2014年3月1日
南スーダンでは、2013年12月、大統領派と副大統領派による政治対立が武力紛争に発展、民族対立を背景にした戦闘が発生し、多数の難民が発生するなど内戦状態に戻ったとも言える状況に陥っている。治安が急速に悪化したため邦人への退避勧告が出され、JICA関係者も南スーダンに戻れない状況が、現在も続いている。
しかし、こうした状況の時こそマスメディアの果たすべき役割は大きく、特に影響力の大きいSSTVRには、公平・公正な報道や国民への冷静な対応の呼びかけを通じて民族対話を推進し、紛争解決に貢献することが求められている。そのため、本プロジェクトでは、活動を停止している南スーダンの他のJICAプロジェクトに先駆け、隣国のケニアにカウンターパートを呼び、研修を実施した。
研修では、情報・放送省とSSTVRの幹部それに現場の職員あわせて20人をナイロビに呼び、2週間に渡って実施した。幹部研修には、ケニアの公共放送KBCの全面的な 協力を得て3日間にわたり行われ、KBCの会長を初めとする幹部や南スーダンに派遣 経験のある職員が参加し、公共放送の基本的な役割やメディアが紛争解決に果たす役割などについて意見交換が行われた。特に経営体制についての議論では、KBCの公共放送化の歴史や民族間の衝突が発生した2007年の大統領選挙の対応など「先行事例」で あるケニアの経験が紹介され、熱心な議論が繰り広げられた。
現場職員の研修は、記者、PD、エンジニア12名が参加し、郊外のジョモケニアッタ農工大学(JKUAT)構内にあるAICAD(東アフリカ3か国の研修センター)で実施した。研修では、3部門合同でニュースリポートを制作するという実践的なトレーニングを 行い、制作したニュースはSSTVで放送された。プロジェクトでは、現地の治安が回復するまで、こうした「第3国研修」を実施し、活動を継続してゆく予定である。
(澤 善規/副総括/放送局運営)
幹部研修に参加した情報・通信省、SSTVR、KBC、JICA関係者
幹部研修で挨拶するケニアKBCのワイヘニヤ会長
ケニアのジョモケニヤッタ大学を取材中のSSTVR職員