プロジェクト・レビュー・ワークショップ

2018年6月6日

2018年5月16日~18日

2016年6月に4年間の計画で開始されたヘルシービレッジ推進プロジェクトは、折り返し地点を迎えます。ここまで、力丸チーフ・アドバイザーを中心に、活動は概ね計画通りに進められ、カウンターパートとの協力体制やチームワークを築き上げてきました。また、保健医療サービス省との協議を重ね、対象地のガダルカナル州とマキラ・ウラワ州にて、プロジェクトを実施してきました。

過去2年間の主な実績としては、
・ソロモン版ヘルシービレッジモデルの形成
・パイロット(試験的)対象村選定
・ベースライン調査
・研修カリキュラムの準備
・ヘルシービレッジ用教材の作成
・研修の実施
・健康推進員ガイドラインの作成 等が挙げられます。

そこで、第1回目の健康推進員への研修が終わったこの時期に、これまでの活動内容を振り返り、「良い部分はそのまま」、そして「改善が必要な点については対策を立てる」ことを目的として、プロジェクト・レビュー・ワークショップを企画しました。

最近保健医療サービス省ではユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC=Universal Health Coverage、すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられること)に力を入れており、UHC達成のための「役割分担方針(Role delineation policy)」を制定しました。その中で、診療や健康増進に必要な活動を、できるだけ末端の(第1次)医療施設に移していくことを目的としています。しかし実際には、末端に位置するクリニックの医療従事者と村落のコミュニティーを繋げる仕組みが存在しないため、この課題に取組んでいるヘルシービレッジ・プロジェクトが評価され、プロジェクトにとっては嬉しい追い風が吹いています。

ワークショップには、保健医療サービス省本省のカウンターパートに加え、州保健局ヘルスプロモーションの関係者、パイロット対象地域に勤務する看護師、健康推進員の代表者数名を招き、プロジェクト終了後の全国展開を視野に入れ、参加型の手法を通じ下記の点について意見交換を行いました。

・ソロモン版ヘルシービレッジモデルの再検証
・研修内容や期間、教授法について、良かった点や改善点を議論
・その他、プロジェクト終了後に、このヘルシービレッジプロジェクトを継続していく為には、後半の2年間に何をする必要があるのかについての意見交換

研修の最後のコマには、JICAのプロジェクト終了後にも活動を継続するためには、どの部署が何の役割を担うのか、活動の予算の確保や、誰がどのような方法で保健医療サービス省内・省外との連携強化を図っていく必要があるのかを可視化する作業を行いました。

3日間の議論を通じて、今後の方向性が明確になり、各レベルにおける重要課題を下記の通り共有することができました。

【中央レベル(保健医療サービス省本省)】
・ヘルスプロモーションの政策策定(プロジェクトの活動内容とは直接関係しないが、方向性を示す政策が必要という点で合意)
・ヘルシーセッティングス及びヘルシービレッジにかかる政策、戦略、実施ガイドラインの作成

【州レベル】
・州内でヘルシービレッジ委員会の設置(ソロモンでは教会の影響力が強いため、教会関係者との連携を強化することにより、持続性や健康推進員への支援を確保できる可能性が高い。各州都には、教会のリーダーがいるため、「保健医療サービス省・州保健局⇔クリニック⇔村落のコミュニティー」というチャンネルだけではなく、「州の教会のリーダー⇔村の教会のリーダー⇔村落保健委員⇔村人」というアプローチも有効だという考えをベースに州保健局が中心となって委員会を立上げ、運営していく)
・研修やモニタリング、フォローアップのための予算確保

【看護師】
・健康推進員や村落保健委員の活動を継続して直接支援するための予算確保の検討

【健康推進員・村落保健委員】
・それぞれのコミュニティ内でも、どのように村長や教会関係者、他の委員会(女性会や学校運営委員会等)と連携して、啓蒙活動や村の清掃キャンペーン、その他の活動を継続して実施していけるか模索

今回のワークショップは、企画の段階から保健医療サービス省本省のカウンターパートが指揮をとり、JICA専門家からの技術協力は最小限に抑えたことからか、単なる中間評価のワークショップというよりは、関係者の意識の中で、「プロジェクトのオーナーシップがソロモン側に移った」瞬間であったように思います。

3日間のワークショップを通じて、参加者全員が、それぞれの立場に求められてている役割や連携を意識し、意見交換を行うことができました。「こうできれば理想的」という意見も多く、彼らからの提案を全て実効することは難しいですが、カウンターパートを中心として、「JICAのプロジェクト」から「ソロモン保健医療サービス省のプログラムの1つ」になっていくことを期待しています。

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ワークショップの会場

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今回のワークショップのメイン・ファシリテーター(ヘルシーセッティングコーディネーター、シカラ氏-National Healthy Settings Coordinator, Mr. Kelton Sikala)

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色紙を使った参加型ワークショップ

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ヘルスプロモーション局関係者の話合い

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看護師チームの話合い