普及啓発活動や読影技術を有する医師の育成などの対策を通じて乳がん検診の受診率を高めること、検診から確定診断・(外科的)治療までの連携を強化し発見から治療に至るまでの時間を短縮すること、専門職と非専門職との役割分担を明確にして不足する専門職が臨床業務に専念できる環境を整えること、行政の役割を強化し明確な医療政策を作成すること等が今後の課題であると考えられた。

プロジェクトの目的

本事業はセルビア全土を対象とし、NPEDBC責任機関の計画立案能力、モニタリング評価能力、下位機関に対する実施支援能力の強化を行うことにより、同機関のNPEDBC運営管理能力の強化を図り、NPEDBCの効果的な実施に貢献するものである。

目標

上位目標

NPEDBCが効果的に実施される
(指標)
指標および指標入手手段は、今後更新されるNPEDBCのモニタリング・評価フレームから特定される。現時点では乳がん検診の受診率の向上、訓練を受けた医師による読影数の増加、検診から確定診断・治療までの時間の短縮等を検討しているが、詳細については、プロジェクト開始後1年以内に決定する。

プロジェクト目標

NPEDBC責任機関(ナショナル・タスクフォースや保健省関係部局)における、NPEDBCの運営管理能力(注)が強化される
(注)計画立案能力、モニタリング評価能力、下位機関に対する実施支援能力を含む
(指標)
NPEDBCにおける優先活動の開始。現時点では乳がん検診の受診率を高めるための住民への普及啓発活動、読影技術を有する医師の育成、各施設における検診から確定診断・治療までの連携の強化、専門職が臨床業務に専念できる環境を整えるための専門職と非専門職との役割分担の明確化、医療政策作成のための行政の役割の明確化等が予想されるが、詳細については、プロジェクト開始後1年以内に決定する。

成果

成果1:NPEDBC責任機関の計画立案能力(注1)が向上する
(注1)問題分析能力、エビデンス活用能力、調整能力を含む
成果2:NPEDBC責任機関のモニタリング評価能力(注2)が向上する
(注2)情報収集・分析能力、情報活用能力、情報伝達能力を含む
成果3:NPEDBC責任機関の下位機関に対する実施支援能力(注3)が向上する
(注3)優先課題特定能力、予算・資源動員能力・行政指導能力を含む

投入

日本側投入

-専門家派遣(総括、がん対策政策、研修管理/業務調整)
-研修受け入れ(本邦研修もしくは第三国研修)
-機材供与(プロジェクト運営に必要な資機材)

相手国側投入

-カウンターパートの配置
-カウンターパート(ナショナル・タスクフォース)の配置
-カウンターパート人件費(給料等)
-保健省内でのJICA専門家の執務スペースの提供
-現地研修実施時の参加者日当・宿泊費の負担、場所の確保