2013年8月11日
南スーダンTV・ラジオ(SSTVR)の技術職員10名に対する14日間の本邦研修が終了した。初日の自己紹介では自分の仕事の内容を小声でたよりなさそうに話していた研修生も、日本での様々な研修を通じて、小さな自信と大きな夢を持って帰国している印象だった。
研修生にとって初めての日本滞在は驚きの連続だった。まずは、東京の朝夕の通勤ラッシュ。南スーダンに鉄道はなく、JICA東京から研修の場である世田谷や品川に移動する朝夕の電車では、時には1つのドアから乗り込めないことも。それでも毎日、吊革につかまって「電車通勤」を楽しんでいた。静岡放送局で地方局の現場で研修した際の行き帰りの新幹線の速さにも感激したようだ。
街にあふれるコンビニも驚きの一つだった。昼食を買ったり、ATMで日当を引き出したりする際に立ち寄るコンビニには、様々な商品が棚に並び、研修生たちはひとつひとつを楽しそうに眺めていた。
NHK放送センターの 「スタジオパーク」では、子供連れの母親が多数来ているのをみて、視聴者と放送局の距離の近さに驚いた。
「機材センター」では、機材の出し入れが機能的に行われているのに感心し、登録を済ませないと部屋から機材を持ち出す時に警報が鳴るシステムにびっくりしていた。「TVスタジオ」や「ラジオスタジオ」、それに「衛星伝送用の中継車」も見学し、南ス—ダンでは考えられない機材の充実ぶりにため息をついていた。
東京タワーも訪れた。展望台で、夏休みで訪れている家族連れをみて、自分たちの家族を思い出していたようだった。東京タワーは、スカイツリー完成後メインのテレビ塔としての役割は終えたが、中継現場からの電波(マイクロ波)の受信点や災害時のテレビの予備塔としての機能は残っている。東京タワーにあるNHK芝TV放送所では、取扱説明書や予備部品が整然と戸棚に格納され、その戸には格納物の配置をわかりやすく図示した表が貼付されているなど、障害時への事前の備えの大切さを学んだ。これからSSTVRで実施する機材整備のありかたを理解してもらえたと思う。
研修生たちはタワー放送所で部屋の隅に祀られていた小さい神棚を見つけた。「安定した放送の送出を祈願する」という説明に納得して、みんなして合掌する姿が微笑ましかった。こうした純粋な気持ちを持ったエンジニアたちが、これから新しい国の放送技術を支えていくことになるというのは頼もしい限りである。
室井謙三(機材管理)
「通勤電車」に乗って
コンビニで買い物
東京タワー芝放送所にて
カメラ修理の研修