プロジェクト活動

1.事業概要

(1)事業目的(協力プログラムにおける位置づけを含む)

本事業は、対象3県(ボンバリ県、カンビア県、ポートロコ県)の内陸低湿地帯(Inland Valley Swamp:IVS) において、既存の稲作技術パッケージを農家が適用しやすい内容へ改良し、それを農家研修で活用することにより、農家の稲作栽培・加工技術の向上を図り、もって対象3県のコメ生産性向上に寄与するものである。

(2)プロジェクトサイト/対象地域名

ボンバリ県(人口606千人、面積7,985平方キロメートル)
カンビア県(人口342千人、面積3,108平方キロメートル)
ポートロコ県(人口614千人、面積5,719平方キロメートル)

(3)本事業の受益者(ターゲットグループ)

直接受益者

対象3県における現場普及員(3県、各20~30人)、同県内で稲作を行う農業者組織(FBO)の農家(研修受講者)(3県合計で約2,000人)

最終受益者

プロジェクト対象県の農家(約10,000人)

(4)事業スケジュール(協力期間)

2017年6月20日から2022年6月19日

(5)総事業費(日本側)

約7.5億円

(6)相手国側実施機関

業森林食糧安全保障省(MAFFS) 普及局
(全国の農業普及を担う局で、生産量の増大・生産性の向上、並びに農業の商業化を進めている)

(7)投入(インプット)

1)日本側

1)専門家(チーフアドバイザー、稲作栽培技術、研修、普及、社会経済調査、農民組織化、普及教材開発、プロジェクトモニタリング・評価、業務調整) 計130 M/M程度
2)機材供与(車両、バイク、研修用機材、発電機、オフィス用機材他)
3)第三国研修(アフリカ内を想定。プロジェクト期間中3回(C/P、現場普及員、農業者組織代表を想定)。)
4)その他プロジェクトに必要な現地活動費

2)シエラレオネ国側

1)カウンターパート人員の配置(3県にて農業普及業務を担う農業事務所長、特定課題専門官の計12名程度)
2)プロジェクトオフィス(3県及びMAFFS内、メインオフィスはボンバリ県に設置予定)
3)カウンターパート予算(活動費、光熱費等)

(8)環境社会配慮・貧困削減・社会開発

1) 環境に対する影響/用地取得・住民移転

1)カテゴリ分類:C
2)カテゴリ分類の根拠
環境や社会への望ましくない影響が最小限かあるいはほとんどない。

2)ジェンダー・平等推進・平和構築・貧困削減

受益農民の男女間での仕事の役割やニーズが異なることを前提に、技術移転に際し女性への配慮を十分に行う。特に研修の際はジェンダーバランスに配慮する。

3)その他

特になし。

(9)関連する援助活動

1)我が国の援助活動

「カンビア県農業強化支援プロジェクト」(2006年~2009年)では稲作技術パッケージ及び農業技術支援ガイドラインが作成された。その成果を受け、同県で「持続的稲作開発プロジェクト」(2010年~2014年)が実施され、稲作技術パッケージの改訂及び農家への普及活動が行われた。本事業は、これらプロジェクトの成果・教訓を最大限活用し、稲作生産性向上を支援する。

2)他ドナー等の援助活動

世界銀行が実施しているWAAPPやSCADeP、WFPが実施しているF4Wといった各事業は、対象作物にコメが含まれ、支援対象がFBOや農業ビジネスセンター(ABC)となっている。本事業とは、バリューチェーン構築支援にかかるFBOやABCへの研修実施等において、高い相乗効果が期待される。

2.協力の枠組み

(1)協力概要

1)上位目標と指標

1)3県(ボンバリ県、カンビア県、ポートロコ県)のIVSにおいてコメの生産性が向上する。
2)農家が適用しやすい稲作技術パッケージ(改良TP-R)が、全国IVSの農業者組織(FBO)の農家へ普及する。
(指標)
1)3県のIVSにおいて、コメの単収がXXトン/haを超える。
2)全国IVSにおいて研修を受けたFBO農家のうち、少なくともXX%が改良TP-Rの中の主要技術(種子選抜、均平化、移植、施肥、除草等)を個人所有圃場で適用する。

2)プロジェクト目標と指標

農家が適用しやすい稲作技術パッケージ(改良TP-R)が、3県(ボンバリ県、カンビア県、ポートロコ県)のIVSのFBO農家へ普及する。
(指標)
・3県のIVSにおいて研修を受けたFBO農家のうち、少なくともXX%が改良TP-Rの中の主要技術(種子選抜、均平化、移植、施肥、除草等)を個人所有圃場で適用する。
・研修を受けたFBO農家により、XX人のFBO農家へ技術が移転される。
※具体的な指標数値は、プロジェクト開始後のベースライン調査実施後に開催する合同調整委員会にて決定。

3)成果

1)3県のIVSでの稲作状況が取りまとめられる。
2)3県の研修を受けた農家の稲作栽培・収穫後処理技術が向上する。
3)農家が適用しやすい稲作技術パッケージ(改良TP-R)が農家研修で活用される。
4)改良TP-Rが奨励栽培技術として全国の普及関係者に認識される。
(成果4)は上位目標達成へ向けた設定)

3.前提条件・外部条件 (リスク・コントロール)

(1)前提条件

・対象3県並びに首都のフリータウンにおける治安が悪化しないこと。

(2)外部条件

・害鳥・害獣や病虫害等による深刻な被害が増加しないこと。
・自然災害や感染症・伝染病等、プロジェクトに深刻な影響を及ぼす事態が発生しないこと。
・シエラレオネの稲作振興政策が大幅に変更されないこと。

4.評価結果

本事業は、シエラレオネ国の開発政策、開発ニーズ、日本の援助政策と十分に合致しており、また計画の適切性が認められることから、実施の意義は高い。

5.過去の類似案件の教訓と本事業への活用

(1)類似案件の評価結果

技術協力プロジェクト「シエラレオネ国持続的稲作開発プロジェクト」では、MAFFSが推進し各ドナーが支援する「小規模農家商業化プログラム(SCP)」に沿った計画により実施され、一部活動においては他ドナー資金の投入が前提となっていた。しかし、MAFFSの他ドナーとの調整不足による予算手当ての遅延や、対象FBOへの重複支援といった事例が確認され、プロジェクト活動に一部支障が生じた。多数のドナー支援が行われているプログラムへの貢献という位置づけを有する案件の場合、開始当初の計画段階のみならず、実施期間を通じて他ドナー事業との密接な調整を行っていくことが重要である。

(2)本事業への教訓

多数のドナーが支援している稲作分野への協力である本事業は、実施期間を通してMAFFSが主体となって本事業も関与しつつ、他ドナー事業との密接な協議・調整を行っていくことを活動の一つに位置付けている。

6.今後の評価計画

(1)今後の評価に用いる主な指標

2.(1)のとおり。

(2)今後の評価計画

事業開始6か月以内 ベースライン調査
事業終了3年後 事後評価